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2040年頃見据えた新地域医療構想、病院の主体的な動き(機能転換など)が必要な分野について「何が必要か」の深堀りを—新地域医療構想検討会

2024.5.23.(木)

現在の地域医療構想の後継となる「新・地域医療構想、ポスト地域医療構想」(名称は未定)の策定・実現において、「時間」(構想の策定、協議)と「リソース」(機能分化等に向けた財政的支援等)に制約があれば「旧来型の計画策定」に留まってしまいかねない—。

とりわけ「地域における医療機関の役割分担見直しなど、ステークホルダー(病院)の主体的な動きが必要な分野」については、「協働で進めるためには何が必要か」を深掘りして、必要な解決策を見出していくことが重要である—。

新・地域医療構想の発射台は、2025年の「現行の地域医療構想のゴール」であり、現行の地域医療構想の実現に向けた動きをさらに加速化すべき—。

5月22日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で、こうした意見発表が行われました。検討会ではさらに構成員や参考人から意見聴取を重ねます。

5月22日に開催された「第3回 新たな地域医療構想等に関する検討会」

地域の実情を踏まえた「複数のシナリオ」を用意すべき

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」に向けた議論が検討会で始まっています(関連記事はこちらこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化が生じるため、こうした状況にマッチする効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なり、ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



検討会では、4月・5月に構成員や有識者から意見を聴取し、それを踏まえて6月から具体的な論点に沿った議論を行うこととしています。5月22日の会合では以下の7氏から意見聴取を行いました(第1回目のヒアリングに関する記事はこちら)。
▽伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)
▽瀬古口精良参考人(日本歯科医師会専務理事)
▽荻野構一参考人(日本薬剤師会常務理事)
▽河本滋史構成員(健康保険組合連合会専務理事)
▽玉川啓構成員(福島県保健福祉部次長)
▽岩井志奈参考人(東京都保健医療局医療政策担当部長)
▽高橋泰構成員(国際医療福祉大学教授)



玉川構成員は、地域の医療提供体制構築の責任主体である都道府県に立場から、▼コロナ禍を通じて医療機関の役割分担が進展しており、コロナ禍の経験を生かすことが重要である▼病床必要量と機能報告との制度的な不整合(前者は病床単位、後者は病棟単位)や、構想策定時と実際との機能のズレ(急性期・回復期)といった課題が現行地域医療構想にはあり、新地域医療構想では「目標と実績とが対応する設計への見直し」や「現実的な医療機能を踏まえた目標の設定・柔軟化」などが必要となる▼地域ごとに医療ニーズ(人口構成や疾病構造)や医療資源に差があることを踏まえた「複数のシナリオ」を設定する必要がある▼医師・看護師不足への対応策(医師数が絶対的に不足する地域における医師の確保、包括期のニーズ増に対応する医師の確保、病院看護師(とりわけ急性期)の確保(新卒者対策、再就業対策)など)を十分に講じる必要がある—と提言。

玉川構成員プレゼンより1

玉川構成員プレゼンより2

玉川構成員プレゼンより3



あわせて、都道府県が拠り所とする「地域医療構想策定ガイドライン」において「目指すべき姿」、「必要となる施策」(地域医療介護総合確保基金以外の、診療報酬も含めた支援の充実)、「地域内協働を担保するための検討・協議・策定期間(計画段階からの協働が重要)の確保を追加・明確化」が重要とも指摘。「時間」(構想の策定、協議)と「リソース」(機能分化等に向けた財政的支援等)に制約があれば「旧来型の計画策定に留まってしまう」ことを懸念し、とりわけ「役割分担の見直しなど、ステークホルダー(病院)の主体的な動きが必要な分野」については、「協働で進めるためには何が必要か」を深掘りして、必要な解決策を見出していくことが重要であると訴えています。

玉川構成員プレゼンより4



このほか、国(厚生労働省)に対して▼医療体制・ 医療経営に関する「専門研修」の強化▼総合的な伴奏支援▼全国の知見・ノウハウの集積と提供▼新型コロナ対策で培った経験を生かした都道府県との協働・対話(情報の共有、知見・経験の入手・その反映)—を要望しています。

玉川構成員プレゼンより5



また、保険者の立場から意見を述べた河本構成員は、現行・地域医療構想の進捗状況について「ベッド数ベースでは目標を実現できている」としたうえで、「機能別・地域別には凸凹がある。現行・地域医療構想の最終状況が、新・地域医療構想の発射台になる」とし、今後2年間での取り組み(急性期→回復期のシフト、実効性のある役割分担の推進など)をしっかり進めることが重要と指摘しました。

さらに、新・地域医療構想においては「患者にとって安全・安心な医療・介護が効果的・効率的に提供される」ことが重要とし、▼医療需要の適切な推計(外来医療や在宅医療の必要量も推計すべき)▼構想区域の柔軟な設定(地域毎に関係者が主体的に検討し、医療計画の更新等に併せて段階的に区域のサイズを変化させることも可能とすべき)▼医療・介護資源の最適配置と連携(地域における24時間365日救急患者を受け入れる二次救急医療機関の確保、医師偏在対策の推進、医師過剰地域での新規開業の妥当性を判断するための特例的な仕組み導入、病院勤務医としてキャリアを長く継続しやすくする施策、高額機器等の過剰な配置抑制など)▼医療の質向上・効率化(全国医療情報プラットフォームやオンライン診療の定着、プログラム医療機器や健康アプリの拡大、住民への地域医療構想に関する十分な情報提供、医療情報提供制度を継続的な改善とアウトカムデータの公開)▼行政のガバナンス(PDCAサイクルの実装による都道府県知事・国の確実な進捗管理、当初想定から大きく変化した場合の構想見直し)▼保険者機能の発揮—などが重要になると強調しています。

このほか、「民間病院・公立病院の役割を十分に踏まえた新・地域医療構想の作成と実現」(伊藤構成員)、「医・歯・薬連携の推進」(世古口・荻野参考人)などを重視すべきとの声も出ています。

検討会ではさらに構成員や参考人から意見聴取を重ね、今後の議論のベースとなる考え方を整理していきます。



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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