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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2040年頃見据えた新地域医療構想、在宅医療の強化、構想区域の見直し、「病院」機能明確化などですでに共通認識—新地域医療構想検討会

2024.4.18.(木)

現在の地域医療構想の後継となる「新・地域医療構想、ポスト地域医療構想」(名称は未定)の策定に向けては、「医療・介護連携、在宅医療強化が極めて重要となる」「地域医療構想『区域』の見直しが必要である」「病院機能を明確化する必要がある」「人材確保がますます困難になるため、新技術導入や効率的な運用を進める必要がある」「現状投影型も医療・介護体制ではなく、改革を踏まえた医療・介護体制を検討しなければならない」—。

4月17日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で、こうした意見発表が行われました。検討会ではさらに構成員や参考人から意見聴取を重ねます。

4月17日に開催された「第2回 新たな地域医療構想等に関する検討会」

現状投影型でなく、改革を織り込んだ地域医療・介護提供体制を描け

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」に向けた議論が検討会で始められました(関連記事はこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化が生じるため、こうした状況にマッチする効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)が、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって区々となります(例えば、ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など)。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



検討会では、4月・5月に構成員や有識者から意見を聴取し、それを踏まえて6月から具体的な論点に沿った議論を行うこととしており、4月17日の会合では以下の5氏から第1回目の意見聴取を行いました。
(1)香取照幸構成員(未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)
(2)江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)
(3)相澤孝夫参考人(日本病院会会長)
(4)猪口雄二構成員(全日本病院協会会長)
(5)松田晋哉構成員(産業医科大学教授)



香取構成員は、新たな地域医療構想を考えるうえで、▼ベッド数云々ではなく「将来の医療・介護のあり方そのものを描く構想」と位置付けるべき(コロナ禍を「未来が前倒しで現前した」と捉えるべき)▼2060年までを見据え、その時点で「あるべき姿」を考え、そこからさかのぼって「確保できる医療介護資源でいかに医療介護需要をカバーしていくか」を地域ごとに考える必要がある▼現在・将来における地域の医療資源の分布の姿、疾病構造の変化、集住やコンパクトシティなど地域政策の動向などを見通し「動態的視点」で考える必要がある▼在宅医療・地域医療の強化、アウトリーチ前提の医療・介護体制が不可欠となってくる(85歳以上高齢者▼2040年・60年の人口分布・医療資源分布を念頭に医療圏そのものの見直す必要がある▼資源(特に人的資源)の制約が大きくなることから「かかりつけ医機能」を実装し、テクノロジーを活用した「効率化」を進める必要がある—ことなどを提言しました。



また江澤構成員は、現在の地域医療構想には「地域医療構想は病床削減政策であるとの誤解が生じてしまった」「病院経営の道標となっていない」「介護関係者不在で在宅移行議論が進んでしまった」「地域医療構想調整会議が形骸化している」といった課題があることを指摘したうえで、新たな地域医療構想の策定にあたっては、▼「病棟の機能」を見える化する▼急性期や回復期などの各機能について共通認識を構築し、「回復期」の名称を「包括期」に変更する▼地域医療「介護」構想へと拡大する▼構想区域の再編(大規模な区域を分割し、超規模な区域を合併するなど)を行う▼現状投影型モデルから脱却し、在宅医療強化を図る▼地域特性を踏まえ、地域の裁量を拡大する—ことが重要と提言しました。



他方、相澤参考人は、新たな地域医療構想では、「病床・病棟の機能」ではなく、「病院の機能」に注目する必要があると強調。そのうえで、一般病院を次のように機能分けする考えを提案。
▽広域型病院(広域型、広域専門型)
→入院では主に高度急性期・急性期といった「治す医療」を提供する
→外来では「専門外来等を中心とする紹介外来重点医療機関」として機能を発揮する
→例えば特定機能病院や地域医療支援病院などが想定される

▽地域型病院(地域密着型、地域専門型、地域連携型)
→入院では主に急性期・回復期・慢性期の「治し支える医療」を提供する
→外来では「かかりつけ医機能を発揮し、病診連携の中心として医療の円滑な流れ」を創る
→比較的小規模な一般病院などが想定される

相澤参考人プレゼン1(新地域医療構想検討会1 240417)

相澤参考人プレゼン2(新地域医療構想検討会2 240417)

相澤参考人プレゼン3(新地域医療構想検討会3 240417)



さらに、地域医療構想区域について、▼地域型病院を核とする地域医療圏▼広域型病院を複数抱える「広域医療圏」(複数の地域医療圏を包含)—といった形に組み替えることも提唱しました。地域の医療提供体制の在り方にマッチした圏域を再創造する必要性を相澤参考人は強調しています。

相澤参考人プレゼン4(新地域医療構想検討会4 240417)



また、猪口構成員は、2040年を見据えた全日病提言「病院のあり方に関する報告書:2021年版」を紹介。そこでは、例えば▼人口動態等が地域ごとに大きく異なる点を踏まえなければならない▼必要病床数(地域医療構想における病床の必要量)と基準病床数(医療計画における地域の病床数上限)との整合性を確保しなければならない▼現行2次医療圏を見直す必要があるが、それは直ちには行えないため、「弾力的な運用」(小規模医療圏の共同・統合運用、基準病床数算定の際の特定機能病院の除外、基幹病院の病床数についての「周辺医療圏での共用」を前提とした各医療圏への仮想的配賦など)を検討する必要がある▼病床機能の分類を見直すとともに、「病院の機能」に着目した区分などを検討しなければならない▼高齢者救急の在り方を地域単位に考える必要がある▼人材確保が困難となる中でのICT活用や施設基準見直しなどが必須である—ことなどが提言されています。

猪口構成員プレゼン1(新地域医療構想検討会5 240417)

猪口構成員プレゼン2(新地域医療構想検討会6 240417)

猪口構成員プレゼン3(新地域医療構想検討会7 240417)



さらに松田構成員は、現在の地域医療構想について「様々な分析ツールなどを用意したが十分には使われておらず、残念である」と感想を述べたうえで、新たな地域医療構想に向けて「各医療圏について「地区診断」(将来の医療需要がどう変化し、医療提供体制面でどういった改革が必要なのかの具体的な考え方)を提示する」(松田構成員がリーダーとなる研究班で実施)考えを示しました(また全都道府県でデータの利活用方法を伝授するハンズオンセミナー―実施の考えも明示)。

松田構成員プレゼン1(新地域医療構想検討会8 240417)



併せて、▼1次救急に余裕を持たせ、2次救急・3次救急の疲弊を防ぐ▼地域レベルのRRS(重篤な状態に陥る前に、当該患者に対応できる仕組み)を構築する▼在宅医療の強化はいずれの地域でも必要となる(ただし医療資源は地域で全く異なるので、在宅医療強化に向けたアプローチも地域ごとに異なる)▼医療・介護ニーズとが複合化してい点を踏まえ、いわゆる「函館モデル」を参考に、地域ごとの医療介護提供体制を構築する—ことの重要性を強調しています。

松田構成員プレゼン2(新地域医療構想検討会9 240417)



5氏の意見を眺めると、「医療・介護連携、在宅医療強化が極めて重要となる」「地域医療構想『区域』の見直しが必要である」「病院機能を明確化する必要がある」「人材確保がますます困難になるため、新技術導入や効率的な運用を進める必要がある」「現状投影型も医療・介護体制ではなく、改革を踏まえた医療・介護体制を検討しなければならない」といった点で共通していると言えそうです。新地域医療構想の検討に向けて、すでに構成員らの間で「共通認識ができている」と言えるでしょう。

こうした意見も踏まえて4月17日の会合では、▼介護保険施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院)のニーズが減少している(空床が目立っている)が、その背景には「サービス付高齢者向け住宅の乱立」や「在宅医療の強化」などがある。サ高住乱立は同時に、居住者向けの訪問介護・通所介護整備を伴い、介護人材不足に拍車をかけている(松田構成員、江澤構成員、東憲太郎構成員:全国老人保健施設協会会長)▼病院機能の明確化は重要であるが、地域によっては「1院でかかりつけ医機能から高度専門機能まで担わなければならない」こともある。地域の特性を十分に踏まえた検討が必要である(小熊豊構成員:全国自治体病院協議会会長)▼「救急患者がどの施設に搬送され、どういった医療を受けているのか」「地域の医療機関・介護施設について、どこからどの程度の患者がどこへ移っているのか」といったデータを踏まえて検討できるとよい(土居丈朗構成員:慶応義塾大学経済学部教授)—などの指摘が出されています。

検討会ではさらに構成員や参考人から意見聴取を重ね、今後の議論のベースとなる考え方を整理していきます。



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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