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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

介護側は「安全なケア提供のための医療情報」共有に期待、現場が「どのような情報を欲しているか」を聴取せよ—介護情報利活用ワーキング

2023.6.28.(水)

医療・介護間での情報連携のうち、介護側への「医療機関等からの情報提供」について、介護サイドは「安全なケア提供のための医療情報」共有に期待している—。

現場が具体的に「どのような情報を欲しているのか」をヒアリングなどを通じて明確にしたうえで、どのような手法で共有するか(地域医療連携ネットワークを用いるのか、新設される全国医療情報プラットフォームを活用するのか、など)を考える必要がある—。

なお、その際には「情報入力の二度手間を避ける」などの仕掛けが必要不可欠である—。

6月26日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、こうした議論が行われました。

現場の希望とマッチしない情報連携の仕組みはとん挫してしまう

医療分野と同様に、介護分野についても「利用者の同意の下、過去の介護情報を介護事業者間で共有し、質の高い介護サービスを提供する」ことが重視され、ワーキングでは、例えば(1)要介護認定情報(2)請求・給付情報(レセプト)(3)LIFEデータ(4)ケアプラン—からまず共有を進めてはどうといった方向が固まりつつあります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

6月26日のワーキングでは、医療・介護間での情報連携推進に向けて、介護側で「どのような医療情報を共有することが好ましいか」という点を議論しました(医療側で「どのような介護情報を共有することが好ましいか」との議論に関する記事はこちら)。

このテーマについて髙橋肇構成員(全国老人保健施設協会常務理事)は、(1)介護サイドは「安全にケアを実施する」ために有用な情報を欲している(2)情報連携には、すでに稼働している地域医療連携ネットワークや、これから開発・稼働に向けて動く全国医療情報プラットフォームが有用である(3)情報連携には介護情報の標準化が必須である—との考えを強調しました。

まず(1)では、例えば▼誤嚥性肺炎予防のための「食事形態、栄養状態、口腔ケアなど」▼浮腫予防のための「臓器不全の治療、低栄養の改善など」▼ADL拡大・改善に向けた「バイタルサイン(血圧、体温、脈拍、酸素飽和度など):▼適切な薬剤管理のための「禁忌、飲み合わせ、ポリファーマシーなど」▼転倒・転落防止のために「既往歴、薬剤情報など」—が医療機関等から提供されることに期待が集まります。



こうした情報は、例えば診療情報提供書などの「紙ベース」で共有されるケースが多くなりますが、すでに一部の地域では「地域医療連携ネットワーク」の中で「電子的に共有」されており、また、今後開発・稼働する「全国医療情報プラットフォーム」の仕組みを活用して共有されるケースも出てくるでしょう。

前者の地域医療連携ネットワークは「地域ごとに参加医療機関同士の間で、電子カルテ情報等を共有する」仕組みです。髙橋構成員の経営する社会医療法人高橋病院(函館市)も、函館市を中心とする地域医療連携ネットワークに参加し、参加医療機関・訪問看護ステーション・介護事業所などとの間で詳細な情報連携を行い、医療・介護の質向上につなげています。

あわせて、函館市医師会が音頭をとってスタートした「函館市医療・介護連携支援センター」では、医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会・訪問看護ステーション連絡協議会・地域包括支援センター連絡協議会・居宅介護支援事業所連絡協議会・老人福祉施設協議会・在宅ケア研究会・医療ソーシャルワーカー協会・地域医療連携実務者協議会・訪問リハビリテーション協会・保健福祉部が参加し、「医療機関の入院時・退院時」「介護施設等の入所時・退所時」の情報を共有。さまざまな医療関連・介護関連・生活関連情報のサマリーを参加施設間で手軽に共有し、それを医療・ケアに活かせる環境が整えられています。

その際には「情報が多すぎれば、必要な情報を探しにくくなってしまう」「情報が少なすぎれば、情報連携の意味がなくなってしまう」ため、髙橋構成員は「まず最小公倍数としての情報を設定し、現場ごとに必要な情報を+αで共有していく」仕組みが好ましいとの考えを示しています。例えば、ベースとなる情報は「すべての担当者が入力・共有できる」仕組みとし、個々のケースごとに「担当者レベルで必要な情報を入力し、引き継いでいく」ような形が考えられるでしょう。この点について江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)は「岡山県では、良かれと思って様々な情報を共有できる仕組みを検討したが、現場のニーズにはマッチしておらず、『費用面も考慮すると、そこまでの情報共有は不要である』と考える医療機関が多かったようで地域医療連携ネットワークがとん挫してしまった」ことを紹介し、「情報連携の範囲を考える際には、医療・介護現場の声を十分に聴取することが最も重要である」と訴えています。

もっとも、小規模な介護事業所が地域医療連携ネットワークなどに参加する際には、「情報が膨大で難しすぎる」「導入・運用にコストがかかる」というハードルを下げていくことが必要である点が構成員間で確認されました。

あわせて「入力が二度手間になれば、参加率は著しく下がる」ことを松田晋哉構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)は指摘します。紙ベースの記録にしろ、電子的な記録にしろ、「事業所内での記録」と「共有のための記録」を2回作成するような仕組みではうまくいかず、「事業所内での記録」をそのまま共有可能とする仕組みを構築することが重要です。

なお、地域医療連携ネットワークには「参加は任意であるが、共有可能な情報が豊富である」との、全国医療情報プラットフォームには「参加事業所などの範囲は広いが、共有可能な情報は一定程度限定的である」とのメリット・デメリットがあり、両者がどのような役割分担をするのかも今後の重要な検討テーマとなります。



さらに(3)の標準化は、電子的に円滑な情報連携をする際に必要不可欠です。この点について髙橋構成員は、「現場は標準化にあわせて運用する」、ベンダーは「標準化をシステムに組み入れる」ことを担っており、「標準化そのものの策定、運用、保守などを担う学術団体」の設置が必要であると提案しています。この点について山本隆一委員(医療情報システム開発センター理事長)は「まずは情報の粒度を揃えることが重要である」とアドバイスしています。



厚労省では、これまでの議論も踏まえて▼介護情報の電子的共有の仕組み・介護被保険者証の電子化▼要介護認定情報のデジタル化・電送化▼介護情報を個人・介護事業所間で共有・閲覧できる仕組み▼介護情報の安全管理▼地域医療情報連携ネットワークと介護情報連携基盤—に関する調査研究を進めます(2023年度)。今後、この研究結果も踏まえて「介護事業所、利用者、市町村、医療機関で共有する情報の内容」「情報共有により期待される効果」「情報共有で留意すべき事項」「同意、個人情報保護の観点から必要な対応」「安全管理措置(情報セキュリティの担保)の観点から必要な対応」「技術的課題」「2次利用」などに関する議論を深めていきます。

このうち「安全管理」に関して江澤構成員や久留善武構成員(シルバーサービス振興会事務局長)は「介護版の情報システムの安全管理ガイドライン」の必要性を強調。上述の安全管理に関する調査研究の中で「ガイドライン作成」も視野に入れた研究・検討が行われることに期待を寄せました(医療情報システム安全管理ガイドラインに関する記事はこちら)。

介護情報利活用に向けた調査研究の概要



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