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新たな地域医療構想、「医療人材の確保」「構想区域の柔軟設定」「医療機関の機能分化」「地域差の考慮」などが最重要視点—全自病・望月会長

2024.7.26.(金)

新たな地域医療構想の策定に向けた議論が厚生労働省の検討会で進んでいるが、そこでは「医療人材の確保」「構想区域の柔軟設定」「医療機関の機能分化」「地域差の考慮」などが極めて重要な視点となる—。

少子化で医療人材確保がますます困難になる中では「医療機関の集約化」がどうしても必要になってくるが、単なる集約化では「患者の医療アクセス」に支障もでかねない。そこで、例えば「がん医療はA病院に集約する」「周産期医療はB病院に集約する」「救急医療はアクセスを重視した体制を敷く」など、疾患・事業別に「医療機関の機能分化」を進めることが重要となる—。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が7月25日に開催され、望月泉会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)ら幹部から、こうした考えが示されました。

7月25日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の望月泉会長(岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)

コロナ感染対策には万全を期すが、院内感染がやむを得ないケースもある

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



検討会では、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを、年内(2024年内)に最終とりまとめを行う予定で議論が進められており、6月21日の会合では「論点案」が提示されました(関連記事はこちら)。

全自病でも、新たな地域医療構想の策定に向けた議論を開始しており、7月25日には幹部の間で「論点案」をもとにしたフリーディスカッションが行われました。そこでは、例えば次のような考え方が示されています。

▽「医療従事者の確保」が新たな地域医療構想では、きわめて重要な論点になる
→現在は「医療ニーズ(患者数等)に応じて医療提供体制を整備する」という考え方であるが、将来は「医療従事者数等に合わせて医療提供体制を整備せざるを得ない」という考え方に変わっていくのではないか
→医師については「偏在対策」論議が進められているが、他職種でもそうした議論を行う必要がある

▽「地域格差」を十分に考えて新たな地域医療構想を策定・実現していく必要がある

▽「構想区域」の設定を、例えば5疾病・6事業別に柔軟に考えるべきであろう。地域によっては、例えば「がん医療は2次医療圏よりも広いエリア、周産期医療はより広いエリアで協議をする」必要がある。一方、在宅医療や医療・介護連携は「市町村単位や中学校区単位」で考えていく必要がある。その際、例えば「患者の流出入率が2割を超えるような地域」では、積極的に「より広域な、医療圏・構想区域を超えた医療提供体制」を考えていかなければならない
→在宅医療や訪問看護等に関しては、とりわけ地方では、「移動コスト」などを考慮し、どのように効率的に提供するかが非常に重要な視点となる

▽「高齢者施設(介護保険施設等)と地域密着型病院との連携」強化も非常に重要な視点となる。地域密着型病院では、高齢者施設との連携のほか、入退院支援、慢性疾患患者の急性増悪対応、在宅医療支援などの「かかりつけ医機能」発揮が強く求められている(関連記事はこちら

▽「地域医療構想は2040年頃を見据えた医療提供体制のグランドビジョン、医療計画は直近6か年の具体的な医療提供体制」との整理が行われる。現在の「医療計画>地域医療構想」という考え方から、「地域医療構想>医療計画」という考え方への転換が必要となる

▽医学の進展により「加齢に伴う免疫の衰えのリカバリー」ができれば、高齢者の疾患の多くが解消する可能性もある(その場合、医療ニーズも減少する)。医学・医療の進歩も踏まえて、新たな地域医療構想を考えていく必要がある



医療人材確保が難しくなる中では、「医療人材の散在→医療の質低下」を避けるために、医療機関の集約化が必要になってきます。しかし、集約化は「患者の医療アクセスを阻害する」ことにもつながってしまいます。

この点について望月会長は「医療機関ごとの機能分化を進める必要がある」との考えを強調しました。例えば、地域ごとに「●●疾患は主にA病院で担う、◆◆疾患は主にB病院で担う」などのイメージです。ただし、疾患によっては「待てる」ものと「待てない」ものとがあります。たとえば「がん」医療については、一般に緊急性が求められないため、地域の医療資源(医療人材等)を集約して「主にA病院でがん医療を提供する」という体制に組み直すことが可能と思われます。一方、脳卒中や急性心筋梗塞などの「時間との闘い」になる医療分野では、ファーストアクセスを重視した医療提供体制を構築する必要があります。その際には交通網の整備なども重要な検討要素となります。全自病では、今後も「新たな地域医療構想」に関する議論を進めていきます。



ところで、新型コロナウイルス感染症患者が再び急増しています。この点について松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団副企業長)は、▼骨折や肺炎など「コロナ感染症以外の傷病」で入院した患者が、入院後に「コロナ陽性」と判明するケースも多い。その場合、個室対応が必要となるが、「急性期病床を絞った」病院ではベッド確保が困難になっている▼院内感染対策には万全を期しているが、感染力が強く、どうしても入院中にコロナ感染してしまう事例もまれに生じる。その際、患者・家族から「病院の責任である」とのクレームが来て、スタッフが疲弊することもある。国には「コロナ感染はどの場面でも起こりうる」とのメッセージを国民向けに出すことを期待している—との考えを示しています。

7月25日の定例記者会見に臨んだ全自病幹部。左から野村幸博副会長(国保旭中央病院長)、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団副企業長)、望月会長、小阪真二副会長(島根県立中央病院長)、吉嶺文俊副会長(新潟県立十日町病院長)、田中一成参与(静岡県立病院機構理事長)



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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