骨太方針2025踏まえ、物価・人件費の急騰に対応できる「診療報酬の大幅プラス改定」が必要—全日本病院協会の新会長に神野正博氏!
2025.6.30.(月)
全日本病院協会の社員総会・理事会が6月28日に開かれ、神野正博氏(社会医療法人財団董仙会けいじゅヘルスケアシステム理事長)が選出されました(前会長の猪口雄二氏は勇退)。

全日病の新会長に就任した神野正博氏(写真向かって左)と会長職を勇退した猪口雄二氏(同右)
神野新会長は、「従前は『工夫』によって病院経営が維持できたが、今は公定価格(診療報酬)が上がらない一方、物価や人件費が高騰し、病院経営は非常に厳しくなっている」状況を再確認。
こうした状況を政府も認識し、6月13日に石破茂内閣が決定した骨太方針2025では、医療・介護をはじめとする社会保障予算について、これまでの「高齢化の伸び」に加えて、「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額・加算を行う方針が明示されています。
ただし、神野新会長は「ここから先、今秋から冬(2025年秋冬)にかけての来年度(2026年度)予算案の編成過程で、どの程度の診療報酬プラス改定になるのかが重要である」と見通し、さらに国民・政治家への働きかけを行っていくことが重要と強調しています。
あわせて、今後の病院経営においては「感染症なども含めた自然災害への備え」とともに「災害級の社会構造(高齢者人口の急増、生産年齢人口の急減、その先の高齢者・生産年齢人口双方の減少)の変化への対応」が必要になるとし、過去の成功モデルに捉われず▼統合・再編▼必要に応じた撤退▼新市場の開拓—に向けて、「地域の医療・介護等ニーズ」に自院の機能をマッチさせていく(「やりたい医療」ではなく「求められている医療」への転換)ことが極めて重要であると訴えました。あわせて、働き手(医療従事者等)の確保すら難しくなる中で、「働き方改革やDX導入による生産性向上」などが、これまで以上に重要になるとも指摘しています。
他方、今後の病院は、単に「病やケガを治す」機能にとどまらず、「生活の場(自宅等)→病院→生活の場→病院・・・」というサイクル全体を管理する機能を持たなければならず、「地域包括ケア」にとどまらない「地域包括ヘルスケアシステム」の考えを持つことが必要とも提言しています。具体的には「急性期から慢性期、介護、さらには疾病予防、生活支援などのサービスをすべて統合して提供する」といったイメージで、こうした広範なサービス提供により収益を上げていくことが重要となります。
あわせて今後、全日病の会長として▼国への提言・要望の強化(2026年度の診療報酬大幅改定、期中での「物価・賃金スライド」改定の導入、消費税問題の解決、人員配置基準の見直し(DX活用によるプロセス・アウトカム評価)、一般病院への医療施設近代化施設整備事業(補助事業)の復活、入院時の食事に関する問題の解決など)▼変化しようとする、やる気のある会員病院への支援強化(医療の質向上、人材の確保・資質向上、経営支援(ベンチマーク事業や共同購入)、2040年を見据えた「病院の在り方報告2026」のとりまとめ、など)▼全日病のブランド力アップ—に尽力する考えを明確に示しました。
また同日の総会では、新副会長として次の4氏を選出しています。
▽美原盤氏(公益財団法人脳血管研究所美原記念病院院長)
▽中村康彦氏(医療法人社団愛友会上尾中央総合病院理事長)
▽猪口正孝氏(社会医療法人社団正志会令和あらかわ病院理事長)
▽大田泰正氏(社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院理事長)

全日病の新執行部、写真向かって左から太田泰正副会長、猪口正孝副会長、神野正博会長、美原盤副会長、中村康彦副会長
なお、同日には来賓として日本医師会の松本吉郎会長、参議院議員の武見敬三氏、同じく自見はなこ氏、衆議院議員の安藤高夫氏が出席し、▼骨太方針2025で、社会保障予算について、これまでの「高齢化の伸び」に加えて、「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額・加算を行う方針が明示されたことは、きわめて画期的である▼今秋(2025年秋)からの来年度(2026年度)予算案の編成過程での「診療報酬プラス改定財源確保」がさらに重要である▼2025年度の補正予算を組み「期中の病院経営支援」に向けて検討が進んでいる—ことなどを強調しています。

6月28日の全日病総会に来賓として出席した日本医師会の松本吉郎会長

6月28日の全日病総会に来賓として出席した参議院議員の武見敬三氏

6月28日の全日病総会に来賓として出席した参議院議員の自見はなこ氏

6月28日の全日病総会に来賓として出席した衆議院議員の安藤高夫氏
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