2026年度診療報酬改定やその後を見据えた医療改革とともに、「12月の賞与支給」を見据えた病院経営緊急支援が必要—日病・相澤会長
2025.7.2.(水)
病院経営が危機的な状況にあることを政府も認識し骨太方針2025に、医療・介護をはじめとする社会保障予算について、これまでの「高齢化の伸び」に加えて、「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額・加算を行う方針が明示された—。
日本病院会では、これらの実現に向けて「喫緊の対応」「2026年度診療報酬改定での大幅引き上げ」「将来の医療提供体制改革」などを提言し、これに賛同する人物の政界進出を応援・支援する—。
このうち「喫緊の対応」については、「この12月(2025年12月)の賞与支給」を確実にし、病院運営を維持するために、「年内(2025年内)の財政出動」が極めて強く求められる—。
日本病院会の常任理事会(6月28日)で、こうした点を確認されたことが、7月1日に定例記者会見に臨んだ相澤孝夫会長から明らかにされました。

7月1日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長
病院経営は厳しく、今のままでは「賞与の減額」→「スタッフの離職」につながってしまう
Gem Medで報じているとおり、未曽有の病院経営の厳しさを踏まえて、6月13日に石破茂内閣が決定した骨太方針2025では、医療・介護をはじめとする社会保障予算について、これまでの「高齢化の伸び」に加えて、「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額・加算を行う方針が明示されています。
極めて画期的な内容ですが、病院団体では「診療報酬の大幅プラス改定に確実につながる」ことが重要と気を緩めていません(関連記事はこちら(日本病院団体協議会)とこちら(四病院団体協議会)とこちら(全日本病院協会))。
日本病院会では、さらに「喫緊の対応」「2026年度診療報酬改定での対応」「将来に向けた対応」に分けて改革・改善を進めていかなければならないことを幹部会合(会長、副会長、常任理事等で構成される常任理事会、6月28日開催)で確認したことが、7月1日の定例記者会見で相澤会長から報告されました。
このうち「将来に向けた対応」に関しては、次のような意見が日病幹部の中から出ています。
▽「地方の急性期病院」が継続運営できるよう、例えば【急性期一般2】等の病棟を届け出る病院が、今後、地域でどういった機能を果たすべきか、評価の在り方をどう考えるかを整理する必要がある。人口の少ない地域では、各種の加算も算定しにくい。
▽「2次医療圏」と「実際に医療を提供するエリア」との間には相当の乖離があり、「2次医療圏をどう設定するか、地域でどう運用するのか」などを整理していく必要がある
▽人口減少が進む中で、各地域で医療提供体制の在り方をどう考えるかを明確化していく必要があり、それを病院任せにすることは好ましくなく、大きな方針については国がリーダーシップをとって明確化していくべきである
▽病院から取り引き先企業等へ支払う経費は膨らんでいくが、病院の中に「運営のための費用、投資のための費用」はたまらない構造になっており、これをなんとかしていかなければならない
↓
▽病院の建て替え・増築は、今の診療報酬・消費税では不可能に近い。補助金等の多様な支援策がなければ、地域の医療ニーズへの対応(施設整備、設備整備等)ができなくなってしまう
また、2026年度診療報酬改定については「大幅な入院基本料の引き上げ」が、また「喫緊の対応」として「病院経営の危機に対処するための補助金等」(例えばコロナ危機で行われた「1床当たり●万円」の病床確保料を参考にした補助金など)が必要不可欠であると相澤会長は強調しています。
さらに相澤会長は、こうした日病幹部の声をブラッシュアップし「提言・要望」にまとめる考えも提示。あわせて「日病の提言・要望に賛同してくれる人物」について、近く開かされる参議院議員選挙に向けて応援・支援していく考えも示しています。
なお、日病は、国立病院機構、労働者健康安全機構(労災病院の設立母体)、地域医療機能推進機構(JCHO病院の設立母体)、全国自治体病院協議会、日本赤十字社、済生会、全国厚生農業協同組合連合会(厚生連病院の設立母体)と連盟で6月30日に、加藤勝信財務大臣に宛てて、次のような「国民に適切な病院医療を安定的に提供するための提言2025」を行っていました。すでに福岡資麿厚生労働大臣に宛てて行った提言と同じ内容です。
(1)病院の経営支援が必要、2025年度中の財政出動が必要
(2)診療報酬による入院基本料の引き上げが必要
(3)休日夜間も「とりあえず診てくれる」病院が必要
(4)地域において「まず診る」役割を担う総合的な医師=総合医が不足しており、医師偏在対策としても病院での総合診療機能の強化が必要
(5)地方の生き残りと創成には「病院」の存在が不可欠
このうち(1)は、上述の「喫緊の対応」と重なるものですが、相澤会長は「多くの病院では12月(2025年12月)にスタッフで賞与を支給することになるが、病院経営が非常に厳しい中で、このままでは『賞与の減額』(場合によっては支給停止)などを考えざるを得ない状況にある。しかし、減額などを行えば、病院から多くのスタッフが去ってしまい、病院を維持できなくなってしまう。『本年度内』と言わず『年内』に緊急の財政支援を行ってもらわなければ、病院運営が立ち行かなくなる可能性がある」と強調しています。
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