医療提供体制のグランドデザイン、ポスト地域医療構想、アウトカム重視した人員配置基準など議論すべき—社保審・医療部会
2022.10.18.(火)
2024年度からの第8次医療計画に向けた議論が進んでいるが、まず「医療提供体制のグランドデザイン」を描くべきではないか—。
また地域医療構想の実現期限(2025年度)が、次期医療計画の期間中(2024-29年度)に到来する。少子高齢化がさらに進展する中で「ポスト地域医療構想」を早急に検討すべきではないか—。
人員配置基準について、医療DX・ICT化による効率化を踏まえた、「アウトカム」(医療の質)を重視した新基準を検討していくべき—。
10月13日に開催された社会保障審議会・医療部会において、こういった議論が行われました。
2024年度からの第8次医療計画に向け、作成指針論議が検討会などで進む
Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から「第8次医療計画」がスタートするため、第8次医療計画等に関する検討会(以下、検討会)や下部組織(ワーキンググループ)などで、都道府県が医療計画を作成する(2023年度中に作成)際の拠り所となる指針(基本指針、2022年度中に都道府県に提示)策定論議が精力的に進められています。
10月13日の医療部会では、検討会やワーキングの状況報告を受けたうえで、次期医療計画に向けた意見交換が行われました。
まず目立ったのは「我が国の医療提供体制のグランドデザインを描くべき」との意見です。楠岡英雄部会長代理(国立病院機構理事長)や相澤孝夫委員(日本病院会会長)は「グランドデザインを描かずに細部の議論を行っているため、ちぐはぐな、ばらばらな印象を受ける」「医療計画などの積み上げがグランドデザインに見えてしまう危険性がある」と述べ、「どこかでグランドデザインの議論をしっかりする必要がある」と強く訴えました。
また、「ポスト地域医療構想となる新構想」論議を求める意見も数多く出ています。地域医療構想は、▼2025年度における医療需要を推計する→▼そのニーズを満たすための機能別(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)の病床数(必要病床数)を推計する→▼現在の機能別病床数(病床機能報告)を、2025年度の必要病床数に近づけるよう、地域医療関係者が膝を突き合わせて議論していく—ものと言えるでしょう。次期医療計画の計画期間(2024-2029年度)中に、地域医療構想の実現期限(2025年度)が到来します。また、2025年度から2040年度にかけて、後期高齢者の数そのものは大きく増加しないものの、支え手となる現役世代が急速に人口するため、医療提供体制改革の必要性が増していきます。こうした状況をうけ、「地域医療構想の後継構想(ポスト地域医療構想)」論議を早急に行うべきではないか、との指摘が島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)や楠岡部会長代理から改めてなされました。
今後、検討会の下部組織である「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」などで今後、議論が進むと思われますが、「まず2025年度に向けて地域医療構想の実現に努める」ことが急務である(このため、民間を含めたすべての医療機関で今年度(2022年度)・来年度(2023年度)に機能再検証を行う)ことを忘れてはいけません(関連記事はこちら)。
また、今後の医療提供体制を考えていくうえで、非常に重要となるのが「医療DXの推進」や「ICTやAI、ロボットの導入」などです。効率的かつ質の高い医療提供の実現が期待されますが、神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「一般企業であればICTやロボット導入により人手を減らすことができるが、医療機関では人員配置基準が設けられており、人手の削減はできない。どこかで『アウトカムを重視した』人員配置基準を考えていく必要がある」と指摘しています。人員配置基準は「医療の質を確保するためには、●名の医師、◆名の看護師などの配置が必要である」という視点で設定されています。決して「●名の医師、◆名の看護師を配置する」ことが目的ではなく、「医療の質を確保する」ことが目的です。そこで神野委員は「医療DXやICTなどの効果を踏まえて、医療の質を確保するための新基準を検討する必要がある」と提案しているのです。少子化の進行で人員確保が難しくなる点も踏まえ、非常に重要な視点・指摘と言えます。
このほか、▼精神科医療について他の疾患・事業と横串を刺した検討を進めていくべきである(精神科のみ社会・援護局が所掌している点も改善すべき)。精神科の診療報酬を引き上げるべき(小熊豊委員:全国自治体病院協議会会長、山崎學委員:日本精神科病院協会会長)▼中央で定めた基準を地方で一律適用されることで、地方が疲弊してしまう点に配慮すべき(相澤委員)▼医療需要が多くの地域で減少していく中、「基準病床数制度が必要かどうか」も含めた議論を進めていくべき(島崎委員)—などの意見も出ています。
こうした意見も踏まえ、検討会や下部ワーキングでさらに議論を深めていき、「年末の意見とりまとめ」「年度末の基本指針公表」を目指します。
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