第8次医療計画に向け在宅医療推進方策を議論、「医療的ケア児への在宅医療」が重要論点の1つに―在宅ワーキング
2021.10.14.(木)
第8次医療計画が2024年度からスタートするが、医療計画の1要素である「在宅医療提供」について、基盤整備や医療・介護連携、サービスの質向上、感染症対応などの検討を進めていく必要がある―。
質の向上に向けては、「医療的ケア児」への在宅医療提供をどう進めるかが、最重要論点の1つとなるのではないか―。
10月13日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(第8次医療計画等に関する検討会の下部組織、以下「在宅ワーキング」)で、こういった議論が始まりました。
在宅医療そのものの整備、医療・介護連携、感染症症対応などが重要論点
お伝えしているとおり、2024年度から「第8次医療計画」がスタートします。医療計画には、▼5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)▼6事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児救急を含む小児医療、新たに「新興感染症」医療)▼在宅医療—に関する医療提供体制、さらには▼基準病床数▼医療従事者の確保▼医療安全の確保▼施設整備目標―などを定め(医療法第30条の4第2項ほか)ます。
在宅医療に関しては、訪問診療や往診、訪問看護といった在宅医療そのものはもちろんのこと、▼在宅療養患者が増悪した場合の後方病床との連携▼在宅介護サービスとの連携▼地域の生活支援事業との連携—なども、非常に重要な要素となります(単に訪問診療や訪問看護を確保すれば済むわけではない)。
そこで在宅ワーキングでは、第8次医療計画に向けて(1)在宅医療の基盤整備(2)患者の状態に応じた質の高い在宅医療提供体制の確保(3)災害時・新興感染症拡大時における在宅医療提供体制―の主に3分野を検討していくことを確認しました。
うち(1)の基盤整備では、例えば▼訪問診療や訪問看護などの基盤整備▼在宅医療・介護連携▼ICT等も活用した効率的なサービス提供―などが論点になってきます。
市町村の地域支援事業の中に「在宅医療・介護連携推進事業」が盛り込まれていることからも分かるように、在宅医療の整備は、都道府県が責任主体となるものの、市町村の役割も極めて重要となります。
この点、鈴木邦彦構成員(日本医療法人協会副会長)は「市町村によって、在宅医療整備に向けた体制・知識、さらに地域の医療資源はバラバラである。都道府県や地域医師会が連携して市町村をバックアップしていくことが必要不可欠である」と強調。
また角野文彦構成員(滋賀県健康医療福祉部理事)は「例えば『看取り件数』1つをとりあげて、この地域では在宅医療提供体制が進んでいる、進んでいないなどの判断はできない。在宅医療の整備度合いなどをきちんと評価できる指標を、これから時間をかけて設定していくことを期待する」とコメント。田中滋座長(埼玉県立大学理事長)もこのコメントに賛同しています。
この点、高砂裕子構成員(全国訪問看護事業協会副会長)は「訪問看護ステーションの配置や、訪問看護提供件数などを重要評価指標とする」ことを求めており、これから「測定のしやすさ」なども含めて検討が進められます(測定しにくければ、いくら指標を設定しても実効性が上がらない)。
また(2)の「質の高い在宅医療」に関しては、▼チームによる在宅医療▼入院との連携▼医療的ケア児などへの在宅医療提供など―を検討していくことになります。
このうち「医療的ケア児への手厚い在宅医療」に関しては、松本吉郎構成員(日本医師会常任理事)や荻野構一構成員(日本薬剤師会常務理事)、大三千晴構成員(徳島県美波町福祉課長)、高砂構成員ら多くの構成員から「現場の実態を踏まえた体制整備と、在宅医療提供を強力に進める」ことを強く求めています。在宅医療・介護と聞くと、どうしても「高齢者向けのサービス」を思い浮かべてしまいがちですが、「医療・介護ニーズが高く、自宅等で療養している小児」へのサービスも極めて重要で、さらに基盤拡充等を進めていく必要があります。第8次医療計画では、構成員の関心の高さを踏まえれば、最重要論点の一つとなってくるでしょう。
一方、(3)は、例えば現下のコロナ感染症対応でもそうですが、感染症や災害などで医療ニーズが爆発的に増大した際にも、住民に必要な医療提供を行うために、どういった体制を整備しておくべきかという論点です。
コロナ感染症が急拡大した際(例えば今夏の第5波など)には、入院可能な患者が限定され、多くの患者は自宅や宿泊施設で療養することを余儀なくされます。その際に、必要な医療提供を継続するために、在宅医療や訪問看護の重要性が再確認され、国は診療報酬上の特例を設けるなどして「在宅医療、訪問看護への参入」を促しました。
今後も新興感染症や災害が生じると予想され、平時から「緊急時を踏まえた在宅医療提供体制」を考えておく必要があると言えます。
ただし、ここでも地域によって医療資源などが異なること、医療機関等によって温度差があることなどを踏まえた検討が必要となってきます。
第8次医療計画に関しては、「2022年度末までに国で指針を示す」ことが必要です(指針を受けて23年度に都道府県で計画を作成し、24年度から稼働させる)。これを見据え、在宅ワーキングでも2022年初頭に向けて議論を進め、取りまとめを行うことになるでしょう(他ワーキングも含めて取りまとめ結果を、第8次医療計画等に関する検討会で整理し、指針に盛り込むことになる)。
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