地域ごとに「24時間の在宅医療提供体制」構築を進めよ、そこではICTも活用した多職種連携が極めて重要―在宅医療、医療・介護連携WG
2025.12.19.(金)
地域・地域において「24時間の在宅医療提供体制」を整備する必要があり、その際は「地域の多様な関係機関・多職種の連携」が非常に重要となり、連携を進めるために「ICTの活用」が重要かつ必須となる―。
在宅医療提供体制の構築にあたっては、地域で「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」や「在宅医療に必要な連携を担う拠点」を位置づけ、それぞれの機能を十分に発揮してもらうことが重要である。しかし、「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」に医療機関でない施設等を位置付けている地域も少なくないため、そうした場合には位置づけの見直しが求められる―。
災害時などに「在宅療養患者への支援」(在宅医療提供の継続、適切な場所への避難など)を適切に行うために、地域単位でのBCP(業務継続計画)を作成し、平時からの連携・情報共有を密にすることが求められる―。
12月17日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(地域医療構想及び医療計画等に関する検討会、以下「在宅WG」)で、こういった内容を盛り込んだ「対応の方向性のとりまとめ」が大筋で了承されました。今後、野口晴子座長(早稲田大学政治経済学術院教授)と厚生労働省で、委員意見を踏まえた修正等を行い、近く親会議である「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」に報告します。
災害時に備え、平時からの連携・情報共有を進めよ
高齢化の進展とともに在宅医療・在宅介護ニーズが急速に高まるため、2022年11月に、各都道府県の「在宅医療整備計画」(医療計画の一部となっている)作成の際に拠り所となる「在宅医療の体制構築に係る指針」改定(以下、指針)が行われました。改定のポイントとしては、▼「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の目標・機能・役割などの整理▼適切な在宅医療圏の設定▼医療介護連携の強化▼在宅療養患者が急変した場合の対応、看取り対応の強化—などがあげられますこちら)。

在宅医療圏域に求められる事項(在宅ワーキング2 220928)
各都道府県の「在宅医療整備計画」は3年を1期(現在は2024-26年度の計画が進行中)としており、2027年度からの新計画に向けて「現在の計画進捗状況」や「在宅医療・介護を取り巻く状況」を確認したうえで、在宅WGで指針見直し論議が行われています(関連記事はこちら)。
12月17日の会合では厚生労働省から、これまでの議論を踏まえた「対応の方向性のとりまとめ案」が提示されました。
●「対応の方向性のとりまとめ案」はこちら(文言修正の可能性あり)
(1)在宅医療の提供体制(2)「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」「在宅医療に必要な連携を担う拠点」(3)ICTの活用等を通じた多職種連携・生産性向上の取り組み(4)介護との連携(5)災害の発生に備えた在宅医療のあり方(6)その他—の6項目について、▼第8次医療計画の後期計画(2027-29年度)での対応▼第9次医療計画(2030-35年度)での対応―を整理しています。対応方針案のポイントと、それに対する構成員意見等を項目ごとに見てみます。
(1)在宅医療の提供体制
●第8次後期計画での対応
【24 時間の提供体制の構築】
▽都道府県は、「地域で在宅医療を実施している病院や診療所等のそれぞれの診療の実態等」「在宅医療を支える歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション等が有する機能や診療との連携状況」を踏まえ、市町村や「在宅医療に必要な連携を担う拠点」(以下、拠点)とも連携して、24 時間の提供体制等について「特に課題がある地域」を把握する
▽「特に課題がある地域」を中心に、「夜間・休日の輪番制等の地域におけるルール」の作成状況等について、「拠点」を通じて情報把握するよう努める
▽地域において「夜間・休日における輪番制等のルール」が明確でない場合は、都道府県と「拠点」が連携しながら、地域において「曜日・時間帯別等の往診体制整備」「緊急時の連絡を受ける医療機関」等の整理等を行い24時間の提供体制の構築を進める
【専門性の高い在宅医療も含めた提供体制の構築】
▽小児や医療的ケア児等に対する在宅医療については専門性が特に必要であり、地域において、高齢者等に対する在宅医療の提供体制と併せて検討する
▽都道府県は、各地域において「小児や医療的ケア児等に対する在宅医療の提供状況」を把握し、「課題を有する地域」がある場合には、在宅医療圏域にこだわらず、「隣接する圏域や2次医療圏全体での提供体制を構築する」ことも検討しながら、各地域で必要な在宅医療を提供する医療機関を把握する
【効率的かつ効果的な在宅医療】
▽在宅医療の需要が増加する一方、「医療従事者の確保」が困難となるため、在宅医療領域でも業務効率化や職場環境改善に取り組むことが求められる
▽各地域で、「在宅医療を担う医療機関」と「後方支援等機能を担う病院、その他訪問看護ステーションなどの関係者」とのの情報共有を可能とし、効率的な在宅医療提供が可能となるシステムの導入等を進めることが考えられる
▽国には、こうした取り組みへの後押しが望まれる
●第9次計画での対応
▽2040年を見据えた医療提供体制構築に資するよう、例えば以下のような点について、状況把握・必要に応じた見直しの検討を進めるべきである
・在宅医療を受けている患者に対する「時間外・休日の効率的かつ効果的な医療提供体制のあり方」
・訪問診療・訪問看護提供状況の地域差も踏まえた、「平日の日中等における訪問診療や訪問看護の提供のあり方」
・在宅医療に従事する医療従事者の確保に向け、「入院や外来医療等に携わる者による在宅医療への関与」方策(こうした従事者が切れ目なく医療を提供できるよう、関係職能団体等による在宅医療に係る医療従事者の研修の活用等も含めて)
・地域医療構想区域の見直しを踏まえた「在宅医療の圏域の考え方」
・在宅療養患者の緊急時の入院先や、入院先と在宅医療を提供している医療機関との連携など「在宅医療を受けている患者に係る救急のあり方」
こうした方向に異論・反論は出ていませんが、構成員からは▼例えば「人口2万人程度の市町村単位で在宅医療圏を設定する」(都会では日常生活圏域を在宅医療圏とすることが考えられる)、「在宅医療、医療・介護連携、かかりつけ医機能は一体的に確保する」「在宅医療圏域内で関係多職種による合議体をつくり、多職種連携で急変時の入院体制も勘案した24時間の在宅医療提供体制を構築する」ことが重要である(鈴木邦彦構成員:日本在宅療養支援病院連絡協議会会長)▼適切な在宅医療圏域設定に資するデータの収集・分析・公表を国にお願いする(荒井秀典構成員:国立長寿医療研究センター理事長)—などの注文がついています。
「在宅医療と在宅介護の双方がなければ、在宅療養が行えない」と従前から指摘されていることなどを踏まえれば、鈴木構成員の指摘どおり「在宅医療圏を市町村単位に設定する」ことが好ましいと言えます。
ただし、小規模な市町村では「市町村内に十分な数の在宅医療を提供する医療機関がない」ケースもあります。このため、「地域・地域の状況を踏まえて適切に在宅医療圏を設定する」という現在の考え方を維持することが現実的でしょう。
もちろん、その場合でも上記のように「様々な医療機関や介護サービス事業所などが連携して24時間の在宅医療提供体制を構築する」ことや、「在宅医療を提供する医療機関の裾野を広げる」(例えば「24時間対応は無理だが、●曜日の●時から●時まであれば在宅医療を提供できる」という医療機関を多く募り、総合力で24時間体制を確保するなど、関連記事はこちら)取り組みが重要なことは論を待ちません。
(2)「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」「在宅医療に必要な連携を担う拠点」
●第8次後期計画での対応
【在宅医療において積極的役割を担う医療機関】
▽医療機関以外の施設等を位置づけること(1万1309か所のうち2959か所が「医療機関以外」となっている)は「在宅医療を自ら提供」するという「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」の趣旨に合致しないことから、その位置づけを速やかに見直す
▽現行において位置づけられている「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」が「在宅医療の実態を反映したものであるかが不明確」との指摘も踏まえた「位置づけの整理」が必要である
【拠点】
▽今後、在宅医療の需要増が見込まれること等を踏まえ、「拠点」は地域における在宅医療の提供体制に関する協議の機会を提供し、在宅医療提供施設や職能団体等の関係者、行政の担当者が参画した「顔の見える関係」の構築を進める
▽協議の中で、議題に応じて、介護関係者や障害福祉サービスの関係者とも連携しながら、切れ目ないサービスの提供に向けた関係者間の関係構築に努める
▽都道府県は、当該拠点の取組状況を「在宅医療圏域ごと」に把握し、「連携に課題がある」と考えられる地域に対しては、郡市区医師会と市町村を繋ぐ等の関係者間の関係構築に努める
▽都道府県は、「拠点」の担当者・都道府県や市町村等の担当者の理解促進や業務の円滑な実施の観点から、「在宅医療に必要な連携を担う拠点の整備・運用に関するガイドブック」も活用し、地域の医療資源等の把握、連携上の課題の抽出等の実施状況の確認、課題解決に向けた検討を進める
●第9次計画での対応
▽2040年を見据えた医療提供体制構築に資するよう、例えば以下のような点について検討を進めるべきである
・在宅医療の需要増が見込まれる一方、医療従事者の確保が困難となることが想定される中、実際に提供している在宅医療・その他の役割の実施状況等を踏まえた「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」のあり方
・すでに在宅医療・介護連携推進事業の取り組みが進んでいることや、新たな地域医療構想において在宅医療等連携機能が医療機関機能の1つとして位置づけられることを踏まえた、「拠点」に特に求められる役割
こうした内容に対して鈴木構成員は、▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関」が指針で求められている役割を実際に果たしているかどうかを検証する仕組み・枠組みを設けるべきである▼「拠点」と「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」や在宅医療・介護連携推進事業の実施主体などを「無理に分ける必要はない」点を明確にすべき。「在宅医療提供にかかる相談窓口」機能が地域で機能していることが重要である―と進言しています。
(3)ICTの活用等を通じた多職種連携・生産性向上の取り組み
●第8次後期計画での対応
▽オンライン診療による診療体制の確保、ICT・AI 機器による組織内・職種内での業務効率化、ICTによる多職種間の情報共有などが進んでおり、先進的な事例や優良事例などの好事例を収拾し、周知することが求められる
▽国において、後期計画期間中も好事例を収拾し、周知する
▽都道府県は、そうした好事例を基に必要な対応を行う
▽都道府県は、各在宅医療圏域において、在宅医療の提供状況等も踏まえつつ、必要に応じて地域の医師会等の協力も得ながら、在宅医療提供状況や在宅医療に関わる多職種の連携状況、課題の把握に努め、多職種連携も含めた効率的な在宅医療提供体制の整備を進める
●第9次計画での対応
▽ICTの活用等については、技術の進歩に応じて導入施設や地域における運用方法の見直しを不断に行うことが重要であり、国は継続的な事例収集を通じて、運用方法の変更などを検討する
こうした方向に対しては「財源面での支援」を求める声が鈴木構成員や坂本泰三構成員(日本医師会常任理事)、知浦太一構成員(奈良県生駒市地域医療課課長)から強く出ています。
きわめて重要な視点ですが、財源確保のためには「予算」が必要であり、厚生労働省内での調整、政府内での調整(とりわけ財務省との調整)が求められ、すぐに意見を反映できるかどうかは微妙です。
なお、この点については「業務効率化・職場環境改善の更なる推進に関する方向性」の中で「医療機関のDX化を財政面も含めて広く支援していく」方針が打ち出されており、その中で「在宅医療におけるICT化支援」メニューが盛り込まれることに期待が集まります。
このほか、▼オンライン診療、とりわけ「D to P with N」(例えば「訪問看護師が在宅療養患者宅を訪問する」→「訪問看護の現場と、遠隔地の医師とをオンラインでつなぐ」→「看護師が患者の状況などを医師に説明する、医師が看護師に必要な指示などを行う」というオンライン診療の形態)を推進する必要があり、国による支援も期待される(村松圭司構成員:千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター特任教授、中島朋子構成員:全国訪問看護事業協会常務理事)▼AIの活用による間接業務の効率化が重要となる。ただし小規模医療機関でのAI導入・活用にはハードルもあり、国による支援(例えば分かりやすい手引きの作成など)が必要である(村松構成員)▼県を跨いだ情報連携では様々なハードルもあるようで、そうした点への対応も検討すべき(杉山知実構成員:愛知県東栄町役場福祉課高齢介護係長、知浦構成員)▼ICTを活用した情報連携については地域差が大きく、そこを解消する視点も重要である(田母神裕美構成員:日本看護協会常任理事)—といった意見も出されています。いずれも重要な視点です。
(4)介護との連携
●第8次後期計画、第9次計画での対応
▽医療と介護の連携について地域毎に様々な取り組みが進められており、現時点においては、一律にそのあり方を国が定めるのではなく、まずは「都道府県等を通じて、国において医療と介護の連携の実態を収集する」ことが必要である
▽得られた医療・介護連携の事例について、「特に好事例と考えられるもの」「各都道府県で参考として活用しうるもの」を中心に、国から周知を行い横展開を図ることが望ましい
この点に関して鈴木構成員は「ACSCs(適切なタイミングでの効果的な介入により重症化・入院を防げる疾患や状態)への対応を普及する取り組みを国で進めてほしい」と要請。あわせて鈴木構成員や荒井構成員、坂本構成員は「リハビリ専門職(例えば医療保険・介護保険の訪問リハビリなど)との連携」も重視すべきと進言しています。
(5)災害の発生に備えた在宅医療のあり方
●第8次後期計画での対応
▽在宅医療を提供する医療機関等は、平時からBCP(業務継続けいかく)を策定し「発災後も可能な限り在宅医療を引き続き提供できる体制の整備を進める」「継続した在宅医療提供が困難な場合にも、患者の医療提供を途切れさせないよう、在宅療養患者の被災状況等の把握・共有について自治体と連携する」方策を検討すること。また、「在宅療養患者の発災時の受け入れ先」を自治体とともに予め検討する
▽都道府県は、既存のシステムの活用等により「災害発生時に在宅サービスを提供する施設・事業所の被災状況を把握できる」体制整備に努め、在宅療養患者について、在宅において電源や水道が確保できなくなった場合を想定し「当該都道府県内において、そうした患者を受け入れる医療機関等を、災害拠点病院を中心にあらかじめ検討」しておく
▽都道府県内で完結しない場合、「隣接する都道府県とあらかじめ相互に受け入れを依頼する」ことなどについても検討する
▽こうした検討に当たっては、被災する地域が様々想定され、まずは「受け入れ可能な医療機関等の明確化」を進めることが重要である
●第9次計画での対応
▽「地域におけるBCP」は、市町村が作成している場合や都道府県が作成している場合など様々である
▽発災後当面の間「市町村内では医療が完結できなくなる」場合も想定されるため、地域におけるBCPの策定について、作成主体や記載事項、連携すべき関係者等について、地域での取り組みも踏まえた検討を行う
▽例えば「人工呼吸器を使用している患者」について、人工呼吸器の製造販売業者が当該地域に居住する患者について発災後に速やかに状況を確認するといった自主的な取組が行われており、こうした関係者の協力も得るなど、関係者間での情報共有のあり方について検討を行う
この方向にも異論・反論は出ていませんが、▼「発災時に、行政から医療・介護施設等へ避難名簿等の情報を速やかに提供できる体制」の整備や、「医療・介護内容に応じて避難先(病院、診療所、介護老人保健施設など)へ速やかに避難できる体制」の整備を進めてほしい(鈴木構成員)▼ボランティアには限界がある、被災地支援に対する財政的支援実施を明確にすべき(坂本構成員)▼発災時の支援を協力に都道府県にお願いしたい。例えば大災害時に医療機関がガソリンを確保できず、訪問診療や往診に難渋した事例もある(島田潔構成員:全国在宅療養支援医協会常任理事)—との注文がついています。「財政的支援」については上述のとおり、すぐに意見を文面に反映できるかは難しいところです。
(6)その他
▽入院時・退院時など療養環境の移行時に「多職種が参加するカンファレンス」で連携を図り、患者の意向を含めて平時から多職種間で情報の共有を行っている取り組みがある
▽「拠点」に求められる役割の1つとして「ACP(自身が人生の最終段階で受けたい医療・受けたくない医療などを関係者とともに繰り返し話し合い、できれば文章にして共有する取り組み)の普及」に取り組んでいる事例があり、国において「ACPの課題や必要な対応の整理・検討」を進めるべきである。
この点については「市町村を在宅医療圏として設定し、平時からの多職種連携体制を構築することでACPの取り組みも進んでいく」と見通しています。
多様な意見が出ていますが異論・反論は出ておらず、上記内容は大筋で了承されたと言えます。今後、野口座長と厚労省で委員意見を踏まえた修正を行い、近く親会議である「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」に報告します。
なお、同日には「医療ソーシャルワーカー業務指針」の改訂案も了承されました。改訂プロジェクトチームの座長を務めた村松構成員は▼MSWの現状の業務内容に鑑みて、多岐に渡る業務を整理した(業務を実践する場の変化に合わせた見直し[組織内/地域における役割の明記、在宅医療提供施設に所属するMSW増加を踏まえた入院・外来、在宅等における業務の整理など]▼MSWの業務内容が変化している点を踏まえた見直し(意思決定支援における役割の明記、医療ソーシャルワーク部門の体制整備の明記など)▼現行の業務指針内で使われている用語の見直し―などがポイントであると説明しています。
●「医療ソーシャルワーカー業務指針」の改訂案はこちら(文言修正の可能性あり)
構成員からは▼倫理面も重視すべき(例えば、外部施設から利益供与を受けて退院先を決定するなどの事例もあると指摘されている)▼各種研修を受講しやすくすべき―などの意見が出ており、最終調整が行われます。
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