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251218ミニセミナー診療報酬改定セミナー2026

在宅医療提供体制が脆弱な地域、「地域の関係機関が連携して在宅医療を提供する体制」構築を―在宅医療、医療・介護連携WG

2025.12.3.(水)

在宅医療提供体制が脆弱な地域では、地域の多様な関係機関が連携し「面として在宅医療を提供する体制」を構築する必要がある。その連携の際にはICTを活用することが重要かつ必須であるが、導入・運用にはコストもかかるため、例えば地域医療介護総合確保基金の優先的な活用などを検討してはどうか―。

いつ起こるか分からない災害時にも在宅療養患者に必要な在宅医療を円滑に提供できるよう、「地域単位のBCP(業務継続計画)」策定が急がれる―。

11月19日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(地域医療構想及び医療計画等に関する検討会、以下「在宅WG」)で、こういった議論が行われました。年明け1月頃に意見をとりまとめ、その後、親会議である「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」に報告を行います。

災害時にも在宅療養患者に必要な在宅医療を円滑に提供できるような計画策定を急げ

高齢化の進展とともに在宅医療・在宅介護ニーズが急速に高まるため、2022年11月に、各都道府県の「在宅医療整備計画」(医療計画の一部となっている)作成の際に拠り所となる「在宅医療の体制構築に係る指針」改定(以下、指針)が行われました。改定のポイントとしては、▼「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の目標・機能・役割などの整理▼適切な在宅医療圏の設定▼医療介護連携の強化▼在宅療養患者が急変した場合の対応、看取り対応の強化—などがあげられますこちら)。

在宅医療圏域に求められる事項(在宅ワーキング2 220928)



各都道府県の「在宅医療整備計画」は3年を1期(現在は2024-26年度の計画が進行中)としており、2027年度からの新計画に向けて「現在の計画進捗状況」や「在宅医療・介護を取り巻く状況」を確認したうえで、在宅WGで指針見直し論議が行われています(関連記事はこちら)。

11月19日の会合では「在宅医療におけるICT等を活用した多職種連携」を主な議題としています。

厚生労働省は、具体的に次のような論点を提示しています。

▽「在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の数が少ない」「今後の在宅医療の担い手が減少する」などにより、在宅医療を24時間提供する体制構築が困難となる地域が増加する可能性がある

▽こうした地域では、在宅医療の需要等も踏まえながら「主治医のみによる往診」等を必ずしも前提とせず、▼夜間・休日における輪番制による対応▼在支病「以外」も含めた病院による往診・訪問診療の提供▼地域における急変時の受入病床の明確化—などを推進すること、「在宅医療を支える歯科診療所、訪問看護ステーション、薬局(地域連携薬局)、高齢者施設等の関係機関等とともに、地域で面として在宅医療提供を支える体制」を整備することが必要となる

▽医療資源や需要が限られる地域においては、「離れた医療機関からの往診」「離れた医療機関への入院」などを組み合わせて対応することも必要ではないか

▽その際、▼「D to P with Nを含むオンライン診療」「遠隔モニタリング」などを活用した医療提供▼生産性向上のためのICT・AI機器の導入▼多職種間の平時からの情報共有・連携のためのICT活用—を積極的に行い、在宅医療の質を担保しつつ効率化を図ることが重要



多くの地域で「在宅医療のニーズが増大」するものの、地方では「在宅医療提供体制の確保」が難しくなるため、地域の関係者が共同して在宅医療提供を行うことが求められ、その際「ICTを活用した情報連携」がますます重要になるといったイメージです。

在宅医療におけるICT利活用1(在宅医療、医療介護連携WG1 251119)

在宅医療におけるICT利活用2(在宅医療、医療介護連携WG2 251119)

在宅医療におけるICT利活用3(在宅医療、医療介護連携WG3 251119)

在宅医療におけるICT利活用4(在宅医療、医療介護連携WG4 251119)



こうした方向に異論・反論は出ていませんが、在宅WG構成員からは▼人口2万人程度のエリアを対象とした在宅医療・介護連携体制の構築が重要である。医療資源の少ない地域では、地域医療介護総合確保基金を優先的に活用して在宅医療・介護連携体制を構築すべき▼大前提として医療機関等の経営安定化が必要となる。また医療だけでは在宅患者は支えられず、様々な関係者との連携が重要となることは述べるまでもない。情報連携のためにはICT活用が重要だが、そのコストを経営危機の医療機関等で捻出することは困難であり、地域医療介護総合確保基金などに期待が集まる(坂本泰三構成員:日本医師会常任理事)▼入院では「病床機能報告」のデータを、外来では「外来機能報告」のデータを活用した、地域での医療提供体制構築が可能である。在宅についても同様で、まず「どのような既存データがあるのか」を整理することから始めてはどうか(村松圭司構成員:千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター特任教授)▼在支診が増えない背景を分析する必要がある。1人医師クリニックでは24時間対応が不可能であり、医師が複数いる施設からのバックアップが重要となる(この点、2024年度診療報酬改定で「患者数が多い場合の在宅時医学総合管理料の減額を厳しく」した点は問題とかんがえている)。ただし訪問看護ステーションでも一部に看護師不足の事業所もあり、総合的なバックアップが必要である(島田潔構成員:全国在宅療養支援医協会常任理事)▼サテライト型の訪問看護ステーションや看護小規模多機能型居宅介護の整備を進めてはどうか。ただし、個々の事業所での取り組みには限界があり行政による支援、ICT導入への地域医療介護総合確保基金活用などを進めるべき(田母神裕美構成員:日本看護協会常任理事)▼訪問看護ステーションがない地域では「病院看護師による訪問看護ステーション応援」などを進めるべき。ICTの利活用、とりわけD to P with Nが重要だが、ボランティア的な部分も多い。報酬での十分な評価が期待される(中島朋子構成員:全国訪問看護事業協会常務理事)▼訪問看護空白地域の解消に向け「老人保健施設からの訪問看護」などを検討してはどうか(東憲太郎構成員:全国老人保健施設協会会長)▼介護サービスとの連携も非常に重要となる(瀬戸雅嗣構成員:全国老人福祉施設協議会副会長)—など多様な声が出ています。いずれも非常に重要な視点で、構成員の間で意見は一致していると考えられます。



また11月19日の会合では「災害の発生に備えた在宅医療の体制整備」も議題となりました。在宅療養患者では、災害時に「避難所に移動する」ことに困難が生じます。また人工呼吸器使用患者などでは「電源の確保」がどれだけ重要になるのかは述べるまでもないでしょう。

こうした点を踏まえて厚労省は、次のような考えを提示しています。

▽災害発災時に「在宅療養患者の被災状況」等を医療機関等と自治体の間で速やかに情報共有することが重要であり、情報共有・発信のあり方について関係者間で平時から整理しておくことが必要である

▽「自施設のBCP」のみならず、在宅療養患 に関わる関係機関を含め「地域における医療・ケアの継続と早期復旧のための体制構築」が必要である。このためには地域における在宅医療資源の把握や、在宅医療に係る関係機関・職種等の参画する議論の場の提供、策定された内容の共有等の各役割が必要となってくることから、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」も活用しながら、「地域において、どこが中心となり、どのようにBCPを策定していくのか」について、引き続き事例収集等を含め検討していく



こうした方向にも異論・反論は出ていませんが、構成員からは▼地域単位のBCP作成を急ぐ必要がある(災害はいつ発生するかわからない)。災害時に「支援が必要となる在宅療養患者」の情報を関係者間で共有することから始めてはどうか(鈴木構成員、田母神構成員)▼災害時に「支援が必要となる在宅療養患者」の情報は在宅医療機器メーカー等が正確に把握していると考える(例えば在宅人工呼吸器を製造販売するメーカーでは、メンテナンスなどに出向くこともあり患者情報を正確に把握している)。この情報を自治体や地域の医療・介護関係者に共有してもらうことを考えていってはどうか。また災害時にも電源を確保できるよう、地域での発電機確保なども進めていくべき(坂本構成員)▼災害時には地域の医療資源確保・医療提供が難しくなるため、たとえば「在支診・病はかかりつけの在宅療養患者対応を行い、それ以外の医療機関が避難所対応を行う」などの考え方を明確にしておくべきではないか(島田構成員)▼地域単位のBCP策定・共有はそれほど容易ではない。事業所の丸投げせず、行政がリーダーシップを発揮し「平時からの連携関係強化→地域単位のBCP作成」などにつながるような支援を行ってほしい(中島構成員)—などの意見が出されました。

こちらも極めて重要な指摘です。坂本構成員の指摘する「メーカーも交えた情報共有」は非常に魅力的です。個人情報保護法の関係もあり、そう簡単には進められませんが、将来に向けて検討すべき重要論点と言えるでしょう。



こうした声も参考にしながら、「在宅医療の体制構築に係る指針」改定の再改定や、運用方針の明確化・具体化などを検討していきます。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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【ポスト地域医療構想】論議を近々に開始、入院だけでなく、外来・在宅・医療介護連携なども包含して検討—社保審・医療部会(1)