2026年度診療報酬改定、単純な基本診療料の引き上げではなく、「クリニック・薬局→病院」への財源移譲なども検討を—被用者保険5団体
2025.12.8.(月)
医療機関経営は厳しいが、機能間・施設間の格差も大きく、2026年度診療報酬改定では「単純な基本診療料の引き上げ」を行うのではなく、「クリニック・薬局→病院」への財源移譲などを柔軟に行い、メリハリのついた内容(病院に手厚くし、クリニック・薬局ではそれなりに)とすべき―。
▼健康保険組合連合会▼全国健康保険協会▼日本経済団体連合会▼日本商工会議所▼日本労働組合総連合会—の被用者保険関係5団体が11月28日に、こうした要請書を厚生労働省の上野賢一郎大臣に宛てて提出しました(健保連のサイトはこちら)。
「現役世代を中心とした保険料負担の抑制」が極めて重要
現在、「医療保険制度改革」や「介護保険制度改革」、さらに「2026年度診療報酬改定」、あわせて「新たな地域医療構想策定ガイドライン」などに向けた議論が並行して進められています。
これらの議論の行方は医療費・介護費の増大・抑制に大きく関連し、直接・間接的に「現役世代の保険料水準」にも影響を及ぼします。例えば2026年度診療報酬改定で大幅なプラス改定となれば「医療費の増加→医療費の4分の1を占める保険料の増加」をもたらします。一方、医療保険制度・介護保険制度改革論議では「高齢者の中でも能力のある人(経済的に豊かな人)には、より多くの負担をお願いし、その分、現役世代の保険料負担増を抑制しよう」という議論が進められています。また新地域医療構想では「病院・病床の機能分化を進めて、より効率的な医療提供体制を構築する」ことを目指していますが、間接的に「医療費の効率化」にもつながるのではないかと期待されています。
こうした状況について5団体は次のような点を確認・指摘しています。
▽被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している
(長期にわたり物価・賃金が停滞する中でも「高齢化」「医療の高度化」などにより医療費が高騰し続けたため)
↓
▼成長と分配の好循環による「保険料負担の抑制」と「医療保険制度の安定化」が不可欠である
▽医療機関経営は厳しいが「機能別の格差」「施設間格差」も大きい
・第25回医療経済実態調査の結果、2024年度における一般病院の平均損益率は7%程度の「赤字」であり、病院の経営を安定化させることや、医療従事者の賃金を引き上げる必要性は理解できる
・ただし、医療法人の一般診療所と歯科診療所、法人の薬局はいずれも平均損益率が5%程度の「黒字」で、病院と診療所・薬局の経営状況には格差がある
・病院の中でも相対的に急性期の病院で赤字が大きく、回復期と慢性期の病院で赤字が小さい
▽効果的・効率的な医療提供を急ぎ構築する必要がある
・新たな地域医療構想、かかりつけ医機能報告制度、医師偏在是正の総合的な対策パッケージ、医療DXの推進や医療のICT化等の動きは、更なる少子高齢化に伴う医療ニーズの変化と地域差の拡大を念頭に、限りある医療資源を有効活用し、患者にとって安全・安心で効果的・効率的な医療を目指すもの
これらの状況を踏まえると、初・再診料や入院料などの「基本診療料」を単純・一律に引上げることは、「病床利用率や受療率低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する」発想で、▼患者負担・保険料負担の上昇に直結する▼医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存する―ため「妥当ではない」と5団体は強調。
あわせて、2026年度診療報酬改定に向けて、次のような視点が重要であるとも指摘します。
▽地域において医療ニーズに沿うかたちに医療機能の分化・強化・連携を推進し、医療提供体制を最適化する
▽医療機関の経営マネジメントを強化し、それぞれの医療機関・薬局において医療DXやICTを活用しながら各医療職が活躍できるよう、組織運営を効率化する
▽薬価・材料価格制度改革においては、「医療保険財政の持続可能性」「創薬イノベーションの推進」「医薬品の安定供給」の3視点が重要である
こうした認識に立って5団体では、上野厚労相に宛てて、医療制度改革や2026年度診療報酬改定等に向けて次のような要望を行いました。
●「現役世代を中心とした保険料負担の抑制」と「物価上昇局面での保険給付」の両立を図り、将来にわたり国民皆保険制度と医療提供体制を維持するために、医療の在り方を着実に改革して医療機関・薬局の経営を健全化し、確実に医療従事者の賃上げを担保する
●「充実すべき部分」について、税制や補助金との明確な役割分担を前提として優先順位を意識し、確実な「適正化とセット」で真にメリハリの効いた診療報酬改定を行う
その際、「診療所・薬局→病院への財源再配分」など、硬直化している「医科・歯科・調剤の財源配分」(従前より、技術料の比率に応じて「医科:歯科:調剤の比率=1:1.1:0.3」という診療報酬改定の財源配分が行われている)を柔軟に見直す
●医薬品・医療材料について、ライフサイクルに応じた市場の棲み分け(後発品登場後は、先発品は速やかに市場を明け渡す)、根拠に基づく適切な価格設定と適切な使用方法、費用対効果評価制度のより一層の活用を追求する
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薬剤師の「薬局→病院」シフトのために調剤報酬での対応を検討できないか?後発品調剤体制加算は継続すべきか?—中医協総会
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2026年度材料価格制度改革、「コスト増による採算割れ」対応、「医療機関の逆ザヤ」対応などを検討せよ―中医協・材料部会
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物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、窮状を打破するため「診療報酬も含めた経営支援策」を急ぎ実施せよ—九都県市首脳会議
少子化の進展で医療人材確保は困難、「人員配置によらないプロセス・アウトカム評価の導入」を今から研究・検討せよ—日病協
物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、入院基本料の大幅引き上げ・人員配置によらないアウトカム評価の導入などが必要—日病協
社会保障関係費の伸びを「高齢化の範囲内に抑える」方針を継続し、外来管理加算や機能強化加算の整理など進めよ―財政審
ICTで在宅患者情報連携進める在宅医療情報連携加算の取得は低調、訪看療養費1の障壁は同一建物患者割合70%未満要件—中医協(2)
2026年度診療報酬改定、診療側は「診療報酬の大幅引き上げによる病院等経営維持」を強く求めるが、支払側は慎重姿勢—中医協総会(1)
2026年度の次期診療報酬改定に向け「外科医療の状況」「退院支援の状況」「医療・介護連携の状況」などを詳しく調査—入院・外来医療分科会
リフィル処方箋の利活用は極めて低調、バイオシミラーの患者認知度も低い、医師・薬剤師からの丁寧な説明が重要—中医協(2)
2026年度診療報酬改定、物価急騰等により医療機関経営が窮迫するなど従前の改定時とは状況が大きく異なる—中医協総会(1)
2026年度の次期診療報酬改定に向け「新たな地域医療構想、医師偏在対策、医療DX推進」なども踏まえた調査実施—入院・外来医療分科会
医療機関経営の窮状踏まえ、補助金対応・2026年度改定「前」の期中改定・2026年度改定での対応を検討せよ—6病院団体・日医
2024年度診療報酬改定後に医業赤字病院は69%、経常赤字病院は61.2%に増加、「物価・賃金の上昇」に対応できる病院診療報酬を—6病院団体




