介護保険サービス利用で「2割負担」をお願いする高齢者を拡大してはどうか、ただし負担急増への配慮も検討—社保審・介護保険部会
2025.12.2.(火)
公平な介護サービス利用、介護保険制度の持続可能性確保に向けて、例えば「介護サービス利用時に、通常1割負担であるところ、2割の負担を求める高所得者」を拡大してはどうか。その際、自己負担が急増しないような配慮なども行ってはどうか―。
現在「無料」のケアマネジメント利用料について、高所得者や有料老人ホーム利用者には「有料」とすることをどう考えるか―。
12月1日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、改めてこうした議論が行われました。依然として賛否両論が出ています。
なお、菊池馨実部会長(早稲田大学理事・法学学術院教授)は次回から「意見取りまとめの議論に入る」ことを宣言しています。介護保険制度改革論議が大詰めを迎えつつあります。

12月1日に開催された「第130回 社会保障審議会 介護保険部会」
目次
介護保険サービス利用時に「2割負担」を求める高所得者の範囲を拡大してはどうか
Gem Medで報じているとおり介護保険制度改革論議が進められ、大詰めを迎えつつあります。
介護保険制度では「3年を1期」とする介護保険事業計画(市町村計画)・介護保険事業支援計画(都道府県計画)に沿って「地域のサービス提供体制をどの程度の量確保するか、そのサービス量を確保するために保険料をどの程度に設定するか」などを定めます。2027年度から新たな第10期計画(2027-29年度が対象期間)が始まるため、▼2025年に必要な制度改正内容を介護保険部会で固める→▼2026年の通常国会に介護保険法等改正案を提出し、成立を待つ→▼改正法等を受け、2026年度に市町村・都道府県で第10期計画を作成する→▼2027年度から第10期計画を走らせる―というスケジュールで議論が進められています。
ところで、高齢化の進展や介護保険制度の浸透とともに「介護費」が増加し(関連記事はこちら)、これが「現役世代の負担が重くなりすぎる」、「介護保険制度の持続可能性に支障が出る」といった問題にもつながっています。
介護費の財源は公費(つまり税金)50%・保険料50%となっており(このほかに利用者の自己負担がある)、すべて我々国民が負担しています。我々国民の財布には限りがあるため、介護費が膨れすぎれば「負担できなくなる」事態に陥ってしまうのです。
この点については、これまでに長きにわたる議論が繰り返され、▼高所得者にはより多くの「保険料」を負担してもらうべきではないか▼高所得者にはより多く「利用者自己負担」をお願いしてはどうか▼介護老人保健施設・介護医療院の多床室にも「室料負担」を導入してはどうか▼ケアマネジメントにも「利用者自己負担」を導入してはどうか▼軽度者への生活援助サービス等を、介護保険給付から市町村の「総合事業」に移管してはどうか▼被保険者範囲・受給権者の範囲を広げてはどうか▼補足給付(低所得の施設入所者に対する自己負担軽減措置)をよりきめ細かく設定してはどうか―という論点が浮上しています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
12月1日の会合では、厚生労働省老健局介護保険計画課の西澤栄晃課長が、これらの論点のうち(1)高所得者により多く「利用者自己負担」をお願いしてはどうか(2)ケアマネジメントに「利用者自己負担」を導入してはどうか(3)補足給付(低所得の施設入所者に対する自己負担軽減措置)をよりきめ細かく設定してはどうか―という3つの論点について、さらなる議論をしてほしいとの要請が行われました。
まず(1)は、通常「1割」である介護サービスの利用料について、高所得者(一定以上所得者)では「2割」、さらに高い所得の者(現役並み所得者)では「3割」となっているところ、2割負担となる「高所得者(一定以上所得者)」の範囲を拡大してはどうかという議論が行われています(3割負担となる現役並み所得者の拡大は議論されていない)(関連記事はこちら)。
西澤介護保険計画課長は、議論の素材として次のような「案」を提示しました。
●高所得者(一定以上所得者)の基準
(現行)
「年金収入+その他合計所得金額280万円」(単身世帯の場合、夫婦世帯の場合346万円以上)以上かつ「合計所得金額160万円以上」【65歳以上高齢者の所得上位20%程度に相当】
↓
(見直しの素案)
「年金収入+その他合計所得金額」について、例えば次のように引き下げる(より所得の低い者を2割負担とする)ことをどう考えるか
・案1:260万円(夫婦世帯では326万円)【65歳以上高齢者の所得上位25%程度に相当】
・案2:250万円(同316万円)【同26%程度】
・案3:240万円(同306万円)【同28%程度】
・案4:230万円(同296万円)【同30%程度】
こうした見直しを行った場合には、2割負担となる者が、案1では「約13万人」、案2では「約21万人」、案3では「約28万人」、案4では「約35万人」、今よりも増加する見込みです。

介護保険第1号被保険者の所得区分(2025年の状況)(社保審・介護保険部会1 251201)
利用者負担急増を避けるため、「上げ幅の軽減」や「預貯金の少ない者への配慮」も検討
もっとも、これらの者は介護サービスの利用料が現在の「2倍」になることから、西澤介護保険計画課長は「一定の配慮措置」(負担が急激に上がらないような対応)を行ってはどうかとも提案しています。具体的には次の2つの配慮措置の「いずれか」を実施してはどうかという提案です。
まず配慮措置の1つ目の案は、新たに「2割負担」となる者について、当分の間、「1割時点の自己負担額」から「2割負担の自己負担額」への上げ幅(増加額)を「最大で7000円となる」ように抑えてはどうか、というものです【2割負担となる者の数は減らさないが、利用者負担の実際の増加をしばらくの間、抑える】。
ここは少し難しい仕組みです。
上述のように「1割負担」から「2割負担」になった場合でも、高額介護サービス費(毎月の自己負担上限を一定額に抑える仕組み、2割負担対象となる者では「4万4400円」)があるため、実際の利用者負担は、次のように「2倍になる者」と「2倍までは上がらない者」が出てきます。
(例)1割時点で介護サービス利用料が5000円であった人は、2割負担では1万円となり、上げ幅は5000円となる(2倍となる者)
(例)1割時点で介護サービス利用料が1万円であった人は、2割負担では2万円となり、上げ幅は2万円となる(2倍となる者)
(例)1割時点で介護サービス利用料が2万2200円であった人は、2割負担では4万4400円となり、上げ幅は2万2200円となる(2倍となる者)
(例)1割時点で介護サービス利用料が2万3000円であった人は、2割負担では4万6000円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅は2万1400円となる(2倍までは上がらない者)
(例)1割時点で介護サービス利用料が4万円であった人は、2割負担では8万円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅は4400円となる(2倍までは上がらない者)
(例)1割時点で介護サービス利用料が4万4400円であった人は、2割負担では8万8800円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅はゼロ円となる(2倍までは上がらない者)
現在の1割負担時点で「2万2200円」以下の自己負担である者が「2倍の自己負担」となり、最大の上げ幅は上記のように「2万2200円」となります(1割時点で自己負担2万2200円超の者は、2割に引き上げとなった場合の自己負担の上げ幅は2万2200円よりも小さくなる)。
この「最大の上げ幅」を、「2万2200円」の3分の1程度である「7000円」に抑えてはどうか、と西澤介護保険計画課長は提案しています。後期高齢者医療制度で「自己負担2割者を拡大」した際にも、同様に「3年間、最大の上げ幅が一定の額に収まるような配慮」が行われたことを参考にしたものです。
上記の例で、この「最大上げ幅7000円の配慮措置」を適用すると、利用者自己負担は次のようになります。
(例)1割時点で介護サービス利用料が5000円であった人
→2割負担で1万円となり、上げ幅は5000円となる(上げ幅が7000円以内なので配慮措置の対象とならない)
(例)1割時点で介護サービス利用料が1万円であった人
→2割負担では2万円となり、上げ幅は2万円となるが、配慮措置により自己負担は当面「1万7000円」となる(上げ幅は7000円)
(例)1割時点で介護サービス利用料が2万2200円であった人
→2割負担では4万4400円となり、上げ幅は2万2200円となるが、配慮措置により自己負担は当面「2万9200円」となる(上げ幅は7000円)
(例)1割時点で介護サービス利用料が2万3000円であった人
→2割負担では4万6000円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅は2万1400円となるが、配慮措置により自己負担は当面「3万円」となる(上げ幅は7000円)
(例)1割時点で介護サービス利用料が4万円であった人
→2割負担では8万円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅は4400円となる(上げ幅が7000円以内なので配慮措置の対象とならない)
(例)1割時点で介護サービス利用料が4万4400円であった人
→2割負担では8万8800円と計算されるが、高額介護サービス(上限4万4400円)があるため、上げ幅はゼロ円となる(上げ幅が7000円以内なので配慮措置の対象とならない)

配慮措置1、最大の上げ幅が7000円となるように調整する(社保審・介護保険部会2 251201)
また配慮措置の2つ目の案は、預貯金(預貯金(普通・定期)、有価証券(株式、国債、地方債、社債など)、投資信託、現金、負債(借入金・住宅ローン等))が一定額以下の場合には「1割負担のまま」としてはどうか、というものです【2割負担となる者の数を減らす】。預貯金の把握は「自己申告」を基本とし、▼市町村(保険者)が金融機関に照会することを可能とする▼虚偽で預貯金額を低く申告した場合にはペナルティを課す―ことで真正性を担保する考えが示されました。
例えば、75歳以上・無職・単身世帯(要介護)全体の平均預貯金額が500万円である点に着目して、「預貯金が500万円以下」の場合には、「年金収入+その他合計所得金額」が高くとも「2割」負担とせず「1割負担のまま」とした場合には、次のように「2割負担となる者」が減ります。
(現行)
「年金収入+その他合計所得金額280万円」(単身世帯の場合、夫婦世帯の場合346万円以上)
↓
(見直しの素案)
▽【案1】基準を260万円(夫婦326万円)にする
↓
・配慮措置2を行わない場合には、2割負担者が「約13万人」増加する
↓
・配慮措置2により、約5万人が「1割負担のまま」となり、2割負担となる者は「約8万人」に抑えられる
▽【案2】基準を250万円(夫婦316万円)にする
↓
・配慮措置2を行わない場合には、2割負担者が「約21万人」増加する
↓
・配慮措置2により、約8万人が「1割負担のまま」となり、2割負担となる者は「約13万人」に抑えられる
▽【案3】基準を240万円(夫婦306万円)にする
↓
・配慮措置2を行わない場合には、2割負担者が「約28万人」増加する
↓
・配慮措置2により、約13万人が「1割負担のまま」となり、2割負担となる者は「約16万人」に抑えられる(端数処理の関係で合計が合わない)
▽【案4】基準を230万円(夫婦296万円)にする
↓
・配慮措置2を行わない場合には、2割負担者が「約35万人」増加する
↓
・配慮措置2により、約17万人が「1割負担のまま」となり、2割負担となる者は「約19万人」に抑えられる(端数処理の関係で合計が合わない)
また、「1割負担のまま」とする預貯金の基準額を高くする(例えば700万円)と、より多くの者が「1割負担のまま」となり、2割負担となる者がその分、減少します。
逆に、基準額を低くする(例えば300万円)と、「1割負担のまま」となる者が減少し、2割負担となる者が多くなります。
「2割負担となる者」が多くなるほど、介護保険の財政は好転し、国費(税金)や保険料負担が現在よりも少なくなります。「案1よりも案2→案3→案4」と基準額を引き下げれば、それだけ「2割負担となる者」が多くなり、その分、国費(税金)や保険料負担が現在よりも少なくなります。
また、配慮措置2については、「1割負担のまま」とする「預貯金の基準額」を低く設定するほど、「1割負担のままとなる者が少なく、2割負担となる者が多くなる」ため、国費(税金)や保険料負担が現在よりも小さくなる効果が大きいと言えます(下表に試算結果を整理)。

一定以上所得者の拡大と配慮措置を組み合わせた場合の試算(保険料や国費への影響、自己負担引き上げ対象者数など)(社保審・介護保険部会3 251201)
こうした「案」をベースに議論していくことになりますが、その際、ポイントとなるのが▼2割負担とする基準(一定所得以上)を引き下げていくべきか(2割負担の対象者を増やしていくべきか)▼配慮措置は必要か、配慮措置を行う場合、「利用者負担の額を抑える配慮措置1」を選択すべきか、「2割負担となる者の数は減らす配慮措置2」を選択すべきか―という2点です。
介護保険部会の意見は多岐にわたり、まず「2割負担とする基準(一定所得以上)を引き下げていくべきか」という論点については、「賛同する意見」と「反対する意見」との双方が出ています。
反対する意見としては、例えば▼現在の諸物価高騰により高齢者の生活が厳しさを増す中で、自己負担引き上げを行うべきではないのではないか(粟田主一委員:認知症介護研究・研修東京センターセンター長、平山春樹委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長、和田誠委員:認知症の人と家族の会代表理事、染川朗委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長、石田路子委員:法人高齢社会をよくする女性の会副理事長/名古屋学芸大学看護学部客員教授、江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼上位25%の「案1」であっても、収入の1割を介護費に充てなければならない者が数多く出てしまう(松島紀由委員:全国老人クラブ連合会常務理事)—などが目立ちます。
これに対し、▼「医療に比べて介護サービス利用は長期間に及ぶ」(それだけ利用者負担も重くなる)点に配慮しながらも、医療保険との整合性を意識して、2割負担を多くの者(上位所得30%、上記では「案4」など)に拡大していくべき(鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事、伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事、井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事)▼「能力に応じた負担」という考え方は理解できる(山田淳子委員:全国老人福祉施設協議会副会長)▼利用者負担増はやむを得ないが、公費財源比率の引き上げとセットで実施すべき(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)▼物価高であるが、今、自己負担割合の見直しなどを行わなければ、近い将来、急激な負担増を受け入れざるを得なくなる。今から段階的に一定所得以上者の負担増を行うべき(野口晴子部会長代理:早稲田大学政治経済学術院教授)—との指摘も出ています。
また配慮措置については、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)をはじめとする自治体サイドから「配慮措置2の預貯金把握は事務負担(金融機関への照会など)が非常に加重となる。現在、補足給付(後述)において預貯金確認をしているが、それだけでも事務負担が非常に重い」という悲鳴が出たほか、鳥潟委員、伊藤委員、平山委員、山田委員らも自治体サイドの意見に賛意を示しています。
他方、津下一代委員(女子栄養大学教授)は「預貯金を勘案して負担を考慮する仕組みは、負担の公平性確保に向けて一歩前進している」と、幸本智彦委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は配慮措置2を仮に行う場合には「全体で60兆円にも及ぶとされる、資産運用型の生命保険積立金を預貯金の範囲に含めるべき」と、井上委員は「マイナンバーカードと預貯金の紐づけを進め、正確に預貯金等を把握できる仕組みを政府全体で設けるべき。そうすれば配慮措置2の問題点も解消される」と進言しています。
預貯金の勘案は「公平な負担」の実現に向けて重要です。ただし多くの委員が指摘するように「現時点では正確な把握が難しく、事務負担が極めて大きくなる」点を考慮すると、配慮措置1(負担の増額分を抑える仕組み)のほうが現実的かもしれません。
もちろん、まだ結論は出ておらず、こうした意見を参考にしながら、「高所得者により多く『利用者自己負担』をお願いしていく」仕組みをさらに詰めていくことになります。
ケアマネジメントに「利用者自己負担」を求めるべきか、委員からは賛否両論の意見
(2)は、ケアマネジメントの利用者自己負担について、現在「無料」となっているところ、一定の自己負担を求めてはどうか、という論点です。西澤介護保険計画課長は(a)低所得者に配慮したうえで幅広く介護保険利用者に自己負担を求める案(b)一部の有料老人ホームの利用者に限定して自己負担を求める案—の2案をすでに前回会合で提示しています(関連記事はこちら)。
ケアマネジメントの自己負担は「無料」と書きましたが、例えば施設サービス利用者では「基本報酬」(この1-3割を利用者が負担する)の中にケアマネジメントの費用が含まれており、実質的には「ケアマネジメントについて利用者負担が発生している」と考えることもできます。
この点、一部の有料老人ホームでは、ケアマネジメント・介護サービスを施設と同一または関連する法人が提供しており、「施設サービスと同様の形態」になっていると考えることもできます。この場合、施設サービス利用者との公平を確保するために、(b)のように「一部の有料老人ホームでは、利用者にケアマネジメントの自己負担をお願いしてはどうか」という論点が浮上してくるのです。
こうした案に対し、介護保険部会ではやはり賛否両論が出ています。
賛成派の論拠としては、▼「ケアマネジメント」という概念やその内容、利用が利用者・家族、事業者に広く普及・浸透している(2000年度の介護保険制度創設当初は「ケアマネジメントとは何か?」という利用者・事業者が大多数であるため、自己負担を無料して利用を推進したと考えられる)。幅広い利用者に自己負担を求める(a)案が妥当である(鳥潟委員、井上委員、津下委員)▼介護保険サービス利用者に「ケアマネジメント,ケアマネジャーの価値」を認識してもらうためにも自己負担を導入すべき(伊藤委員)▼一部の有料老人ホームと施設サービスは類似しており、ケアマネジメントの自己負担導入は合理的である(山田委員)▼ケアマネジャーの法定外業務・シャドーワークが多い背景には「利用者自己負担がゼロ」という点がある。段階的に自己負担を導入すべき(東委員)—などがあります。
一方、反対派は▼自己負担導入で、さらにケアマネジャーの法定外業務・シャドーワーク(本来はケアマネジャーがする必要はないお手伝いなど)が増えてしまうことが懸念される。介護保険サービスの利用控えや、公正中立性の棄損などの心配もある(小林広美委員:日本介護支援専門員協会副会長)▼介護保険サービス利用の入り口は「無料」として、利用しやすくすべき。ケアマネ負担の増加を懸念する声も少なくない(平山委員)▼(b)案は、問題視されている「有料老人ホームによる利用者囲い込み」を是認するように見えて違和感がある。丁寧に見ていくべき(山際淳委員:民間介護事業推進委員会代表委員、江澤委員)▼(b)案を仮に導入した場合、自宅で介護サービスを受ける者との公平性が問題になる。一方、全サービスに導入した場合にはケアマネジメントの公正中立性が棄損され、利用控え→重度化のリスクが高まってしまう(染川委員)—と反論しています。
どちらの意見にも頷ける部分が多くあり、さらに議論を深める必要があるでしょう。
低所得な施設入所者等の居住費などを補填する「補足給付」、利用者の所得区分を細分化
また(3)補足給付は、介護保険施設とショートステイにおいて、低所得者への「居住費・食費・光熱費」負担を補填するものです。
現在は、以下の4区分となっています(より低所得者で補填を厚くする)。
・第1段階(生活保護被保護者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者):6万3000円
・第2段階(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下):4万7000円
・第3段階(1)(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超120万以下):3万9000円
・第3段階(2)(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120万円超):1万8000円

現在の補足給付(社保審・介護保険部会4 251201)
西澤介護保険計画課長は、このうち第3段階(1)と第3段階(2)をさらに2つに区分し、よりなだらかに補填を行う仕組みに改善してはどうかと提案しています。より「負担能力」を適切に勘案した補填を行えるようにするイメージです。
(見直し案)
・(変更なし)第1段階(生活保護被保護者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者):6万3000円
・(変更なし)第2段階(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下):4万7000円
・(変更)第3段階(1・ア)(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超100万円以下):3万9000円
・(新設)第3段階(1・イ)(世帯全員が市町村民税非 課税かつ本人年金収入等 100万円超120万円以下):補填額は今後設定
・(変更)第3段階(2・ア)(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120万円超140万円以下):1万8000円
・(新設)第3段階(2・イ)(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等140万円超):補填額は今後設定

補足給付の見直し案(社保審・介護保険部会4 251201)
こうした考えに対しては、江澤委員から「物価高騰で高齢者の生活が苦しい中で、自己負担増につながる見直しをすべきだろうか」との疑問の声が出ていますが、多くの委員は「精緻化し、より公平を担保するものとなる」と歓迎しています。
介護保険制度改革論議も大詰め、菊池部会長は「取りまとめ論議に入る」ことを宣言
介護保険制度改革に向けて、介護保険部会では昨年(2024年)12月23日に議論を開始し、各論点について一通りの議論を行いました。菊池部会長は次回から「意見取りまとめの議論に入る」ことを宣言し、厚生労働省に準備を進めるよう指示しました。
●論点ごとの議論の状況(これまでの議論の整理)はこちら
上述した「持続可能性確保」(利用者負担増、被保険者の負担増など)については意見が大きく割れており、最終調整でどういった結論に達するのか注目されます。
なお、過去の介護保険部会では「●●の意見がある一方で、○○の意見もあった」と両論を併記するにとどめ、結論を政府に委ねてしまうことが多くなっています。多くの識者が、こうした状況が続く点について「委員が所属団体等の考えを一方的に主張するだけである。『専門家』の視点で大所・高所から介護保険制度の在り方を議論できていないのではないか。部会の存在意義が問われている。相手の立場になって、例えばサービス提供者は『介護保険財政を健全化するためにどうすればよいのか』を、費用負担者には『介護費抑制でサービスの質が低下し、結果、重度化・費用増につながってしまうことを防ぐために何が考えられるのか』という議論をしなければならない」と厳しく指摘・批判しています。こうした声にも耳を傾けて最終調整論議が進むことに期待が集まります。
【関連記事】
「預貯金」も含めて高所得と判断できる要介護高齢者には介護サービス利用料を「2割」としてはどうか—社保審・介護保険部会
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介護保険でケアマネジメント利用料を徴収すべきか、要介護1・2の生活援助を総合事業に移管すべきか—社保審・介護保険部会
介護保険では「紙保険証とマイナンバーカードを併用」、紙保険証は要介護認定申請時に交付することに改める—社保審・介護保険部会(2)
中山間・人口減少地域の介護サービス確保、人員配置基準緩和・包括報酬・高額委託料でサービス提供する仕組み等検討—社保審・介護保険部会(1)
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要介護認定を代行申請できる介護サービスを拡大し、「主治医意見書の事前入手」が可能な旨を明確化していく—社保審・介護保険部会
医療・介護連携進めるため「医療・介護の共通指標、共通言語」が必要、認知症高齢者では「確定診断」重視せよ—社保審・介護保険部会(2)
在宅・通所介護サービス利用者のケア内容・時間を調査、「要介護認定の1次判定ロジック」を見直すべきか—社保審・介護保険部会(1)
中山間地等・大都市・一般市の特性を踏まえた介護サービス確保策が必要だが、各地域をどのような基準で区分けすべきか—社保審・介護保険部会
介護情報を共有し良質な介護サービス目指す【介護情報基盤】、市町村やケアマネジャーが利用者から「同意」を取得—社保審・介護保険部会(2)
中山間地等では「人員配置基準緩和」等による介護サービス確保が必要だが、「質の低下、スタッフの負担増」にも留意を—社保審・介護保険部会(1)
中山間地等では「介護人員の配置基準緩和」など、大都市では「AI・ICT活用」などにより介護サービス提供を維持せよ—厚労省検討会
介護業務を「専門性が必須な業務」と「そうでない業務」に切り分け、後者についてAI活用で短時間労働ニーズとマッチングを—厚労省検討会
介護分野でのICT導入等で「介護スタッフの確保・定着」に大きな効果、介護事業所の大規模化をどう考えるか—厚労省検討会
地域の医療・介護需給を把握し、地域の医療・介護関係者で対応策を議論していくことが極めて重要—厚労省検討会
少子高齢化が地域ごとにバラバラに進む「2040年」見据え、介護サービス提供や介護人材確保などの在り方を考える—厚労省検討会
2027-29年度を対象とする「第10期介護保険事業計画」論議スタート、2040年も見据えた制度改革議論を行う—社保審・介護保険部会
高齢者や家族が「自身のニーズにマッチした適切な高齢者住宅」を選択できるような環境整備などを検討—社保審・介護保険部会(2)
介護情報を共有し良質な介護サービス目指す【介護情報基盤】、2026年4月から準備の整った市町村・事業所等でスタート—社保審・介護保険部会(1)
介護情報を共有し良質な介護サービス目指す【介護情報基盤】、2026年4月導入目指すが、市町村のシステム改修に不安も—社保審・介護保険部会
介護情報を関係者間で共有し、質の高い効率的な介護サービスを実現する【介護情報基盤】を2026年4月から全国展開—社保審・介護保険部会
介護情報を利用者・ケアマネ・事業者・市町村・医療機関で共有し、より質の高い、効率的な介護・医療サービス実現—介護情報利活用ワーキング
介護情報を利用者・ケアマネ・介護事業者・市町村・医療機関で共有する【介護情報基盤】構築、共有情報などを整理—介護情報利活用ワーキング
介護側は「安全なケア提供のための医療情報」共有に期待、現場が「どのような情報を欲しているか」を聴取せよ—介護情報利活用ワーキング
介護DBのデータ利活用推進に向けて、「データの迅速提供」「格納データの拡充」などを進めてはどうか—介護情報利活用ワーキング
要介護高齢者の急性期入院が増えており、医療機関へ「要介護認定調査」や「ケアプラン」の情報共有を進めよ—介護情報利活用ワーキング
医療・介護情報の利活用、同意が大前提となっているが「利活用を阻んでいる」「同意は万能ではない」点に留意を—介護情報利活用ワーキング
介護情報は広く関係者間で共有すべきだが、主治医意見書やLIFE情報などを利用者に共有する際には配慮・工夫を—介護情報利活用ワーキング
介護事業者間で共有すべき介護情報、自立支援や重度化防止にとって有益で、標準化の進んだものに「限定」を—介護情報利活用ワーキング
介護情報の共有・利活用に向け、「共有すべき介護情報の選別」「介護情報記録の標準化」などを検討—介護情報利活用ワーキング
全市町村の要介護認定にかかる期間実績を公表、「認定調査の実施は依頼から7日以内」などの目安も提示—社保審・介護保険部会(2)
少子高齢化の進展により地域包括支援センターの相談支援業務の重要性増加、ケアマネ事業所との役割分担等進めよ—社保審・介護保険部会(1)




