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高齢者や家族が「自身のニーズにマッチした適切な高齢者住宅」を選択できるような環境整備などを検討—社保審・介護保険部会(2)

2025.3.19.(水)

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな高齢者向け住宅が整備され、都市部等では「介護保険施設に入所できない要介護高齢者」の受け皿として重要な役割を果たしている—。

しかし、高齢者向け住宅の類型やサービス内容は複雑なため、高齢者・家族が選択しやすくなる方策を検討する必要がある—。

また、一部に不適切な運営等をする高齢者向け住宅もあり、利用者保護などを図る必要がある—。

3月17日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、こうした議論も行われました(介護情報を利用者・ケアマネジャー・介護事業者・市町村(介護保険者)・医療機関で共有する【介護情報基盤】に関する記事はこちら)。

3月17日に開催された「第118回 社会保障審議会 介護保険部会」

有料老人ホームやサ高住、サービス内容や費用などが複雑で分かりにくい

2000年度から始まった介護保険制度は、「3年を1期」とする介護保険事業計画(市町村計画)・介護保険事業支援計画(都道府県計画)に沿ってサービス提供体制整備や保険料設定などが行われます。2027年度から新たな第10期計画(2027-29年度が対象期間)が始まるため、▼2025年に必要な制度改正内容を介護保険部会で固める→▼2026年の通常国会に介護保険法等改正案を提出し、成立を待つ→▼改正法等を受け、2026年度に市町村・都道府県で第10期計画を作成する→▼2027年度から第10期計画を走らせる―こととなり、昨年(2024年末)より介護保険部会において「介護保険制度改革論議」が進められています(関連記事はこちら)。

3月17日の会合では「住まい」に焦点を合わせた議論が行われました。

要介護高齢者の「住まい」と「介護サービス」との関係を見ると、例えば次のように非常に複雑です。
(1)重度の要介護高齢者、医療ニーズを抱える要介護高齢者は、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)に入所し、施設の介護サービスを受ける
(2)比較的軽度の要介護高齢者は、自宅生活を継続しながら訪問・通所サービスを利用する
(3)自宅生活の継続が困難だが、介護保険施設入所が困難な場合などには、居住系サービス(特定施設入居者生活介護や認知症対応型グループホームなど)や有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに入り、そこで介護サービスを利用する

高齢者向け施設・住宅の全体像イメージ(社保審・介護保険部会(2)1 250317)



(3)のうちの「有料老人ホーム」は、大きく次の3タイプに分けられます。
(a)介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム)
→介護が必要となった場合には、有料老人ホームが提供する介護サービス(特定施設入居者生活介護)を利用する(有料老人ホームが自ら実施する場合と、提携外部事業者が実施する場合がある)

(b)住宅型有料老人ホーム
→介護が必要となった場合には、利用者が「外部の訪問サービス等」を利用する

(c)健康型有料老人ホーム
→介護が必要となった場合には、退去し、別の施設等に移る



また(3)のうちの「サ高住」にも、「特定施設入居者生活介護の指定を受けているサ高住」と「利用者が外部サービスを利用するサ高住」とがあります。

有料老人ホーム、サ高住1(社保審・介護保険部会(2)2 250317)

有料老人ホーム、サ高住2(社保審・介護保険部会(2)3 250317)

有料老人ホームとサ高住(社保審・介護保険部会(2)4 250317)



この有料老人ホームとサ高住の状況・特徴について、厚生労働省老健局高齢者支援課の峰村浩司課長は、次のように分析します。

▽2014年から24年にかけて「90歳以上の入居者割合」が高まっている

▽2014年から24年にかけて、住宅型有料老人ホームでは「要介護3以上の重度者割合が48.87%→55.9%に増加」している

▽死亡退所が多い

▽大都市圏(一都三県、大阪、愛知、福岡)で増加率が高い

有料老人ホームとサ高住の状況(社保審・介護保険部会(2)5 250317)



東京都などの大都市では地価が高いため介護保険施設の整備が困難です(介護報酬で経営を維持できない)。このため比較的重度で、自宅生活を継続できない要介護高齢者の受け皿として有料老人ホームやサ高住の整備が進んでおり、極めて重要な役割に担っていることが上記から伺えます。

ただし、要介護高齢者やその家族にとっては「様々な高齢者向け住宅があり、介護サービス利用の仕方も大きくことなっている。また費用等も大きく異なる。どういった高齢者向け住宅が適しているのか選択が難しい」との声が出ています。

また、昨今、有料老人ホームやサ高住をめぐって、▼経営が破綻し入居者が行き場を失ってしまう▼病院に高額な紹介料を支払って重度の入居者の紹介を受ける▼一部の住宅型有料老人ホームで過剰な介護サービス提供(いわゆる囲い込み)が行われている—といった問題点も浮き彫りになってきています。

有料老人ホームでは過剰サービス提供が起こりやすい(社保審・介護保険部会(2)6 250317)



こうした状況を踏まえて峰村高齢者支援課長は、▼高齢者向け住宅の十分かつ正確な情報に基づき、高齢者自身が、自らのニーズに合った高齢者住まいを適切に選択できるようにするための方策▼不適切な運営を行う事業者に対する規制や指導監督のための方策▼入居者に対する過剰な介護サービスの提供(いわゆる「囲い込み」)への実効性のある対応—を議論してほしいと介護保険部会委員に要望しました。

委員からは、まず「高齢者自身が、自らのニーズに合った高齢者住まいを適切に選択できる」環境を整備するための情報開示が必要であるとの声が専門家サイド・利用者サイドの双方から多数だされました(粟田主一委員:東京都健康長寿医療センター認知症未来社会創造センターセンター長、幸本智彦委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員、小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長、鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事、山本則子委員:日本看護協会副会長、伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事、鎌田松代委員:認知症の人と家族の会代表理事、松島紀由委員:全国老人クラブ連合会常務理事ら)。

例えば、▼入居時の費用はどの程度なのか、退去時にその費用はどこまで戻ってくるのか▼月々の利用料はどの程度で、どのようなサービスが含まれるのか、介護保険サービスはどのように利用できるのか▼重度化した場合にも入居継続できるのか▼どのようなオプションサービスがあり、利用にはどの程度の費用がかかるのか—などを、詳しく情報開示し、かつ利用者や家族が「他の住宅と比較検討できる」ような環境整備に期待が集まります。

この点、厚労省では「有料老人ホームやサ高住がどのようなサービスを提供しているのか」について調査研究を毎年度実施しており、今後の介護保険部会にもその研究結果が報告される見込みです。そこで「さらなる詳しい調査が必要」となれば、改めての調査実施も検討されることになります。



このほか、▼「介護サービス利用の必要性がなくとも、区分支給限度基準額いっぱいまで介護サービスを利用すれば家賃を免除する」などの不適切な実態もあると聞く、適切かつ強力な指導監督が求められる(江澤和彦委員:日本医師会常任理事、山際淳委員:民間介護事業推進委員会代表委員、伊藤委員)▼介護福祉の専門家が関与し、適切なサービス提供を行う必要がある(橋本康子委員:日本慢性期医療協会会長、及川ゆりこ委員:日本介護福祉士会会長)▼過剰なサービス提供の背景には「介護報酬上の課題」もあると考えられる、社会保障審議会・介護給付費分科会でしっかりと対策を練るべき(小林広美委員:日本介護支援専門員協会副会長)▼自宅居住の要介護高齢者と、高齢者向け住宅居住の要介護高齢者とで、ケアプランの相違などを調査し、それに基づき適切な介護サービス提供に向けた方策を検討すべき(染川朗委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)▼高齢者向け住宅の整備について、介護保険事業(支援)計画へも盛り込むべきことを明確化すべき(現在、介護保険事業(支援)計画で高齢者向け住宅を勘案している自治体は3割にとどまっている)(山田淳子委員:全国老人福祉施設協議会副会長)—などの意見が出されています。

高齢者向け住宅の介護保険事業(支援)計画での勘案状況(社保審・介護保険部会(2)7 250317)



峰村高齢者支援課長は、別に「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」(仮称)を設置し、上記の問題を専門家の視点で検討する考えも示しています。検討会では今夏(2025年夏)に中間とりまとめを行い、それをもとに改めて介護保険部会で議論を深めていきます。

有料老人ホームの課題を考える検討会を設置(社保審・介護保険部会(2)8 250317)



また、住まいの確保が困難な事情(低所得など)を抱える高齢者向けに養護老人ホーム・経費老人ホームが準備されていますが、「認知度が低い→利用状況も芳しくない」という課題があります。粟田委員ら多くの委員が「養護老人ホーム・経費老人ホームに関する情報提供の充実」を急ぐべきと進言しています。

養護老人ホームの概要(社保審・介護保険部会(2)9 250317)

経費老人ホームの概要(社保審・介護保険部会(2)10 250317)

外国人による訪問介護など、2025年4月から条件付きで解禁

なお、介護人材不足を背景に、この4月(2025年4月)から「一定の要件(研修等)を満たした場合に、技能実習生および特定技能外国人が訪問介護等訪問系サービスの業務に従事する」ことが認められます。

外国人による訪問介護等の解禁1(社保審・介護保険部会(2)11 250317)

外国人による訪問介護等の解禁2(社保審・介護保険部会(2)12 250317)



介護保険部会委員からは「研修を十分に行う必要がある」「ハラスメント対策をすべき」「利用者・家族への事前の説明を十分に行うべき」「訪問する外国人への支援もしっかりすべき」「事後検証も行うべき」などの意見が出されています。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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