Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 ミニウェビナー 院内掲示(手術件数集計)は手作業でやるのはもう古い?~集計業務は、無料ツールで1クリックで手間ゼロへ~

2027-29年度を対象とする「第10期介護保険事業計画」論議スタート、2040年も見据えた制度改革議論を行う—社保審・介護保険部会

2024.12.25.(水)

2027年度の次期介護保険制度改革に向けて(1)地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備、医療と介護の連携、経営基盤の強化)(2)認知症施策の推進・地域共生社会の実現(相談支援、住まい支援)(3)介護予防・健康づくりの推進(4)保険者機能の強化(地域づくり・マネジメント機能の強化)(5)持続可能な制度の構築、介護人材確保・職場環境改善(介護現場におけるテクノロジー活用と生産性向上)—などの項目を議論していく—。

また、2040年頃にかけて少子高齢化がさらに進むが、そのスピード・態様は地域によって異なることを踏まえ、時間軸・地域軸の双方の観点で「介護サービスをどう確保するか」を考える検討会を立ち上げ、その議論を次期介護保険制度改革にも反映させていく—。

こうした方針が12月23日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で決まりました。年明けから制度改革論議をはじめ、来年内(2025年内)の意見とりまとめを目指します。

12月23日に開催された「第116回 社会保障審議会 介護保険部会」

「給付と負担」論議を先送りしてはいけないとの指摘多数

2000年度から始まった介護保険制度は、「3年を1期」とする介護保険事業計画(市町村計画)・介護保険事業支援計画(都道府県計画)に沿ってサービス提供体制整備や保険料設定などが行われます。2027年度から新たな第10期計画(2027-29年度が対象期間)が始まるため、▼2025年に必要な制度改正内容を介護保険部会で固める→▼2026年の通常国会に介護保険法等改正案を提出し、成立を待つ→▼改正法等を受け、2026年度に市町村・都道府県で第10期計画を作成する→▼2027年度から第10期計画を走らせる―というスケジュールを描くことができます。

こうしたスケジュールを睨み、早くも12月23日の介護保険部会で次期制度改革に向けたキックオフ論議が行われました。来年末(2025年末)までに制度改革内容を固めます。

厚生労働省老健局総務課の江口満課長は、介護保険を取り巻く最近の状況として、例えば▼2040年に向けて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口が急増し、支え手(保険財政の支え手、サービス提供の担い手)となる現役世代人口が急激に減少していく▼新たな地域医療構想論議がまとまり、そこには「医療・介護連携の推進」など盛り込まれる▼介護事業所の経営基盤強化のために「大規模化、集約化」が重要である▼共生社会の実現を推進するための認知症基本法が本年(2024年)1月から施行され、本年(2024年)12月に認知症基本計画が閣議決定されている▼介護予防・健康づくり対策の推進で、「要介護状態になる年齢」が後ろだしになっている▼要介護高齢者の増加等により、給付費(このベースとなる公費、保険料も)が増大している▼介護関係職種の有効求人倍率は、依然として高い水準にあり、全職業より高い水準で推移している▼介護職員と全産業平均とでは、依然、賃金格差がある▼介護ニーズに的確に応えるためには、2022年度から40年度にかけて57万人の介護人材純増が求められる—ことなどを説明。

認知症施策推進基本計画の概要1(社保審・介護保険部会1 241223)

認知症施策推進基本計画の概要2(社保審・介護保険部会2 241223)

介護予防事業等により要介護状態になる年齢が2015年から23年にかけて後ろ倒しになっていると見られる(社保審・介護保険部会3 241223)

介護給付費・保険料は増加を続けている(社保審・介護保険部会4 241223)

介護関係職種の人手不足が続いている(社保審・介護保険部会5 241223)

介護職種と全産業平均との賃金格差は依然大きい(社保審・介護保険部会6 241223)

2022年度から40年にかけて、57万人の介護職員純増が望まれている(社保審・介護保険部会7 241223)



さらに、今後の制度改革論議に向けて、次の5テーマなどを議論していくとともに、2040年に向けて少子高齢化がさらに進むが、そのスピード・態様は地域によって異なることを踏まえ、時間軸・地域軸の双方の観点で「介護サービスをどう確保するか」を考える検討会を立ち上げ、その議論を次期介護保険制度改革にも反映させていってはどうかと提案し、了承されました。「直近の2027-29年度」だけでなく、「将来」(2040年頃)も見据えて、様々な課題に対応できる介護保険制度を構築していくことになります。
(1)地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備、医療と介護の連携、経営基盤の強化)
(2)認知症施策の推進・地域共生社会の実現(相談支援、住まい支援)
(3)介護予防・健康づくりの推進
(4)保険者機能の強化(地域づくり・マネジメント機能の強化)
(5)持続可能な制度の構築、介護人材確保・職場環境改善 (介護現場におけるテクノロジー活用と生産性向上)



キックオフ論議となった12月23日の会合では、委員間の自由討議が行われました。(1)から(5)の項目別に見ると、例えば次のような意見が目立っています。

(1)地域包括ケアシステムの推進
▼介護職員と全産業平均との賃金格差は広がっており、人材確保のためには、より効果的な「介護職員の処遇改善」を検討すべき(染川朗委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)▼ケアマネジャーの処遇改善、業務負担軽減など「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間整理を踏まえた議論を十分に行ってほしい(小林広美委員:日本介護支援専門員協会副会長)▼大規模化で経営状態は安定するが、介護分野では「100人超」のスタッフを抱える事業所はごくわずかであろう。また大規模化すれば営利企業が参入し、悪影響が出ないかなども勘案すべき(橋本康子委員:日本慢性期医療協会会長)▼医療・介護の複合ニーズに的確に応えられる看護小規模多機能型居宅介護の拡充などを十分に検討すべき(田母神裕美参考人:日本看護協会常任理事)▼新たな地域医療構想論議では「医療・介護連携の推進」なども盛り込まれるため、より「医療計画」「地域医療構想」を意識して、介護保険事業(支援)計画を検討する必要がある(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)—

(2)認知症施策の推進・地域共生社会の実現
▼今後増加する「独居の認知症高齢者」に対する支援を強力に進める必要がある(粟田主一委員:東京都健康長寿医療センター認知症未来社会創造センターセンター長)—

(3)介護予防・健康づくりの推進
▼最近の研究では「こうした状態の高齢者は2、3年後に要介護状態になる」などの知見も徐々に明らかになってきており、そうした点を踏まえた効果的な介護予防・健康づくり事業を実施していくことが重要であろう(津下一代委員:女子栄養大学特任教授)—

(4)保険者機能の強化
▼いわゆるインセンティブ交付金(介護予防などに取り組む保険者での財政優遇等)について、どれだけの効果(交付金と要介護認定率低下との関係など)があるのかを検証し、必要な見直しにつなげるべき(佐藤主光委員:一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授)—

(5)持続可能な制度の構築、介護人材確保・職場環境改善
▼現役世代人口が減少する中で、介護保険財源の確保に限界が来る。同時に介護サービスを担う人材の確保も困難になる。制度の持続可能性、実情に応じた介護サービス体制構築を検討すべき(鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事)▼現役世代の負担は限界にきており、「受益と負担」の議論を避けて通ることはできない。高齢者の金融資産・所得も踏まえた「適切な負担」論議を進めるべき。またそろそろ「所得比例型」保険料の導入も検討すべき(佐藤委員)▼現役世代の負担が増加しており、「65歳以上の1号保険料」と「40-64歳の2号保険料」との財源按分も見直していくべき。少子高齢化で2号被保険者の負担が激増している(染川委員)▼前回の介護保険部会とりまとめでは「利用者の2割負担」や「ケアマネジメント利用者負担」などの問題が先送りされた。もう先送りは許されず、きちんと結論を出す必要がある。その際、現役世代の保険料負担水準軽減を十分に勘案する必要があり、これまでよりも踏み込んだ「給付と負担の見直し」論議を行うべき(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)▼「給付と負担の見直し」論議では、利用者負担が過重になり介護サービスの利用控えが生じないように十分配慮すべき(山田淳子委員:全国老人福祉施設協議会副会長)▼高齢者のみを対象とする制度から、「年齢を問わず要介護状態になった場合には介護保険サービスを利用できる」仕組みへと見直していくべき(小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)▼「給付」の裏には「負担」があることを忘れてはならない。2割負担の範囲、ケアマネジメントにおける利用者負担など、放置せずにきちんと議論し、結論を得るべき(井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事)▼介護事業所の半数程度は赤字である。保険料アップが困難であるなら「公費」に安定財源を求めるしかない(江澤委員)—

年明けからこうした意見も踏まえて、介護保険制度改革論議が進んでいきます。



なお12月23日の介護保険部会では、介護保険料等における基準額の調整についても報告がなされました。介護保険料の算定では、老齢基礎年金(満額、79万4500円)の支給額相当として「年金収入等80万円」を基準として設定しています(第1、第2、第4、第5段階)が、本年(2024年)1-12月の老齢基礎年金(満額)の支給額が80万9000円となることを踏まえ、「年金収入等80万円」の基準を、来年(2025年)4月から「年金収入等80万9000円」に改めることになります。

介護保険料等における基準額の調整(社保審・介護保険部会8 241223)



病院ダッシュボードχ zeroMW_GHC_logo

【関連記事】

要介護認定にかかる期間を「30日以内」に収めるべく、全市町村実績を公表し、国でプロセスごとの「目安」期間提示—社保審・介護保険部会
介護情報を共有し良質な介護サービス目指す【介護情報基盤】、2026年4月導入目指すが、市町村のシステム改修に不安も—社保審・介護保険部会
介護情報を関係者間で共有し、質の高い効率的な介護サービスを実現する【介護情報基盤】を2026年4月から全国展開—社保審・介護保険部会

介護情報を利用者・ケアマネ・事業者・市町村・医療機関で共有し、より質の高い、効率的な介護・医療サービス実現—介護情報利活用ワーキング
介護情報を利用者・ケアマネ・介護事業者・市町村・医療機関で共有する【介護情報基盤】構築、共有情報などを整理—介護情報利活用ワーキング
介護側は「安全なケア提供のための医療情報」共有に期待、現場が「どのような情報を欲しているか」を聴取せよ—介護情報利活用ワーキング
介護DBのデータ利活用推進に向けて、「データの迅速提供」「格納データの拡充」などを進めてはどうか—介護情報利活用ワーキング
要介護高齢者の急性期入院が増えており、医療機関へ「要介護認定調査」や「ケアプラン」の情報共有を進めよ—介護情報利活用ワーキング
医療・介護情報の利活用、同意が大前提となっているが「利活用を阻んでいる」「同意は万能ではない」点に留意を—介護情報利活用ワーキング
介護情報は広く関係者間で共有すべきだが、主治医意見書やLIFE情報などを利用者に共有する際には配慮・工夫を—介護情報利活用ワーキング
介護事業者間で共有すべき介護情報、自立支援や重度化防止にとって有益で、標準化の進んだものに「限定」を—介護情報利活用ワーキング
介護情報の共有・利活用に向け、「共有すべき介護情報の選別」「介護情報記録の標準化」などを検討—介護情報利活用ワーキング

介護保険で「2割の利用者負担」を求める高齢者の範囲は結論先送り、「1割と2割の中間負担」(15%負担など)も検討—社保審・介護保険部会
2024年度介護報酬改定、プラス1.59%改定+αで「介護職員処遇改善」を強力推進、訪問看護やケアマネにも配慮—武見厚労相(2)
介護保険利用で「2割負担」となる高齢者、医療と介護の特性、利用控えなどに配慮して政治の場で範囲拡大を決定へ—社保審・介護保険部会
「より高所得の人に、より高い介護保険料を設定。そこで生まれる財源を低所得者の介護保険料軽減に充てる」方針決定—社保審・介護保険部会
介護保険で2割負担となる「一定所得者(上位所得者)の範囲」など、給付と負担の見直し内容を2023年までに固める—社保審・介護保険部会