ケアマネ人材確保・定着に向け「処遇改善」を優先検討すべき、ケアマネ業務の整理、試験・研修見直しも進めよ—ケアマネ課題検討会
2024.12.6.(金)
ケアマネジャーの人材確保・定着を図るために、何よりも「処遇改善」を優先検討・実施する必要がある—。
ケアマネの業務は「本来業務」(法定業務)と「それ以外業務」との切り分けが求められ、「本来業務」に専念できるよう、行政や他サービスなどに適切につないでいける環境整備(地域づくり)を進める必要がある—。
さらに、人材確保に向けケアマネ試験(受験資格を含め)や研修の見直しなども進めるべき—。
12月2日に開催された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(以下、検討会)で、こうした「中間整理」が大筋で了承されました。田中滋座長(埼玉県立大学理事長)と厚生労働省で最終の文言調整を行い、社会保障審議会・介護保険部会へ報告します。
ケアマネが「個々の利用者に対するケアマネ業務に注力できる」環境の整備が重要
検討会では、「介護サービス利用者のために「質の高いケアマネジメント」を実現する観点から、ケアマネが個々の利用者に対するケアマネ業務に注力できる」環境の整備に向けて(1)ケアマネの業務の在り方(2)人材確保・定着に向けた方策(3)法定研修の在り方(4)ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み促進—の4テーマについて考え方を整理しました。
まず(1)の「ケアマネ業務」については、▼高齢者の医療ニーズの高まり▼独居高齢者・認知症の方等への支援の増加▼世帯の抱える課題の複雑化・複合化—により、利用者・家族からの幅広い相談・依頼にケアマネが対応せざるを得ない状況にあること、シャドウワークも含めケアマネ業務が増加していることを再確認したうえで、「居宅介護支援事業所は個々の利用者に対するケアマネジメントに、地域包括支援センターは社会資源への働きかけを含めた地域全体の支援に重点を置く」ために、次のような対応を行うことを提言しています。
【居宅介護支援事業所における業務の在り方】
▽ケアマネ業務は、▼法定業務▼保険外サービスとして対応しうる業務▼他機関につなぐべき業務▼対応困難な業務—などに分類される
▽法定業務には、「アセスメントやモニタリングなど利用者と直接関わるもの」と「給付管理をはじめとする事務的な業務」があり、事業所内での各業務の分担を検討することが必要である
→「利用者と直接関わるもの」については、独居高齢者、認知症高齢者、家族等支援などに対する対応力が求められることを踏まえつつ、質の向上と位置づけ整理が求められる
→その際、ケアプランデータ連携システムや様々なテクノロジーの活用による業務負担の縮減、事務的業務の事務職員へのタスクシフトの促進なども重要となる
▽「保険外として対応しうる業務」「他機関につなぐべき業務」は、地域の多様な主体が役割を担うことが考えられる。
▽ケアマネ業務の在り方について、利用者や家族、関係職種や市町村の共通認識づくりに課題があるとの指摘があり、「地域課題として地域全体で対応を協議すべき」ものであり、基本的には市町村が主体となって関係者を含めて協議し、必要に応じて社会資源の創出を図るなど、利用者への切れ目ない支援ができる地域づくりを推進する必要がある
【主任ケアマネの役割、地域包括支援センターにおける業務の在り方】
▽地域包括支援センターの主任ケアマネは、▼保健師・社会福祉士とともに関係機関や関係者と地域包括支援ネットワークの構築を行う▼生活支援コーディネーター等と連携し、地域の現状を把握・分析し、将来像やニーズに合わせた社会資源の掘り起こしを行う▼地域ケア会議を通して、他の専門職や関係者と連携しながら、地域における課題を解決するための方策を検討する—などの役割が期待される
→ICTなどの活用による業務の効率化を進め、居宅介護支援事業所との役割分担等を通じて、本来の役割を十分に発揮することができるように取り組むことが必要である
▽居宅介護支援事業所の主任ケアマネは、▼独居高齢者、や認知症高齢者、成年被後見人といった対応が難しい事例への様々な支援▼当該事例に対応するケアマネの指導・育成—に重きを置き、地域におけるケアマネ全体の質の向上に貢献することが求められる
▽国は、▼主任ケアマネの制度的位置付けの明確化▼研修の在り方の検討▼居宅介護支援事業所・地域包括支援センターのそれぞれでの役割に応じた評価の在り方の検討—を行う必要がある
また(2)の「人材確保・定着」に向けては、「10年以内にケアマネの担い手が急減していく」と見通し、次のような確保・定着支援策を実施することを提言しています。
▽「利用者や家族の生活が改善し喜んでもらえた」「利用者の良き相談役となれたことを実感できた」ときにやりがいを感じるとの意見があり、「利用者との関わりを十分に持てる」ようにする(上記(1)のケアマネ業務の在り方検討が極めて重要となる)
▽他産業・同業他職種に見劣りしない処遇を確保する
▽事務負担軽減のために、ケアマネの作成する書類の様式の見直しを図る
▽シニア層ケアマネの延長雇用なども含め、本人の希望や心身の状況も踏まえつつ「働き続けられる」環境を整備する
▽ケアマネ試験受験対象である国家資格の範囲について、「新たな資格を追加する」などにより合格者数を増加させる方策を検討する
→「相談援助技術が重要な要素を占める資格」を中心に資格追加を検討し、そのうえで幅広い職種・資格等からの受験を促す
→試験内容については、保有する資格の専門性等を踏まえた柔軟な取扱いを検討する
→試験問題について、相談援助業務を始め「ケアマネジメントに必要な知識を適切に問う問題とする」など、ケアマネの役割変遷に応じて適宜見直す
▽実務経験年数(現行5年)について、法定研修等による質の確保を図りつつ、一定要件を満たした場合に限り当該年数を見直す
▽学卒者の入職の在り方については、「高齢者のケアマネジメント業務に求められる専門性をどのように修得するか」などの点を踏まえて、引き続き議論する
▽潜在ケアマネ(ケアマネ資格を持ちつつ業務に従事していない者)への就労促進等について、総合的に取り組んでいく
→潜在ケアマネの実態を把握しつつ、ケアマネの魅力発信を行うとともに、復職時の要件である「再研修」について、オンライン受講を含めた受けやすい環境を整備する
他方、(3)の「法定研修」に関しては、ケアマネの質確保・向上とケアマネ負担軽減の両面を見て、次のような方向を示しました。
▽ケアマネの資質の確保・向上を前提としつつ、可能な限り経済的・時間的負担の軽減を図る
→更新研修については、利用者への支援に充当する時間の増加につなげる観点から「大幅な負担軽減」を図るとともに、在り方についても検討する
▽法定研修のうち全国統一的な実施が望ましい内容を国レベルで一元的に作成し、統一的な研修が各都道府県で適切に実施される仕組みを検討する
→もっとも、地域の他職種との交流や事例検討をはじめ「地域の実情に応じた研修」も必要であり、一部科目については、引き続き都道府県で実施することも検討する
→法定研修の負担軽減のため、各地域で実施されている「法定外の研修のうち法定研修に即した内容となっているもの」は法定研修とみなすなどの柔軟な取扱いも考えられる
▽講義をオンラインで一斉配信するとともに、いつでも・何度でも受講できるようオンデマンド化する
→「更新までの5年間に分割して受講可能」なオンデマンド化等の環境整備を検討する
▽更新研修の2回目以降の受講については、質の確保を前提とした更なる負担軽減の方策を検討する
▽経済的負担軽減について、「都道府県が地域医療介護総合確保基金を活用することにより、受講者負担を軽減できる」「教育訓練給付制度の対象にもなっている」ことなどを引き続き周知する
さらに、(4)の「ケアマネジメントの質の向上」に向けて、▼「適切なケアマネジメント手法」の普及促進を図るに向けた取り組み促進▼ケアプラン点検の適切な実施—の重要性を強調しました。
●中間整理はこちら(のちに文言修正がなされる可能性があります)
これまで時間をかけて議論してきた内容であり、異論・反論は出ていませんが、構成員からは▼「ケアマネの処遇改善」が喫緊かつ最重要のテーマであることは検討会の共通認識である。最優先事項として検討・実現してほしい(染川朗構成員:日本介護クラフトユニオン会長、柴口里則構成員:日本介護支援専門員協会会長、江澤和彦構成員:日本医師会常任理事)▼「居宅介護支援事業所の主任ケアマネ」と「地域包括支援センターのケアマネ」とは役割が異なり、分けて養成・確保していくべき点を強調してほしい(川北雄一郎構成員:全国地域包括・在宅介護支援センター協議会副会長、内藤佳津雄構成員:日本大学文理学部心理学科教授)▼地域によっては、法定外業務をケアマネが担当せざるを得ないこともあり、そうした場合に備えた「ケアマネ業務実施のガイドライン」作成なども検討していってほしい(石山麗子構成員;国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻教授)—などの注文がついています。
田中滋座長(埼玉県立大学理事長)と厚生労働省で最終の文言調整を行い、社会保障審議会・介護保険部会へ報告します。検討会の中間整理を受け、厚生労働省老健局の黒田秀郎局長は「今後、介護保険部会や介護給付費分科会での議論を経て、制度改正や報酬改定につなげる」とコメントしています。
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