介護医療院の長期療養機能を新加算で評価、介護療養へはディスインセンティブ設定—社保審・介護給付費分科会(2)
2021.1.19.(火)
お伝えしているとおり、1月18日の社会保障審議会・介護給付費分科会で2021年度介護報酬改定に向けた「単位数」等の改定案(告示改正案)が了承されました。Gem Medでは順次、改定内容を紹介していきます。
本稿では「介護医療院」「介護療養」に焦点を合わせます。
目次
介護医療院の基本報酬を引き上げ、2021年度前半は特例的上乗せも
「介護療養」や「4対1以上の看護配置を満たせない医療療養」について、設置根拠が消滅することから、2017年の改正介護保険法で「介護医療院」が創設され、2018年度の前回介護報酬改定で単位数や人員・設備に関する基準が設定されました。▼介護▼医療▼住まい―の3機能を併せ持つ、「医療ニーズの高い重度の要介護者を受け入れる施設」として大きな期待を集めています。
まず、基本報酬について例えば次のような引き上げが行われています。昨年(2020年)12月17日の厚労相・財務相折衝で「0.70%のプラス改定」が合意されたことを踏まえたものです。併せて、2021年4-9月については、ここに「0.1%」の上乗せも行われます。
医療療養に1年以上入院する患者を受け入れる介護療養、新加算で評価
また、介護医療院に求められる▼医療の必要な要介護者の長期療養機能▼生活施設としての機能―をより充実させる観点から、新加算が創設されます
▽長期療養生活移行加算:1日につき60単位(入所日から90日間に限る)
算定要件は、▼入所者が「療養病床に1年間以上入院していた患者」である▼入所にあたり、入所者・家族等に「生活施設としての取り組み」について説明を行う▼入所者・家族等と地域住民等との交流が可能となるよう「地域の行事や活動等に積極的に関与」する—と設定されましたが、詳細は、今後示される「通知」や「事務連絡(Q&A)」などを待つ必要があります。
介護保険施設における「寝たきり防止・重度化防止」の取り組みを新加算で促進
また、寝たきり予防・重度化防止に向けた取り組みを推進するために、次のような新たな加算が創設されます。この加算は、介護医療院だけでなく、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護での算定可能です。
▽自立支援促進加算:1か月当たり300単位
算定要件は次のように設定されました。
(1)医師が入所者ごとに、自立支援のために特に必要な医学的評価を入所時に行い、少なくとも6か月に1回、医学的評価の見直しを行い、自立支援に係る支援計画等の策定などに参加する
(2)(1)の医学的評価の結果「特に自立支援のための対応が必要である」とされた者ごとに、▼医師▼看護師▼介護職員▼介護支援専門員▼その他の職種の者―が共同して、「自立支援に係る支援計画」を策定し、計画に従ったケアを実施する
(3)(1)の医学的評価に基づき、少なくとも3か月に1回、入所者ごとに支援計画を見直す
(4)(1)の医学的評価の結果等を厚生労働省に提出し、当該情報、その他自立支援促進の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること(データ提出)
薬剤管理指導に関するデータ提出を行う介護医療院に新加算
また介護医療院における【薬剤管理指導】について、介護の質向上に係る取り組みを一層推進するために、「データ提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクルの推進」「ケアの向上を図る」場合には、1月の最初の加算算定時に「20単位」の上乗せが認められます。
なお、データ提出については、2021年度から現行のCHASE(状態やケア内容に関するデータベース)とVISIT(リハビリに関するデータベース)を統合し「LIFE」(科学的介護情報システム、Long-term care Information system For Evidence)となります。
このほか、▼看取りへの対応の充実(基本報酬の算定要件において「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことを求める、など)▼有床診療所から介護医療院への移行促進(浴室に関する施設基準を緩和し、入浴用リフトやリクライニングシャワーチェアなどで身体不自由者が適切に入浴できる場合は、「一般浴槽以外の浴槽」設置は求めない、など)▼個室ユニット型施設の定員見直し(概ね10人まで、最大15人までとする)▼排泄支援加算を見直す—などの改定も行われます。詳細は別途、お伝えします。
なお、【移行定着支援加算】については当初予定どおり2020年度で廃止されます。「早期の移行・転換」を進める、との厚労省の強い決意が伺われます。
介護療養の報酬はさらに厳しく、基本報酬の引き下げ
一方、介護療養については厳しい改定内容が続きます。早期に「介護医療院への転換」を含めた、将来の方向性を検討、実施することが必要です。
まず、基本報酬が例えば次のように引き下げられます。ただし、2021年4-9月については、ここに「0.1%」の上乗せも行われます。
「移行計画」提出しない場合には報酬を1割減算
また、介護療養の中には、なぜか「経過措置(2024年3月まで)終了後も介護療養にとどまる」と考えている施設が少なからず存在することを受け、移行計画を未提出の場合には次のように基本報酬の減算が行われることとなりました。
▽移行計画未提出減算:1日につき10%の報酬減算
具体的には、「厚労省が示す様式を用いて『2024年4月11日までの移行計画』を半年ごとに許可権者に提出しない」場合に減算規定が発動されます。最初の移行計画提出期限は今年(2021年)9月30日で、以後、「半年毎」に移行計画の提出が求められます(最終提出は2023年9月30日)。
減算が適用される期間は「次の提出期限まで」とされています。例えば、今年(2021年)9月30日に移行計画を提出しない場合には、10月1日から次の提出期限である2022年3月31日まで、基本報酬が10%減算されます。そこでも移行計画を提出しなければ、さらに半年間、減算が行われることになります(移行計画を提出しなければ減算が継続される)。
なお、これまでの介護給付費分科会論議の中で、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は「移行計画どおりの移行を義務付けるものではない」考えを示しています。ある時点で「介護医療院への移行」計画を出したとしても、その後に、例えば「医療療養への移行」計画へと変更することも可能となる見込みです。
●2021年度介護報酬改定に向けた、これまでの議論に関する記事●
【第1ラウンド】
▽横断的事項(▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる)
▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護▼小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)
▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション▼短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)
▽訪問系サービス(▼訪問看護▼訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)
▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)▼介護老人保健施設(老健)▼介護医療院・介護療養型医療施設—)
【第2ラウンド】
▽横断的事項(▼人材確保、制度の持続可能性▼自立支援・重度化防止▼地域包括ケアシステムの推進―)
▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型訪問介護、看護小規模多機能型訪問介護(以下、看多機)▼認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護―)
▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護・認知症対応型通所介護、療養通所介護▼通所リハビリテーション、福祉用具・住宅改修▼短期入所生活介護、短期入所療養介護―)
▽訪問系サービス(▼訪問看護▼訪問介護、訪問入浴介護▼訪問リハビリ、居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)
▽施設サービス(▼介護医療院・介護療養型医療施設▼介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)▼短期入所生活介護、短期入所療養介護―)
▽横断的事項(その2)(▼地域包括ケアシステムの推進▼自立支援・重度化防止の推進(関連記事はこちら(ADL維持等加算)とこちら(認知症対策、看取り対応、科学的介護など)、▼処遇改善、▼人材確保、制度の安定性・持続可能性の確保など―)
▽詰めの議論(▼多機能型サービス▼短期入所系サービス▼通所系サービス▼訪問看護▼「介護医療院・介護療養型医療施設」▼科学的介護の推進(データ提出)▼ADL維持等加算▼ケアマネジメント―)
▽最終調整の議論(▼運営基準見直し、▼GHの夜勤配置・個室ユニット定員の緩和、▼ICT活用した場合の夜勤スタッフ配置緩和等、▼訪問看護―)
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