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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

小多機の基本報酬見直し・加算の細分化を行い、看多機で褥瘡マネ加算等の算定可能とする―社保審・介護給付費分科会(4)

2020.11.24.(火)

小規模多機能型居宅介護について、要介護1・2の基本報酬を引き上げるとともに、【訪問体制強化加算】【総合マネジメント体制強化加算】を細分化してはどうか―。

看護小規模多機能型居宅介護について、さらなる機能向上を目指し【褥瘡マネジメント加算】などの算定を可能としてはどうか―。

両者について、登録定員外の緊急ショート受け入れを柔軟に行えるような要件見直しを行ってはどうか—。

11月16日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われています(同日に開催された訪問看護に関する議論の記事はこちら、通所リハビリ・訪問リハビリに関する記事はこちら、ショートステイ(生活・医療)に関する記事はこちら)。

小多機の基本報酬を見直し、訪問・総合マネジメントに関する加算を細分化

Gem Medでお伝えしているとおり、11月16日の介護給付費分科会では、これまでの議論を踏まえた「より具体的な見直し方向」案に沿った議論が行われています。本稿では小規模多機能型居宅介護(小多機)、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に焦点を合わせます。

小多機は、▼通い▼訪問▼泊り―の3つの機能を併せ持つ地域密着型サービスです。特別養護老人ホームの新規入所者が「原則、要介護3以上」とされ(2014年の介護保険法改正)、また人口減に伴って将来的には特養ホーム入所者が減少していくことなどを背景に「複合的な機能を持つ小多機」の重要性が高まっています。

小多機の概要(介護給付費分科会(4)1 201116)



しかし、事業所サイドからは「重度になると小多機を退所して特養ホーム等に移っていくため、要介護1・2の軽度利用者が増えている。しかし、要介護1と要介護3の報酬に、あまりに大きな開きがあり、経営が厳しい」との声が出ています。小多機の介護報酬は要介護1と3で、1か月当たり1万1793単位の開きがあります。利用者25名と仮定し、すべてが要介護3のケースと、すべてが要介護1のケースとでは、1年間で3500万円超の収益差が出てくるのです。

小多機の基本報酬は、要介護1と要介護3とで月に1万1793単位もの開きがある【総合マネジメント体制強化加算】の概要(介護給付費分科会(2)5 201009)



こうした状況を踏まえて厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課の笹子宗一郎課長は、次のような報酬見直し案を提示しています。

(1)財政中立の観点も考慮して、要介護1・2の基本報酬を引き上げる(要介護3以上は引き下げの可能性大)
(2)【訪問体制強化加算】について、▼より訪問回数の多い事業所を評価する加算(I)▼現在と同じ要件(訪問回数が月200回以上)の加算(II)▼訪問回数の少ない加算(III)―に細分化する
(3)【総合マネジメント体制強化加算】について、▼地域貢献活動の場を提供する事業所を評価する加算(I)▼現行と同じ要件の加算(II)―に細分化する



まず(1)は、報酬の勾配を緩やかにするもので、「要介護1・2の報酬引き上げ」とセットで「要介護3以上の報酬引き下げ」が行われる見込みです。多くの委員はこの考え方に賛成していますが、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「小多機に求められる機能に鑑みた慎重な検討が必要」との姿勢を崩していません。である」とコメントしています。関連して堀田聰子委員(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)は「必要なサービスが柔軟に提供される方向に向けて、ゆるやかな事業統合を促していってはどうか」ともアドヴァイスしています。

また(2)は、小多機事業所による訪問回数に大きなバラつきがある(通いや宿泊に比べてバラつきが非常に大きい)ことを踏まえ、「より積極的に訪問を行う事業所を高く評価し、消極的に事業所の評価を適正化する」ものです。

看多機の訪問サービス(折れ線グラフの薄橙色)は、通い(緑色の折れ線グラフ)、宿泊(桃色の折れ線グラフ)に比べて事業所間のバラつきが大きい(介護給付費分科会(4)3 201116)

訪問体制強化加算の見直し案(介護給付費分科会(4)2 201116)



多くの委員から賛同意見が出ており、今後「訪問回数の基準値をどう設定するか」を詰めていくことになります。ただし、藤野裕子委員(日本介護福祉士会常任理事)は「小多機では多数回の訪問が評価されるのに対し、訪問介護では多数回訪問についてはケアプランチェックが行われる」という点について「矛盾はないのか」とも指摘しています。



(3)の【総合マネジメント体制強化加算】は、個々の利用者に対するサービス計画の作成・改善を行うとともに、利用者を地域の多様な活動へ積極的に参加することを促す加算です。地域活動への参加により、利用者の心身機能の維持・改善が期待されます。

この点、上位区分の加算(I)では▼小多機事業所自らが「地域住民との交流の場」(例えば認知症カフェや食堂など)を設置する▼地域活動への参加を個別サービス計画に反映させる―ことが要件となる見込みです。地域住民が事業所内に出入りすることとなり、「風通しが良くなく」ことを期待する声もあります。「交流の場」として、具体的に何が該当するのかなどは、改定案が固まった後に「通知」や「事務連絡」などで詳細が示されることになるでしょう。

総合マネジメント体制強化加算の見直し案(介護給付費分科会(4)4 201116)

看多機の機能強化を目指し、【褥瘡マネジメント加算】等の算定を可能とする

看多機は、小多機に「看護機能」を付加した地域密着型サービスで、医療的ケアが必要となる利用者に対し、複合的なサービス提供を行い、いわゆる在宅限界を高めることを狙うものです。

看多機の概要(介護給付費分科会(4)7 201116)



厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、多職種協働による自立支援や重度化防止を一層推進するために、▼褥瘡マネジメント加算▼排泄支援加算▼口腔機能向上加算▼栄養改善加算―を看多機でも算定可能とする考えを示しています。

より手厚いケア・サービスを行う事業所の評価を高めることで、さらにケア・サービスの質が上がることが期待されますが、河本委員は「アウトカム評価を検討すべき」と注文。将来的には「どのような体制を敷いているかの評価」(ストラクチャー評価)や「どのようなサービスを行ったかの評価」(プロセス評価)から、「どのような結果・効果を出したかの評価」(アウトカム評価)への移行が徐々に進むと思われますが、Gem Medで繰り返しお伝えしているとおり「適切な指標の設定」「クリームスキミングの防止」などを十分に考慮しなければならず、「一気にアウトカム評価に移行する」ことは難しく、まず調査・研究を進めることが重要でしょう。



なお、人生の最終段階を迎え「通所が困難」になった利用者に対し、看多機事業所負担で「訪問入浴介護」を利用することが可能な旨が明確化されます。この場合、訪問入浴介護の費用は、看多機事業所と訪問入浴介護事業との「合議」で決めることになります(例えば訪問入浴介護の報酬相当の費用を看多機事業者が訪問入浴介護事業者に支払うなど)。

小多機・看多機、緊急ショートを受けやすくするような要件見直し

また小多機・看多機能の登録者以外の「緊急ショート」に、柔軟に対応できるような要件見直しが行われる見込みです。

現在は「事業所の登録定員に空きがある」ことなどを要件に、登録者以外の緊急ショート利用が可能です。しかし事業所経営を安定させるためには「登録者を増やす」ことが重要であるため、「宿泊室は空いているが、登録定員に空きがないために、緊急ショートを受け入れられない」事態が生じているのです。

そこで、緊急ショートを行う場合の要件について、▼「登録者の数が登録定員未満である」旨の要件を削除する▼利用人数要件を「登録者の宿泊サービス利用者と登録者以外のショート利用者の合計が、宿泊定員の範囲内であること」とする―との見直しを行う方向が示されました。委員からの反対意見はなく、今後、詳細を詰めていくことになります。

小多機・看多機における緊急ショート要件の見直し案(介護給付費分科会(4)5 201116)



関連して、地方自治体からの意見を踏まえた、▼過疎地等では、人員・設備基準を遵守するなどの要件を付したうえで、一定期間(例えば3年間)登録定員超過の場合の減算(30%減算)を適用しない▼登録定員・利用定員の基準を「従うべき基準」から「標準基準」(合理的な理由があれば市町村が異なる基準を設けてもよい)へと見直す―旨の提案も行われています。

この点、前者については「常態化は好ましくなく、延長は認めるべきではない」(河本滋史委員:健康保険組合連合会理事)、後者については「自治体間で基準が異なることによる事務負担の増大が懸念される」(伊藤彰久委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)といった意見が出ています。これらも踏まえて、詳細な要件設定等が行われることになりそうです。

介護保険における各種基準の概要と違い(介護給付費分科会(4)6 201116)



このほか、中山間地域における加算(【特別地域加算】、中山間地域等の【小規模事業所加算】)について、小多機・看多機も算定対象とすることになるでしょう。



●2021年度介護報酬改定に向けた、これまでの議論に関する記事●
【第1ラウンド】

▽横断的事項▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設(老健)介護医療院・介護療養型医療施設—)

【第2ラウンド】
▽横断的事項
(▼人材確保、制度の持続可能性自立支援・重度化防止地域包括ケアシステムの推進―)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型訪問介護、看護小規模多機能型訪問介護(以下、看多機)認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護・認知症対応型通所介護、療養通所介護通所リハビリテーション、福祉用具・住宅改修短期入所生活介護、短期入所療養介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護、訪問入浴介護訪問リハビリ、居宅療養管理指導居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護医療院・介護療養型医療施設介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)短期入所生活介護、短期入所療養介護―)

▽横断的事項(その2)(▼地域包括ケアシステムの推進▼自立支援・重度化防止の推進(関連記事はこちら(ADL維持等加算)こちら(認知症対策、看取り対応、科学的介護など)、▼処遇改善、▼人材確保、制度の安定性・持続可能性の確保など―)

▽実態調査(▼介護事業経営処遇改善―)

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