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老健施設「入所前」からのケアマネ事業所との連携を評価、在宅復帰機能さらに強化―社保審・介護給付費分科会(5)

2020.11.5.(木)

介護老人保健施設について、在宅復帰・在宅生活支援機能のさらなる充実を目指して、評価のベースとなる「在宅復帰・在宅療養支援等指標」を見直す。具体的には「訪問リハビリの比重」を高めたり、「認知症に係る事項」の追加などを検討する―。

老健施設入所前から、退所後を睨んで、ケアマネ事業所と施設が連携することで、より早期の在宅復帰が可能となるため、「入所前からの連携」を評価してはどうか―。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では、新規入所者が「要介護3以上」となったことから入所者の要介護度が上がり、【日常生活継続支援加算】の要件にアンバランスが生じている。これを見直すこととしてはどうか―。

10月30日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われています。

老健施設のさらなる機能強化目指し、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」を見直し

10月30日に開催された介護給付費分科会では、介護事業経営実態調査処遇状況等調査の結果報告を受けるとともに、▼施設サービス(介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院等)▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―について具体的な見直し内容を討議しました。本稿では「介護老人保健施設」「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」に焦点を合わせます(居宅介護支援(ケアマネジメント)介護医療院等についてはお伝え済)。

●2021年度介護報酬改定に向けた、これまでの議論に関する記事●
【第1ラウンド】

▽横断的事項▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設(老健)介護医療院・介護療養型医療施設—)

【第2ラウンド】
▽横断的事項
(▼人材確保、制度の持続可能性自立支援・重度化防止地域包括ケアシステムの推進―)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型訪問介護、看護小規模多機能型訪問介護(以下、看多機)認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護・認知症対応型通所介護、療養通所介護通所リハビリテーション、福祉用具・住宅改修短期入所生活介護、短期入所療養介護―)



介護老人保健施設は、医療機関と居宅(自宅)との「中間施設」として誕生。2012年度・18年度の介護報酬改定で、この本来の姿を再確認し、「在宅復帰に向けた取り組み、在宅生活を支える取り組み」を積極的に行う施設を高く評価することとし、現在は「在宅復帰率」や「リハビリ提供機能」などに応じて▼超強化型▼在宅強化型▼加算型▼基本型▼その他型―の5類型に細分化されています。

2018年度の前回改定後の状況を眺めると、見事に「高機能・高報酬の類型へのシフト」が生じていることが確認されました。

こうした状況を踏まえて厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、来年度(2021年度)の介護報酬改定で次のような見直しを行ってはどうかと提案しています。

(1)リハビリ機能の強化、認知症高齢者への対応強化を進める方策をとる
(2)リハビリ機能強化のための評価を導入し、VSITも活用する
(3)中重度や看取りへの対応を充実する
(4)早期の在宅復帰を促進するために、居宅介護支援事業者(ケアマネジャー事業所)との連携を評価する
(5)【所定疾患施設療養費】について実態を踏まえ、対象疾患見直しや算定期間延長を行う
(6)かかりつけ医との連携を推進する方策をとる
(7)事故報告の様式統一や安全対策の強化を図る



このうち(1)では、まず▼超強化型▼在宅強化型▼加算型▼基本型▼その他型―の5類型のベースとなる「在宅復帰・在宅療養支援等指標」のうち、「居宅サービス実施数」について訪問リハビリの比重を高くする、「リハビリテー ション専門職配置割合」について理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の3職種の配置を評価する、という見直し案が提示されました。



前者は、老健施設の実施する居宅サービスにおいて「訪問リハビリの実施割合が低い」(通所リハビリや短期入所療養介護は9割超の施設が実施しているが、訪問リハビリは3割強にとどまる)ことを踏まえた見直し内容、後者は「3職種すべてを配置する施設では、よりADL向上度合いが大きい」ことを踏まえた見直し内容です。多くの委員が「さらなる在宅復帰機能の強化」に期待を寄せ、賛同の意を表明しています。

老健施設の居宅サービス実施状況を見ると、訪問リハビリが若干弱い(介護給付費分科会(5)1 201030)

リハビリ3職種がそろうことで、リハビリの効果が高まる(介護給付費分科会(5)2 201030)



このようにリハビリ機能の強化を目指す中で、あわせて(2)で▼リハビリによる機能維持・改善の評価▼VISIT(リハビリに関する介護保険のデータベース)へのデータ提出を要件化する―ことも提案されました。前者については、さらに詰める必要がありますが、リハビリの効果に着目した【ADL維持等加算】(通所介護においてADLの維持・改善実績を要件とするアウトカム評価)を参考にすべきとの意見が井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)から出ています。

ただし、後者のVISIT活用については老健施設代表である東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)から「現場の負担が大きい」「BI(Barthel Index)には認知症が勘案されておらず介護現場ではあまり活用されていない」点を考慮すべき、との慎重意見も出ています。

ADL維持等加算の概要(その1)(介護給付費分科会6 200914)

ADL維持等加算の概要(その2)(介護給付費分科会7 200914)

「在宅復帰・在宅療養支援等指標」に「認知症に係る事項」を追加

また眞鍋老人保健課長は、認知症高齢者への対応力強化を目指し、「在宅復帰・在宅療養支援等評価指標に『認知症に係る事項』を追加し、その際、現在の『要介護度4・5の割合』『喀痰吸引の実施割合』『経管栄養の実施割合』と合わせて検討する」ことも提案しています。

この提案に対しては、東委員や江澤和彦委員(日本医師会常任理事)から「いたずらにBPSD対応の状況を評価するのではなく、残像機能をどう活用しているのかを評価すべき。優れた認知症対応を行う施設では、BPSDの発症を上手に抑えている」との指摘が出ています。「認知症に係る事項」の追加に反論するものでなく、「どのような項目とすべきか」という点に関する提案・注文と考えられます。

入所「前」からのケアマネ事業所と老健施設との連携を評価へ

老健施設の入所者は、「居宅(自宅)」と「老健施設」を行き来することが少なくありません。いわゆる「ときどき入所、ほぼ在宅」という形です。在宅生活の間も介護保険サービスを利用するケースが多く、そこには当然、サービスの調整等を行うケアマネジャーが存在します。

ここで、老健施設に入所する前から、施設とケアマネとが連携し「退所後にはこういうサービス提供が考えられる」などの情報連携を行うことで、施設において「退所後を睨んだケアの提供」が可能となります。結果として、円滑な在宅復帰が期待されます。

また、「居宅(自宅)」と「老健施設」との行き来をする前に、つまり初めて老健施設に入所する場合でも、こうした連携があれば、早期かつ円滑な在宅復帰が可能となるでしょう。

実際に、「入所前の連携」がなされた場合、「入所後の連携」と比べて入所期間が短い、つまり早期の在宅復帰が実現できているという調査結果もあります。

老健施設入所前からケアマネと連携することで、より早期の在宅復帰が可能となる(介護給付費分科会(5)3 201030)



そこで眞鍋老人保健課長は、(4)として「入所時からのケアマネ事業所(入所者が退所後に利用を希望する事業所)との連携」を評価する考えを提示しています。診療報酬では2018年度の前々回改定で「入院前からの退院支援」を評価する【入院時支援加算」が創設されています。介護保険でもこうした考え方を導入するものと言えます。

現在、退所に先立ってケアマネ事業所に情報提供を行い、ケアマネ事業所と連携して退所後のサービス利用調整を行った場合、老健施設側は【退所前連携加算】(1回につき500単位)として評価されています。

例えばこの加算を見直し、▼「入所時からの連携」をより上位の加算として評価する(例えば【退所前連携加算(I)】として単位数を高く設定することや、上乗せの【入所時連携加算】を創設するなど)▼「入所後のみの連携」について下位の加算として評価する(例えば【退所前連携加算(II)として、単位数を引き下げるなど】―ことなどが考えられます。

東委員もこの提案を歓迎しています。

所定疾患施設療養、実態を踏まえて対象疾患等を見直し

また(5)の【所定疾患施設療養費】は、老健施設入所者への医療提供を例外的に評価するもの(医療施設である老健施設では、基本的な医療処置等は基本報酬で評価済である)ですが、(1)帯状疱疹による算定が非常に少ない(2)肺炎・尿路感染症に関して検査をしていないケースが一部にある(3)レセプトと診療録の双方に記載が求められる(4)療養費算定可能期間(7日間)を超えて治療が必要なケースがある―などの問題点が指摘されています。

この問題点を解消するために、▼対象疾患を見直す(例えば「帯状疱疹」から「皮膚感染症」と拡大するなど)▼必要な検査実施を要件化する▼8日以上の算定を認める―などの見直しが行われる見込みです。

ただし不適切な算定が行われることを危惧し、費用負担者代表の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「不要な治療延伸が生じないように8日目以降は低く設定すべき」「治療の必要性などの提出を要件化すべき」と注文しています。

特養ホーム、入所者の重度化に伴い【日常生活継続支援加算】の要件がアンバランスに

また、終の棲家としてその重要性を増す介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)については、来年度(2021年度)改定で次のような見直しを行ってはどうかとの提案が厚労省老健局高齢者支援課の齋藤良太課長からなされています。

(1)入所者の処遇に支障がない場合には、▼従来型とユニット型を併設する場合における介護・看護職員▼広域型特養と併設する小規模多機能型居宅介護における管理者・介護職員▼本体施設が特養である場合のサテライト型居住施設における生活相談員―の兼務を認める

特別養護老人ホームの人員配置について、サービスに支障のない範囲で兼務を広げてはどうか(介護給付費分科会(5)4 201030)



(2)地域密着型特養(サテライト型を除く)における栄養士の配置基準を見直す(入所者の処遇が適切に行われると認められるときは、栄養士を置かないことを可能とする)

(3)個室ユニット型施設について、1ユニットの定員を現行の「概ね10人以下」から「15名以内」に緩和する

(4)ユニットリーダーについて、原則常勤を維持しつつ、「出産・育児などやむを得ない事情により欠員が生じる場合は、一時的に非常勤職員で代替する」ことを認め、職場復帰後も短時間勤務を認める

(5)ユニット型個室的多床室を新たに設置することを禁止する

(6)看取りへの対応を充実する観点から、【看取り介護加算】の在り方を見直す

(7)入所者の平均要介護度が年々上昇していること、認知症の入所者が増加していることなどを踏まえ、【日常生活継続支援加算】の在り方について検討する(「要介護4・5の入所者が70%以上」要件は7割近くがクリアできているが、「喀痰吸引が必要な入所者が15%以上」要件は1割もクリアできず、アンバランスが生じている)

特別養護老人ホームの入所者の要介護度が上がっているため、【日常生活継続支援加算」の要件にアンバランスが生じている(介護給付費分科会(5)5 201030)



(8)事故報告の様式統一や安全対策の強化を図る

(9)高齢者虐待防止を推進する

このうち(1)については、「重度者が増加する」一方で、「人員配置を実質的に緩和」する方向に対し、「矛盾していないか」「スタッフの負担が増加するのではないか」と疑問の声も一部に出ています。「入所者の処遇に支障がない場合」という縛りをどう担保するのかがポイントになりそうです。

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