集中治療中の重症肺炎患者の「原因の細菌等は何か、薬剤耐性があるか」を一度に鑑別できる新検査などを保険適用—厚労省
2026.2.5.(木)
▼集中治療中の重症肺炎患者について「一度に多くの細菌・ウイルス、薬剤耐性」を検出できる新たな検査▼妊婦のトキソプラズマ感染の有無を検出できる新たな検査▼デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DND)の小児患者に対し、近く薬価基準への収載(=保険適用)が予定されるエレビジスが有効かどうかを事前に判断する新たな検査—を保険適用するにあたり、点数(検査料)の算定ルールを明確に設定する―。
厚生労働省は1月30日に通知「検査料の点数の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。2月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。
目次
集中治療中の重症肺炎患者について、一度に多くの細菌・ウイルス等を検出する新検査
1月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、次の3つの新検査手法の有用性が認められ、保険適用することが承認されました(厚労省サイトはこちら)。
(1)喀痰・気管支肺胞洗浄液(BAL)中の多くの細菌やウイルスの核酸・薬剤耐性遺伝子を一度に検出し、診断を補助する新検査手法
(2)血清・血漿中のトキソプラズマIgG抗体アビディティー(IgG avidity)を検出し、トキソプラズマ感染の診断を補助する新検査手法
(3)血清・血漿中の抗アデノ随伴ウイルス血清型rh74(抗AAVrh74)抗体を検出し、「デランジストロゲン モキセパルボベク」(商品名:エレビジス点滴静注)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者への適応判定を補助する新検査手法
これを受けて厚生労働省は「保険診療の中でこれらの検査を実施する場合の診療報酬(検査料)算定ルール」を定め、今般の通知で次のように明らかにしました。
まず(1)の「喀痰・気管支肺胞洗浄液(BAL)中の多くの細菌やウイルスの核酸・薬剤耐性遺伝子を一度に検出」する検査については、D023【微生物核酸同定・定量検査】の中に「ウイルス・細菌核酸及び薬剤耐性遺伝子多項目同時検出(喀痰/気管支肺胞洗浄液)」を新たに設置し、次のような検査点数の算定ルールが設けられました。
集中治療中の重症肺炎患者について、「原因となる細菌・ウイルスが何なのか、その病原体が抗菌薬・抗ウイルス薬に対して薬剤耐性を持っていないか」などを一度の検査(多くの細菌等を同定可能)で確定し、適切な治療(抗菌薬・抗ウイルス薬の選定)につなげられる画期的な検査です。
【対象患者】
→次のいずれかに該当すること
▽小児においては、日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会の「小児呼吸器感染症診療ガイドライン」における小児市中肺炎の重症度分類で重症と判定される患者
▽成人においては、日本呼吸器学会の「成人肺炎診療ガイドライン」における市中肺炎もしくは医療・介護関連肺炎の重症度分類で重症以上、または院内肺炎の重症度分類で中等症以上と判定される患者
【本検査を実施できる医療機関の基準】(施設基準)
→以下のいずれにも該当すること
▽「感染症に係る診療を専ら担当する常勤医師(専ら感染症診療経験5年以上に限る)が1名以上」または「臨床検査を専ら担当する常勤医師(専ら臨床検査経験5年以に限る)が1名以上」配置されている
→「臨床検査を専ら担当する医師」とは、勤務時間の大部分において検体検査結果の判断補助を行うとともに、検体検査全般の管理・運営、院内検査に用いる検査機器・試薬の管理についても携わる医師をいう
▽次のいずれかの施設基準の届け出を行った医療機関である
・A300【救命救急入院料】(救命救急入院料1・2・3・4のいずれか)
・A301【特定集中治療室管理料】(特定集中治療室管理料1・2・3・4・5・6のいずれか)
・A301-4【小児特定集中治療室管理料】
・A302【新生児特定集中治療室管理料】(新生児特定集中治療室管理料1・2のいずれか)
・A303【総合周産期特定集中治療室管理料】の「2 新生児集中治療室管理料」
▽A234-2【感染対策向上加算】の「1 感染対策向上加算1」または「2 感染対策向上加算2」のいずれかの施設基準の届け出を行った医療機関である
【算定要件】
▽検体
・喀痰または気管支肺胞洗浄液
▽検査方法等
・30項目以上のウイルス・細菌核酸および薬剤耐性遺伝子の検出をマイクロアレイ法(定性)により同時に行う
▽算定点数、算定回数
→一連の治療につき1回、「1273点」を算定する
(根拠)次の検査の所定点数を合算する
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「22 ウ イルス・細菌核酸多項目同時検出(SARS-CoV-2核酸検出を含まないもの)、結核菌群リファンピシン耐性遺伝子及びイソニアジド耐性遺伝子同時検出」(963点)
D019【細菌薬剤感受性検査】の「3 3菌種以上」(310点)
▽その他のルール
・検査を実施した年月日をレセプトの摘要欄に記載する
▽算定可能病床等
→本検査は、以下の(イ)または(ロ)のいずれかに該当する場合に算定できる
(イ) 次の点数を算定する病床で「集中治療」が行われた場合
・A300【救命救急入院料】
・A301【特定集中治療室管理料】
・A301-4【小児特定集中治療室管理料
・A302【新生児特定集中治療室管理料】
・A302【新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料】
・A303【総合周産期特定集中治療室管理料】の「2 新生児集中治療室管理料」
(ロ)(イ)に掲げる病床以外の場所で「(イ)に掲げる病床で行われる集中治療に準じた治療」が行われた場合
→この(ロ)の場合には、治療内容をレセプトの摘要欄に記載することが必要
▽併算定ルール
→一連の治療期間において、別に実施した以下の検査は別に算定できない(併算定×、本検査1つで多くの細菌、ウイルス、薬剤耐性を検出できるため)
○D012【感染症免疫学的検査】
▼4 マイコプラズマ抗体定性
▼4 マイコプラズマ抗体半定量
▼11 ウイルス抗体価(定性・半定量・定量)(1項目当たり)で算定対象として掲げられているもののうち、以下のもの
・インフルエンザウイルスA型
・インフルエンザウイルスB型
・パラインフルエンザウイルスI型
・パラインフルエンザウイルスII型
・パラインフルエンザウイルスIII型
・RSウイルス
▼22 インフルエンザウイルス抗原定性
▼24 RSウイルス抗原定性
▼25 ヒトメタニューモウイルス抗原定性
▼27 マイコプラズマ抗原定性(免疫クロマト法)
▼36 マイコプラズマ抗原定性(FA法)
▼38 アデノウイルス抗原定性(糞便を除く)
▼41 肺炎球菌莢膜抗原定性(尿・髄液)
○D023【微生物核酸同定・定量検査】
▼6 マイコプラズマ核酸検出、インフルエンザ核酸検出
▼7 レジオネラ核酸検出
▼13 肺炎クラミジア核酸検出
▼17 ブドウ球菌メチシリン耐性遺伝子検出
妊婦がトキソプラズマに感染しているかどうかの診断を補助する新検査
また(2)の「血清・血漿中のトキソプラズマIgG抗体アビディティー(IgG avidity)を検出」する検査については、D012【感染症免疫学的検査】の中に、新たに「トキソプラズマIgG抗体アビディティー」が位置付けられ、次のような検査点数算定ルールが設定されました。
【対象患者】
→トキソプラズマIgM抗体陽性で「スピラマイシン」を服用している妊娠満16週未満の妊婦(後述する算定回数等に留意)
【検査方法】
→日本医療研究開発機構(AMED)研究班による「トキソプラズマ妊娠管理マニュアル」に従って、CLIA法により血清または血漿中の「トキソプラズマIgG抗体アビディティー」を測定する
【算定点数、算定回数】
→原則として、一連の治療において1回に限り「425点」を算定する(D012【感染症免疫学的検査】の「60 HTLV-I抗体(ウエスタンブロット法及びラインブロット法)」の所定点数を準用)
→医学的な必要性から本検査を「2回算定」する場合、または妊娠満16週「以降」の妊婦に対して当該検査を算定する場合は、その理由をレセプトの摘要欄に記載する必要がある
【併算定】
→D012【感染症免疫学的検査】の「14 トキソプラズマ抗体」と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する
小児DND患者に新薬「エレビジス」が有効かどうかを事前に判断する新検査
他方、(3)の「血清・血漿中の抗アデノ随伴ウイルス血清型rh74(抗AAVrh74)抗体を検出」する検査は、上述のとおり、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DND)の小児患者に対して、近く薬価基準への収載(=保険適用)が予定される「デランジストロゲン モキセパルボベク」(商品名:エレビジス点滴静注)が有効かどうかを事前に判断する検査です。極めて高額な薬価が設定される予想され、「薬剤が有効な患者」に投与対象を限定することが必要かつ重要となります。
本検査については、D012【感染症免疫学的検査】の中に「抗AAVrh74抗体」の項が位置付けられ、次のような算定ルールが設けられました。
【対象患者】
→デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DND)患者
【算定可能施設】
→関連学会の定める適正使用指針において定められた「実施施設基準」を満たす医療機関
【検査目的】
→「デランジストロゲン モキセパルボベク」(商品名:エレビジス点滴静注)の適応判定の補助
【検査方法】
→ECLIA法
【算定点数、算定回数等】
→原則として患者1人につき1回に限り「1万2850点」を算定する
(根拠)
・D012【感染症免疫学的検査】の「66 抗アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)抗体」
の所定点数を準用
→2回以上算定する場合は、その医療上の必要性をレセプトの摘要欄に記載することが求められる
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