ゲムシタビンの「上咽頭がん治療」への使用認め、フルダラを「同種造血幹細胞移植の前治療」に用いる際の疾患縛り解除―厚労省
2026.2.6.(金)
抗菌剤の「アベロックス錠」(一般名:モキシフロキサシン塩酸塩(遺伝子組換え))について、新たに「多剤耐性肺結核」の治療に用いることを保険診療の中で可能とする—。
抗がん剤の「ゲムシタビン点滴静注用200mg」等(一般名:ゲムシタビン塩酸塩)について、新たに「局所進行上咽頭がんにおける化学放射線療法の導入療法」「再発または遠隔転移を有する上咽頭がんの治療」に用いることを保険診療の中で可能とする―。
白血病等の治療に用いる「フルダラ静注用」(一般名:フルダラビンリン酸エステル)について、「同種造血幹細胞移植の前治療」における疾患の縛りを解除する―。
厚生労働省は1月29日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2026年1月29日)から保険適用範囲が拡大されています(厚労省サイトはこちら)。
保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に強力に対応する特別ルール
従前、本邦において医薬品の承認・保険適用手続きが複雑で時間がかかることを原因とした「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が問題視されました(現在、新たな、別の形での新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されている、関連記事はこちら)。
日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況は放置できず、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、「本邦では未承認・適応外だが、医療上の必要性の高い」医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みが進められています。
また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています(関連記事はこちら)。
さらに、医療保険制度においてドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」というルールが創設されました。
保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他の傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該治療全体が全額患者負担となります(特別に保険診療と自由診療との併用を認める先進医療や患者申出療養などの仕組みも別途用意されている)。
また、「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。
しかし、治験等を実施してエビデンスを構築し効能・効果追加を取得するまでには相当の時間が必要です。このため、上記原則を厳格に適用しすぎれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。
これでは「傷病と闘う患者に酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記のルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどを踏まえたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。
今般、この特別ルールにより次の医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。
●モキシフロキサシン塩酸塩(遺伝子組換え)(販売名:アベロックス錠 400mg)
【現在認められている効能・効果】
○適応菌種
・モキシフロキサシンに感性のブドウ球菌属
・レンサ球菌属
・肺炎球菌
・モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス
・大腸菌
・クレブシエラ属
・エンテロバクター属
・プロテウス属
・インフルエンザ菌
・レジオネラ・ニューモフィラ
・アクネ菌
・肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)
・肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
○適応症
・表在性皮膚感染症
・深在性皮膚感染症
・外傷・熱傷および手術創等の二次感染
・咽頭・喉頭炎
・扁桃炎
・急性気管支炎
・肺炎
・慢性呼吸器病変の二次感染
・副鼻腔炎
↓
上記に加え【新たに認められる効能・効果】
<適応菌種>モキシフロキサシンに感性の結核菌
<適応症>多剤耐性肺結核
【新たに認められる効能・効果(多剤耐性肺結核)における用法・用量】
▽通常、成人にはモキシフロキサシンとして、1回400 mgを1日1回経口投与する
【新たに認められる効能・効果(多剤耐性肺結核)における用法・用量に関連する注意】
▽本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため原則として他の抗結核薬および本剤に対する感受性(耐性)を確認し、感受性を有する既存の抗結核薬3剤以上に本剤を上乗せして併用する
●ゲムシタビン塩酸塩(販売名:ゲムシタビン点滴静注用200mg「ヤクルト」、同点滴静注用1g「ヤクルト」、同点滴静注用200mg「タカタ」、同点滴静注用1g「タカタ」)
【現在認められている効能・効果】
・非小細胞肺がん
・膵がん
・胆道がん
・尿路上皮がん
・手術不能または再発の乳がん
・がん化学療法後に増悪した卵巣がん
・再発または難治性の悪性リンパ腫
↓
上記に加え【新たに認められる効能・効果】
・局所進行上咽頭がんにおける化学放射線療法の導入療法
・再発または遠隔転移を有する上咽頭がん
【新たに認められる効能・効果(局所進行上咽頭がんにおける化学放射線療法の導入療法、再発または遠隔転移を有する上咽頭がん)における用法・用量】
▽単独投与する場合は、通常、成人には「ゲムシタビンとして、1回、体表面積1平米あたり1000mgを30分かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、4週目は休薬する」ことを1コースとして投与を繰り返す
▽白金系抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、通常、「成人にはゲムシタビンとして、1回、体表面積1平米あたり1000mgを30分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する」ことを1コースとすることもできる
▽患者の状態により適宜減量する
▽ただし、局所進行上咽頭がんに対し白金系抗悪性腫瘍剤と本剤を併用する場合は、投与回数は3回までとする
【新たに認められる効能・効果(局所進行上咽頭がんにおける化学放射線療法の導入療法、再発または遠隔転移を有する上咽頭がん)における用法・用量に関連する注意】
▽本剤単独投与の有効性および安全性は確立しておらず、「シスプラチン」(販売名:ランダ注10mg/20mL、ほか後発品あり)と併用すること
●フルダラビンリン酸エステル(販売名:フルダラ静注用50mg)
【現在認められている効能・効果】
▽貧血または血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病
▽再発または難治性の▼低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫▼マントル細胞リンパ腫▼急性骨髄性白血病—
▽次の疾患における同種造血幹細胞移植の前治療
・急性骨髄性白血病
・骨髄異形成症候群
・慢性骨髄性白血病
・慢性リンパ性白血病
・悪性リンパ腫
・多発性骨髄腫
▽腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置
↓
【変更される効能・効果】
▽同種造血幹細胞移植の前治療(疾患の縛りを解除する)
【変更される効能・効果(同種造血幹細胞移植の前治療)に関連する注意】
▽本剤投与にあたっては、国内外の最新のガイドライン等を参考に「適応患者の選択」を行うこと
【変更される効能・効果(同種造血幹細胞移植の前治療)における用法・用量】
▽フルダラビンリン酸エステルとして1日量、体表面積1平米あたり30mgを6日間連日点滴静注(約30分)する
▽患者の状態により投与量および投与日数は適宜減ずる
【変更される効能・効果(同種造血幹細胞移植の前治療)における用法・用量に関連する注意】
▽(従前より変更なし)他の抗悪性腫瘍剤や全身放射線照射と併用する
▽(今回、追加)本剤と併用する他の抗悪性腫瘍剤等は、国内外の最新のガイドライン等を参考にした上で選択する
▽(従前より変更なし)小児における本剤の有効性および安全性は確立していない(使用経験が限られている)
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