直腸がん補助化学療法に用いるゼローダ、臓器移植患者の感染症予防薬のバリキサを特例保険収載―厚労省
2016.2.29.(月)
26日から、▽家族性地中海熱治療に用いるコルヒチン錠0.5mg「タカタ」▽臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制に用いるバリキサ錠450mg▽直腸がんにおける補助化学療法に用いるゼローダ錠300―の3医薬品が特例的に保険収載されます。
海外で使用できる医薬品が、わが国では使用できない―。こういった、いわゆるドラッグラグの解消が大きな課題となっています。
厚生労働省もこの点を重視し、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、わが国で未承認・適応外となっている医薬品の早期開発に向けた対策をとっています。
また、医療保険サイドからもドラッグラグ解消に努めるべく、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会(薬食審)の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、翌日から自動的に保険収載する」というルールが設けられました。
医療保険制度では、医薬品の使用は効能・効果が認められた傷病治療にしか認められておらず、それ以外の傷病治療に用いることは「適応外使用」となり保険外となるのです。この点、新たな傷病治療への効果があると考える場合には、治験などを行い、データを揃えて薬食審で承認を得なければならないのが原則ですが、これには多額の費用と時間がかかります。また、薬食審で承認を得た後、保険収載されるまでには通常6か月程度の期間がかかっていました。
しかし、こうした時間は、新薬を待つ患者にとっては酷なもので、ドラッグラグの解消にもつながりません。
そこで中医協では、海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性を確認できる場合には、その論文などを基にした効能・効果の追加申請(公知申請)が認められている点に着目。さらに、薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合、原則として後に効能・効果の追加も認められることも考慮し、上記の特例ルール(公知申請可とされた翌日から保険収載するルール)を設けたものです。
今般、この特例ルールによって保険収載された医薬品と新たな効能・効果は次のとおりです。
(1)コルヒチン(販売名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」、高田製薬)の家族性地中海熱治療
(2)バルガンシクロビル塩酸塩(販売名:バリキサ錠450mg、田辺三菱製薬)の臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制
(3)カペシタビン(販売名:ゼローダ錠300、中外製薬)の直腸がんにおける補助化学療法
このうち(2)のバリキサ錠については、「サイトメガロウイルス感染症の発症リスクの高い患者(サイトメガロウイルス抗体ドナー陽性/レシピエント陰性など)にのみ投与する」点などに留意する必要があります。
なお、この特例ルールは「未承認薬」には適用されません。適応外薬は、別の傷病治療の効能・効果を判断する際に、治験など厳しい基準をクリアしており、安全性が担保されていますが、未承認薬ではこういった安全性の担保が不十分なためです。
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