ドブトレックス、心エコー図検査における負荷のための使用を保険診療上認める―厚労省
2018.5.4.(金)
急性循環不全における心収縮力増強に用いる「ドブタミン塩酸塩」(販売名:ドブトレックス注射液100mg、同キット点滴静注用200mg、同キット点滴静注用600mg)について、新たに「心エコー図検査における負荷」のために使用することを保険診療上認める―。
厚生労働省は4月27日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日から保険適用されています(厚労省のサイトはこちら)。
急性期心筋梗塞早期に患者や、高血圧症患者では【禁忌】である点に留意を
「先進諸国で使用できる医薬品が我が国では使用できない」という、いわゆるドラッグラグが従前より問題視されてきました。厚労省はラグの解消に向けて、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっている医薬品について、製薬メーカーに開発要請を行う、といった対策をとっています。
さらに未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革では新薬創出・未承認薬解消等促進加算を創設。さらに、ラグ解消に向けて、医療保険サイドからより強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会総会で「適応外使用とされていた医薬品であっても、薬事・食品衛生審議会(薬食審)の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、翌日から自動的に保険収載する」という特例ルールが創設されました。
保険診療では、医薬品は「効能・効果が認められた傷病」の治療にしか認められず、「新たな傷病の治療に効果がある」と考えられる場合には、治験などを実施してエビデンスを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得なければならないのが原則です。安全性・有効性が確保されていない治療を、貴重な公的財源(保険料、税)で賄うことは好ましくないからです。
しかし、エビデンスの確保、審査などには相当の時間がかかるため、この原則を厳格に遵守しなければならないとすれば「今現在、疾病と闘っている患者」が医薬品にアクセスするチャンスをつぶしてしまいます。そこで中医協で、両者のバランスに配慮した特例ルールが創設されたものです。海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それを基に薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合、後に効能・効果追加が認められている、との実態に鑑みたものです。
今般、この特例ルールにより、急性循環不全における心収縮力増強に用いる「ドブタミン塩酸塩」(販売名:ドブトレックス注射液100mg、同キット点滴静注用200mg、同キット点滴静注用600mg)について、新たに「心エコー図検査における負荷」のために使用することを保険診療上認めることとなりました。
ただし、「心エコー図検査における負荷」として使用する場合、次のように比較的広範な患者で【禁忌】となっていますので、ご留意ください。
▼大型閉塞性心筋症(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄)の患者[左室からの血液流出路の閉塞が増強され,症状悪化のおそれあり](心収縮力増強に用いる場合から引き続き禁忌)
▼本剤に過敏症の既往歴のある患者(同)
▼急性心筋梗塞後早期の患者[急性心筋梗塞後早期に実施したドブタミン負荷試験中に、致死的な心破裂がおきたとの報告あり](新たに心エコー図検査に用いる場合に禁忌とされた、以下、同)
▼不安定狭心症の患者[陽性変時作用および陽性変力作用により、症状悪化のおそれあり]
▼左冠動脈主幹部狭窄のある患者[陽性変力作用により広範囲に心筋虚血を来すおそれあり]
▼重症心不全の患者[心不全悪化のおそれあり]
▼重症の頻拍性不整脈のある患者[陽性変時作用による症状悪化のおそれあり]
▼急性の心膜炎・心筋炎・心内膜炎の患者[症状悪化のおそれあり]
▼大動脈解離等の重篤な血管病変のある患者[状態悪化のおそれあり]
▼コントロール不良の高血圧症患者[陽性変力作用により過度の昇圧を来すおそれあり]
▼褐色細胞腫の患者[カテコールアミンを過剰に産生する腫瘍であるため、症状悪化のおそれあり]
▼高度な伝導障害のある患者[症状悪化のおそれあり]
▼心室充満の障害(収縮性心膜炎、心タンポナーデ等)のある患者[症状悪化のおそれあり]
▼循環血液量減少症の患者[症状悪化のおそれあり]
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