「エムポックスウイルス核酸検出」検査を保険適用、J041-2【血球成分除去療法】の対象疾患に敗血症を追加—厚労省
2025.8.5.(火)
「エムポックスウイルス核酸検出」検査を保険適用する(D023【微生物核酸同定・定量検査】の1項目とし、700点を算定可能とする)—。
J041-2【血球成分除去療法】の対象疾患に、新たに「敗血症」を追加する—。
厚生労働省は7月31日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました。8月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。
「エムポックスウイルス核酸検出」検査を保険診療で行う場合のルールなどを新設
今回、改正が行われたのは、2024年度診療報酬改定に関する次の通知です。
▽「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(2024年3月5日付、保医発0305第4号)
▽「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(2024年3月5日付、保医発0305第8号)
▽「特定保険医療材料の定義について」(2024年3月5日付、保医発0305第12号)
この通知は、診療報酬点数を算定する際の細かなルール(どういった医療行為を行えば点数算定ができるのか、どういった診療ガイドラインに従わなければならないのか、どの点数と併算定が可能なのかなど)を規定しています。
今般、次の2つの診療報酬項目について算定ルールの見直しを行っています。
(1)D023【微生物核酸同定・定量検査】に「エムポックスウイルス核酸検出」を追加する
(2)J041-2【血球成分除去療法(1日につき)】(2000点)の算定ルール見直し
まず(1)では、【微生物核酸同定・定量検査】に「エムポックスウイルス核酸検出」を新たに追加し、次のような算定ルールを設定しています(7月16日の中央社会保険医療協議会・総会で、エムポックスウイルス核酸検出を行う検査手法の保険適用が認められたことを踏まえ、点数算定ルールの追加を行ったもの)。
【対象患者】
▽エムポックスウイルス感染が疑われる患者
【目的】
▽エムポックスウイルス感染の「診断」
【検体】
▽皮膚病変、粘膜病変または咽頭の拭い液
【検査方法】
▽PCR法
【算定点数等】
▽D023【微生物核酸同定・定量検査】の「19 SARS-CoV-2核酸検出」の所定点数(700点)を準用し、1回に限り算定する
J041-2【血球成分除去療法】の対象疾患に敗血症を追加
また、J041-2【血球成分除去療法(1日につき)】は、これまで次のような点数算定ルールが設けられていました。
(1)血球成分除去療法(吸着式および遠心分離式を含む)は、▼潰瘍性大腸炎▼関節リウマチ(吸着式に限る)▼クローン病▼膿疱性乾癬▼関節症性乾癬▼移植片対宿主病(GVHD)—のいずれかの患者に対し、次のアからキまでのとおり実施した場合に算定できる
ア 潰瘍性大腸炎の重症・劇症患者および難治性患者(厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班の診断基準)
▽活動期の病態の改善および緩解導入を目的として行った場合に限り算定できる。
▽当該療法の実施回数は、一連につき10回を限度として算定する。ただし、劇症患者については11回を限度として算定できる
イ 薬物療法に抵抗する関節リウマチ患者
▽臨床症状改善を目的として行った場合に限り、一連の治療につき1クールを限度として行い、1クールにつき週1回を限度として、5週間に限って算定できる
▽当該療法の対象となる関節リウマチ患者は、活動性が高く薬物療法に抵抗する関節リウマチ患者または発熱などの全身症状と多関節の激しい滑膜炎を呈し薬物療法に抵抗する急速進行型関節リウマチ患者であって、以下の2項目を満たすものである
(イ)腫脹関節数6カ所以上
(ロ)ESR50mm/h以上、またはCRP3mg/dL以上
ウ 栄養療法および既存の薬物療法が無効または適用できない、大腸の病変に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の活動期クローン病患者
▽緩解導入を目的として行った場合に限り算定できる
▽当該療法の実施回数は、一連の治療につき10回を限度として算定する
エ 薬物療法が無効または適用できない、中等症以上の膿疱性乾癬患者(厚生労働省難治性疾患克服研究事業稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班の診断基準)
▽臨床症状の改善を目的として行った場合に限り、一連の治療につき1クールを限度として行い、1クールにつき週1回を限度として、5週間に限って算定できる。
オ 関連学会のガイドラインに準拠した既存の薬物療法が無効または適用できない関節症性乾癬患者
▽臨床症状の改善を目的として行った場合に限り、一連の治療につき2クールを限度として算定する
▽当該療法の実施回数は、1クールにつき週1回を限度として、5週間に限って算定する
▽ただし1クール終了時に治療に対する効果を判定し、無効と判断されれば中止する
カ 寛解期の潰瘍性大腸炎で既存の薬物治療が無効、効果不十分または適用できない難治性患者(厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班の診断基準)
▽寛解維持を目的として行った場合に限り、原則として一連につき2週間に1回を限度として48週間に限って算定する
▽医学的な必要性から一連につき2週間に2回以上算定する場合、または48週間を超えて算定する場合には、その理由をレセプトの摘要欄に記載する
▽初回実施に当たっては、医学的な必要性をレセプトの摘要欄に記載する
キ ステロイド抵抗性または不耐容の慢性移植片対宿主病(GVHD)患者
▽臨床症状の改善、またはステロイドの減量を目的として行った場合に限り、関連学会の指針に沿って一連につき24週間・31回を限度として算定する
▽医学的な必要性から一連につき24週間・31回を超えて算定する場合には、その理由をレセプトの摘要欄に記載する
(2)本療法を実施した場合は、レセプトの摘要欄に一連の当該療法の初回実施日および初回からの通算実施回数(当該月に実施されたものも含む)を記載する
(3)血球成分除去療法を夜間に開始した場合とは「午後6時以降に開始した場合」をいい、終了した時間が午前零時以降であっても、「1日」として算定する。ただし、夜間に血球成分除去療法を開始し、12時間以上継続して行った場合は「2日」として算定する
今般、新たに「敗血症患者」がJ041-2【血球成分除去療法(1日につき)】の対象疾患となったこと、「関節症性乾癬」を「乾癬性関節炎」に変更したことを踏まえて次のような算定ルールの見直し・追加が行われています。
▽(1)の柱書を次のように見直す
(従前)
血球成分除去療法(吸着式および遠心分離式を含む)は、▼潰瘍性大腸炎▼関節リウマチ(吸着式に限る)▼クローン病▼膿疱性乾癬▼関節症性乾癬▼移植片対宿主病(GVHD)—のいずれかの患者に対し、次のアからキまでのとおり実施した場合に算定できる
↓
(見直し後)
血球成分除去療法(吸着式および遠心分離式を含む)は、▼潰瘍性大腸炎▼関節リウマチ(吸着式に限る)▼クローン病▼膿疱性乾癬▼乾癬性関節炎▼移植片対宿主病(GVHD)▼敗血症—のいずれかの患者に対し、次のアからクまでのとおり実施した場合に算定できる
▽(1)の「ク」として、次のルールを新たに設ける
ク 敗血症と診断され、集学的治療が必要な患者
▽病態の改善を図ることを目的として行った場合で、関連学会の定める適正使用指針に従って使用した場合に限り、一連の治療につき3回を限度として算定できる
▽ただし、病態の改善により集学的治療が不要となった場合や集学的治療に反応しない場合は中止する
▽(1)の「オ」のルールについて、「関節症性乾癬」を「乾癬性関節炎」に見直す
(従前)
オ 関連学会のガイドラインに準拠した既存の薬物療法が無効または適用できない関節症性乾癬患者
▽臨床症状の改善を目的として行った場合に限り、一連の治療につき2クールを限度として算定する
▽当該療法の実施回数は、1クールにつき週1回を限度として、5週間に限って算定する
▽ただし1クール終了時に治療に対する効果を判定し、無効と判断されれば中止する
↓
(見直し後)
オ 関連学会のガイドラインに準拠した既存の薬物療法が無効または適用できない乾癬性関節炎患者
▽臨床症状の改善を目的として行った場合に限り、一連の治療につき2クールを限度として算定する
▽当該療法の実施回数は、1クールにつき週1回を限度として、5週間に限って算定する
▽ただし1クール終了時に治療に対する効果を判定し、無効と判断されれば中止する
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