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乳がん治療等に用いる「注射用エンドキサン」、造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制に用いることを保険診療の中で認める―厚労省

2023.7.28.(金)

乳がん治療等に用いる「シクロホスファミド水和物」(販売名:注射用エンドキサン)を、造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制に用いることを保険診療の中で認める―。

厚生労働省は7月24日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2023年3月3日)から保険適用範囲が拡大されています(厚労省サイトはこちら)。

保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に強力に対応する特別ルール

従前、我が国において医薬品の承認・保険適用手続きが複雑で時間がかかることを原因といた「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が問題視されました(現在、新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されており、対策が別途検討されている、関連記事はこちら)。

日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況は解消すべきであり、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みが進められています。

また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。

さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

もっとも、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了する(=効能・効果追加が認められる)までには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。

これでは「傷病と闘う患者にあまりに酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。



今般、この特別ルールにより次の3医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。

●シクロホスファミド水和物(販売名:注射用エンドキサン100mg、同500 mg)

【現在認められている効能・効果】
▽多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、肺がん、乳がん、急性白血病、真性多血症、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、神経腫瘍(神経芽腫、網膜芽腫)、骨腫瘍の自覚的・他覚的症状の緩解(ただし、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、咽頭がん、胃がん、膵がん、肝がん、結腸がん、睾丸腫瘍、絨毛性疾患(絨毛がん、破壊胞状奇胎、胞状奇胎)、横紋筋肉腫、悪性黒色腫については、他の抗悪性腫瘍剤と併用することが必要)
▽乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
▽褐色細胞腫
▽急性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、重症再生不良性貧血、悪性リンパ腫、遺伝性疾患(免疫不全、先天性代謝障害及び先天性血液疾患:Fanconi貧血、Wiskott-Aldrich症候群、Hunter病等)における造血幹細胞移植の前治療
▽腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置
▽全身性ALアミロイドーシス
▽治療抵抗性の全身性エリテマトーデス、全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安動脈炎等)、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、および血管炎を伴う難治性リウマチ性疾患)

【新たに認められる効能・効果】
▼造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制」に用いる場合には、HLA半合致移植を実施する場合に本剤の適応を考慮すること
▼「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制」における本剤の投与量、投与スケジュール等については診療ガイドライン等の最新情報を参考にすること
▼「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制」に本剤を用いる場合、通常、シクロホスファミド(無水物換算)として1日1回、体重1kgあたり50mgを2-3時間かけて点滴静注し、移植後3日目および4日目、または移植後3日目および5日目の「2日間」投与する。なお、患者の状態により適宜減量する



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