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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

セルセプトの「造血幹細胞移植における移植片対宿主病抑制」、ニトプロの「急性心不全、高血圧性緊急症」への使用を保険診療で認める―厚労省

2021.1.29.(金)

臓器移植後の拒絶反応の抑制などに用いる「ミコフェノール酸モフェチル」(セルセプト)を「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制」に用いること、手術時の異常高血圧の救急処置などに用いる「ニトロプルシドナトリウム水和物」(ニトプロ)を「急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症」治療に用いることを保険診療上可能とする—。

厚生労働省は1月27日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。

「医療保険」の中で、迅速に「最新の医療技術へのアプローチ」を

欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない―。こうした「ドラッグ・ラグ」が、日本国民が最新の医療技術へのアクセスを阻害するとして、かねてより問題視されています。

厚労省はドラッグ・ラグの解消に向けた取り組みを積極的に進めており、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなどしています。また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で新薬創出・未承認薬解消等促進加算を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革では「制度化」を行い、改善を続けています。

さらに医療保険制度の中でドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「適応外使用とされている医薬品について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、翌日から自動的に保険収載する」という特別ルールが創設されました。

保険診療の中では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にそれ以外の治療に用いれば自由診療となり、当該治療全体が全額患者負担となります。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果がある」と考えられる場合には、治験などを実施してエビデンスを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。安全性・有効性が確認されていない治療を、限られた公的財源(保険料、税)で賄うことは好ましくないからです。

ただし治験等を実施してエビデンスを構築し、審査を受けるには相当の時間がかかってしまいます。このため、原則をあまりに厳格に適用すれば、「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが阻害されることを意味します(重篤な疾患であるほど、患者に酷な状況となる)。

そこで中医協は、「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記の特例ルールを創設。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は他疾病に関して審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている―ことなどに鑑みた特例ルールです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。

今般、この特例ルールにより次の医薬品を、適応外の傷病治療に用いることが保険診療上、認められました。

●「ミコフェノール酸モフェチル」(販売名:セルセプトカプセル250、同懸濁用散31.8%)

▽現在認められている効能・効果
・腎移植後の難治性拒絶反応の治療(既存の治療薬が無効、または副作用等のため投与できず、難治性拒絶反応と診断された場合)
・腎移植、心移植、肝移植、肺移植、膵移植における拒絶反応の抑制
・ループス腎炎

▽今般、新たに認められた効能・効果
・造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制

▽追記される予定の用法・用量
・造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制の場合
[成人]通常、1回250-1500mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する。年齢、症状により適宜増減するが、1日3000mgを上限とし、1日3回、食後経口投与することも可能
[小児]通常、1回、表皮1平方メートル当たり300-600mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する。年齢、症状により適宜増減するが、1日2000mgを上限とする



●ニトロプルシドナトリウム水和物(販売名:ニトプロ持続静注液6mg、同持続静注液30mg)

▽現在認められている効能・効果
・手術時の低血圧維持
・手術時の異常高血圧の救急処置

▽今般、新たに認められた効能・効果
・急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)
・高血圧性緊急症

▽追記される予定の用法・用量
・急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症の場合
→通常、小児には「1分間に体重1kg当たり0.5μg」(年齢、症状により適宜減量)の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量し、目的とする血行動態を得るまで循環動態をモニターしながら投与速度を調節する
→通常、「1分間に体重1kg当たり3.0μg」の投与速度で目的とする血行動態が獲得・維持できる
→最高投与速度は「1分間に体重1kg当たり10μg」を限度とする

▽追記される予定の注意喚起
▼「1分間に体重1kg当たり3.0μg」を超える投与速度での投与は必要最小限に留め、長時間維持しない
▼本剤は、「緊急時に適切な対応がとれる施設」において「循環器疾患治療や救急医療に十分な知識・経験のある医師」の下で、「連続的に循環動態を観察」しながら、その「状態に応じて用量調節するなどの適切な安全管理」の下で使用すべきである
▼本剤を早い速度で投与した際に「一酸化炭素ヘモグロビン血症」が発現する可能性があることから、「投与速度に応じた適切な検査の実施」と「異常が認められた場合の速やかな本剤の投与中止等の適切な処置」を行う必要がある



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