レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法の対象疾患に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を追加―厚労省
2022.11.8.(火)
オキサリプラチンの胃がんへの使用方法を見直す(従前のB法から「A法またはB法」へ見直し)—。
レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法の対象疾患に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を追加する—。
厚生労働省は10月31日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2022年10月31日)から保険適用範囲が拡大されています(厚労省のサイトはこちら)。
保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に協力に対応する特別ルール
「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が従前より問題視され、日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況の改善が求められています(なお、新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されており、対策が別途検討されている、関連記事はこちら)。
そこで、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みを進めています。また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。
さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。
保険診療においては、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。
ただし治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了するまでには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば、「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになる)。
そこで中医協は、「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールを創設。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である(未承認ではない)▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。
今般、この特別ルールにより次の3医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中で実施が認められる)。
●「オキサリプラチン」(販売名:エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg」
▽現在認められている効能・効果(変更なし)
▼治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
▼結腸がんにおける術後補助化学療法
▼治癒切除不能な膵がん
▼胃がん
▼小腸がん
▽用法・用量(一部変更)
【従前】
▼「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」「結腸がんにおける術後補助化学療法」にはA法またはB法
▼「治癒切除不能な膵がん」「小腸がん」にはA法
▼「胃がん」にはB法
↓
【見直し後】
▼「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」「結腸がんにおける術後補助化学療法」「胃がん」にはA法またはB法
▼「治癒切除不能な膵がん」「小腸がん」にはA法
●A法
→他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして体表面積1平米当たり85mgを1日1回、静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す
●B法
→他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして体表面積1平米当たり130mgを1日1回、静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す
▽用法・用量に関連する注意(一部変更)
▼「胃がんにおける術後補助療法」について「A法を使用した場合の有効性・安全性は確立していない」旨を追記する
●「フルオロウラシル」(販売名:5-FU注250mg、同1000mg)
▽効能・効果(対象疾患追加)
【従前】
▼胃がん、肝がん、結腸・直腸がん、乳がん、膵がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの自覚的・他覚的症状の緩解(ただし、食道がん、肺がん、頭頸部腫瘍では、他の抗悪性腫瘍剤または放射線と併用することが必要→変更なし)
▼頭頸部がん、食道がんに対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(→変更なし)
▼レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法(結腸・直腸がん、小腸がん、治癒切除不能な膵癌)
↓
【見直し後】
▼胃がん、肝がん、結腸・直腸がん、乳がん、膵がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの自覚的・他覚的症状の緩解(ただし、食道がん、肺がん、頭頸部腫瘍では、他の抗悪性腫瘍剤または放射線と併用することが必要→変更なし)
▼頭頸部がん、食道がんに対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(→変更なし)
▼レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法(結腸・直腸がん、小腸がん、治癒切除不能な膵がん、治癒切除不能な進行・再発の胃がん)
▽効能・効果に関連する注意(一部変更)
▼「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」について、「本剤の術後補助療法における有効性・安全性は確立していない」旨を追記する
※「治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法」では、他のレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法と同じ用法・用量を追加する
●「レボホリナートカルシウム」(販売名:アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg)
▽効能・効果(対象疾患追加)
【従前】
▼レボホリナート・フルオロウラシル療法(胃癌(手術不能または再発)、結腸・直腸がんに対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強→変更なし)
▼レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法(結腸・直腸がん、小腸がん、治癒切除不能な膵がんに対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強)
↓
【見直し後】
▼レボホリナート・フルオロウラシル療法(胃癌(手術不能または再発)、結腸・直腸がんに対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強→変更なし)
▼レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法(結腸・直腸がん、小腸がん、治癒切除不能な膵がん、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強)
※「治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法」では、他のレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法と同じ用法・用量を追加する
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