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2026年度臨時介護報酬改定(期中改定)で処遇改善加算を拡充、訪問看護やケアマネ事業所も対象に追加―社保審・介護給付費分科会

2025.12.22.(月)

介護職員と一般産業との給与差はさらに広がっており、2026年度に期中(臨時)の介護報酬改定を行い、介護職員のさらなる処遇改善を図るべきである―。

その際、【介護職員等処遇改善加算】について「対象者を介護職員から介護従事者全体に広げる」「これまで対象となっていない訪問看護や居宅介護支援(ケアマネ事業所)なども対象に加える」ことが適当である―。

また上位区分の加算I・IIでは、生産性向上・協働化の取り組みを進めるための要件を設定すべきである―。

また現下の物価高騰なども踏まえて「食費の基準費用額」についても引き上げを行うべきである―。

こうした内容を盛り込んだ審議報告が12月19日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会において、大筋で了承されました。今後、財源の確保を踏まえて省内で詳細を詰め、2026年度の期中(臨時)介護報酬改定の諮問・答申につなげられます。

処遇改善加算、対象職種も対象サービスも拡大し、生産性向上が進む要件を設定

介護従事者の賃上げを目指した加算創設などが進み、実際に給与増・賃上げが進んでいます(関連記事はこちら)。しかし、他産業はこれを上回る賃上げを行っており、介護従事者と他産業との賃金格差は拡大してしまっています。

こうした状況を放置すれば「介護人材不足にますます拍車がかかってしまう」ため、高市早苗内閣は2025年度補正予算案の中で介護従事者の賃上げに向けた補助金創設方針を打ち出しています。

2025年度補正予算案より10



さらに、この補正予算での対応を「一時のもの」に終わらせないため、介護給付費分科会では「2026年度の臨時の介護報酬改定(期中改定)を行い、さらなる処遇改善を実現すべき」という議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちら)。

なお、介護報酬は3年に一度改定されますが「人件費が急騰している中で、3年後の状況を見越すことは極めて困難である」ために、「2024年度には24・25年度分のみを見越した処遇改善加算の財源を確保し、2026年度には期中改定も含めて改めて検討する」こととされており、今般の2026年度の臨時介護報酬改定は「想定されていたもの」と考えることもできます(関連記事はこちら)。

12月19日の会合では、厚生労働省老健局老人保健課の堀裕行課長から、これまでの分科会議論を踏まえた「審議報告案」が提示され、そこでは次のような考え方が示されています。

●審議報告案はこちら(内容は一部修正される可能性あり)



【介護職員等の処遇改善】(関連記事はこちら
●基本的な考え方
▽2040年に向けて高齢化の一層の進行と現役世代の生産年齢人口の減少を迎える中、介護サービス提供を維持していくためには、介護職員をはじめとする介護従事者の確保は喫緊の課題であり、「『強い経済』を実現する総合経済対策」において「他職種と遜色のない処遇改善に向けて2026年度介護報酬改定において必要な対応を行う」とされた

▽2026年度介護報酬改定においては、引き続き処遇改善の措置を確実に賃上げにつなげることが重要であること等を踏まえ、【介護職員等処遇改善加算】の拡充により介護分野における処遇改善を行うことが適当である

▽2026年度介護報酬改定は、2025年度補正予算の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が2026年5月分までの賃上げ相当分を支援することなどを踏まえ、「2026年6月施行とする」ことが適当である

●加算の対象
▽【介護職員等処遇改善加算】について、引き続き「介護職員の処遇改善が重要である」ことに留意しつつ、介護職員「以外」の介護従事者を新たに対象とすることが適当である

▽訪問看護・介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援を、新たに【介護職員等処遇改善加算】の対象とすることが適当である

●加算の算定要件
▽現行の取得要件は維持しつつも、持続的な賃上げに向けた環境整備の必要性等を踏まえ、「生産性向上や協働化に向けた取り組み」を【介護職員等処遇改善加算I・II】の加算率に上乗せを行う要件として設けることが適当である
▽事業所・施設の申請事務負担軽減も考慮し、「生産性向上や協働化に取り組む」事業所・施設に対する配慮措置を講じることが適当である

▽新たに対象となる(介護予防)訪問看護・(介護予防)訪問リハビリ・居宅介護(予防)支援については、「現行の介護職員等処遇改善加算IVの取得に準ずる要件として、キャリアパス要件I・II、職場環境等要件」を算定要件とすることが適当である
▽当該要件の整備には一定の期間を要することを踏まえた配慮措置、上述の「生産性向上や協働化に取り組む事業所・施設に対する配慮措置」を踏まえた配慮措置を講じることが適当である

▽介護分野の職員の業務負担軽減、ケアの質確保に資する介護現場の生産性向上を一層推進していくことが重要であり、事業所・施設に対して「生産性向上や協働化の取り組みに係る支援」を適切に講じることが求められる

●2027年度介題護報酬改定に向けた課題
▽2026年度の期中改定の措置状況等を把握した上で、「介護分野の処遇改善に向けた考え方の整理」を行うべきである

▽今般の措置とは別に、介護保険制度全体の課題として「介護サービスの適正化や重点化、財源が限られる中で保険料や利用者等の負担も念頭に置いた介護報酬の見直し」を引き続き検討していくことが求められる



【基準費用額】(関連記事はこちら
▽介護保険施設等における食費の基準費用額については、利用 者負担への影響も勘案しつつ、在宅で生活する者との公平性の観点から必要な対応を行うことが適当である



こうした内容に異論・反論は出ていませんが、委員からは、次のような様々な意見・注文も出ています。
(賃上げ等の水準について)
・他産業と「同等、それ以上」の賃金水準確保を目指すべき(志田信也委員:認知症の人と家族の会副代表理事)
・他産業との賃金差を解消できる程度の賃上げを実現してほしい(平山春樹委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長)
・介護職員の賃上げを大胆に進めるべき(及川ゆりこ委員:日本介護福祉士会会長)
・他産業と遜色のない賃金水準確保に向け、「ベースとしてプラス2万円、協同化・生産性向上に取り組む場合にはプラス2.9万円」の賃上げを行うべき(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)

(新たに加算対象となる訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援等について)
・新サービスは1種類の加算となるようだが、上位の加算を取得できるような仕組みを検討してほしい(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)
2025年度補正予算で措置された「ベースとなる1万円の賃上げ」を保障するとともに、「プラスアルファ(協同化に取り組む事業所では+5000円、職場環境の改善を行う事業所書では+4000円)も取得可能」となるよう検討すべき(平山委員)
・看護の役割に見合った賃上げを実現すべき(田母神裕美委員:日本看護協会常任理事)

(2027年度以降の介護報酬改定に向けて)
・インフレ率や民間の賃金水準、人事院勧告などを踏まえた「スライド制」(自動的に介護報酬が引き上げられる仕組み)を検討してほしい(濵田委員、田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)
・現役世代の保険料負担軽減に向けて「適正化、重点化」などを念頭に置いて検討すべき。また加算の効果検証を十分に行うとともに、「財源の在り方」についても十分に議論すべき(鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事)
・介護事業所経営、賃上げのベースとなる「基本サービス費の引き上げ」を検討すべき(石田路子委員:高齢社会をよくする女性の会副理事長/名古屋学芸大学客員教授)
・他産業と遜色のない賃金水準確保のための「中長期的な計画」を検討すべき。また介護サービスの収支差率は低く、事業運営を継続可能とするような報酬水準を確保すべき((小泉立志委員:全国老人福祉施設協議会副会長、江澤和彦委員:日本医師会常任理事)

(基準費用額について)
・過去を見た引き上げだけでなく、リアルタイムに物価等を反映できる仕組みを検討すべき(小泉委員)



これらの委員意見も踏まえ、田辺国昭分科会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)と厚生労働省とで文言の最終調整を行い、審議報告を確定させます。

その後、年末の予算編成過程での「2026年度介護報酬改定にかかる財源確保」(改定率決定)などを経て、年明けに「2026年度介護報酬改定にかかる諮問」を厚生労働大臣から受け、答申、告示・通知など改正へとつなげます。

詳細は、今後の予算編成なども踏まえて詰めていくことになりますが、新たに介護職員等処遇改善加算の対象となる訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援等については「1区分の加算」が設けられる見込みですが、「現行の加算IVとする」わけではなく、「加算取得要件として、『現行の加算IVの要件であるキャリアパス要件I・II、職場環境等要件に相当するもの』を設ける」ものとする考えを厚労省は説明しています。

2026年度期中(臨時)改定による介護職員等処遇改善加算の見直し方向2(社保審・介護給付費分科会3 251212)

2026年度期中(臨時)改定による介護職員等処遇改善加算の見直し方向1(社保審・介護給付費分科会2 251212)



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