訪問介護の基本報酬引き下げで、訪問介護の事業が「赤字」転落、直行直帰型ヘルパーを中心に人材不足が深刻化—コープ福祉機構
2024.7.30.(火)
訪問介護の基本報酬が、この4月(2024年4月)から引き下げられたが、これにより訪問介護事業が「赤字」に転落してしまった—。
また、直行直帰型ヘルパーを中心に人材不足が深刻化し、人材紹介会社手数料などのコスト増が生じている—。
生協と、生協を母体に設立された社会福祉法人が参加し、介護人材の確保・育成などに取り組んでいる全国コープ福祉事業連帯機構(コープ福祉機構)が7月29日、こうしたアンケート結果を公表しました(機構サイトはこちら)。
基本報酬引き下げの一方で、介護職員等処遇改善加算の加算率がアップされているが・・・
2024年度の介護報酬改定では「訪問介護等の基本報酬」引き下げが行われました(関連記事はこちら)。
介護事業所の経営状況をサービス種類別にみると「訪問介護事業所では良好である」(2022年度決算では平均9.5%の利益が出ている)点を踏まえたものですが、訪問介護人材の不足が著しい点を踏まえて、基本報酬を引き下げる一方で、「新設する介護職員等処遇改善加算の加算率を充実する」「歯科医療機関等との連携を評価する口腔連携強化加算(1回50単位)を新設」などのプラス対応も図られています(関連記事はこちら)。
しかし、社会保障審議会・介護給付費分科会では「訪問介護の基本報酬引き上げ」に対する疑問の声が出ています。今般、コープ福祉機構では、地域の在宅利用者を中心に訪問介護事業を展開する14法人(11都府県)を対象に緊急アンケート調査を実施。そこから、次のような状況が明らかになりました。
【経営の悪化】
▽14社員法人合計の2024年4、5月の累計実績を見ると、事業収入は前年同月比マイナス1.3%の悪化
▽同じく事業利益を見ると、黒字から「赤字」へ転落しており(事業利益率はプラス2.3%→マイナス0.7%)、14社員法人で合計4075万円の減益となっている
【介護人材不足の深刻化】
▽「直行直帰型ヘルパー」の配置状況について、「改定前(2023年5月)」と「改定後(2024年5月)」とを比較すると、14社員合計で7.2%・162人の減少となり、介護人材不足がより顕著になっている
→介材不足によりサービス提供回数も減少
【訪問介護基本報酬引き下げに関する自由意見】
▽新たな処遇改善加算の支払前であり正確にはわからないが「収益はマイナスになる」と思われる
▽訪問介護員の働く意欲の低下につながっている
▽ヘルパー、サービス提供責任者の高齢化により5年後の事業を見通す事が困難で、このまま大胆な処遇改善を図れなければ、訪問介護事業の縮小も視野に別サービスへの転換も検討している
【介護人材確保策】
▽介護人材不足により、14社員中11社員で「人材紹介会社」を活用せざるを得ない状況に陥っている
▽1人確保につき「年収の20-30%程の紹介料負担」が発生し、必要な人材を補うための負担が大きくなっている
こうした調査結果も踏まえながら、今後「2027年度の次期介護報酬改定論議」が進んでいきます。
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