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2024年度介護報酬改定踏まえ高齢者施設・医療機関の連携、リハ・栄養・口腔の一体的取り組み状況など調査―介護給付費分科会・研究委員会

2024.2.29.(木)

2024年度の介護報酬改定を受けて、2024年度には(1)高齢者施設等と医療機関の実効性のある連携体制(2)福祉用具貸与に係る上限価格のあり方(3)リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施および一体的取組(4)地域の実情や事業所規模等を踏まえた効果的かつ効率的なサービス提供の在り方—の4点について改定影響の調査を行う―。

2月28日に開催された、社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」(以下、検証・研究委員会)でこういった方向が固められました。

早くも2027年度の次期介護報酬改定に向けた動きがスタートしたと言えます。近く開かれる介護給付費分科会での了承を経て、9月(2024年)頃に調査を実施し、来年(2025年)3月頃に結果が公表されます。

2024年度介護報酬改定の効果検証全体像(介護報酬改定検証・研究委員会1 240228)

24年度検証調査のスケジュール(介護報酬改定検証・研究委員会2 240228)

早くも2027年度の次期介護報酬改定に向けて「24年度改定の効果検証」論議開始

2021年度介護報酬改定については、1月15日・22日に答申が行われ、3月中旬に告示・関係通知や事務連絡の発出などが行われます。基本的には4月1日から、医療と関連の深いサービス(居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ)では6月1日から、新単位数や各種基準が適用されます。

●2024年度介護報酬改定に関する記事はこちら



介護報酬改定では、その目的の1つに「「介護現場の課題を解決し、介護の質を向上させる」ことがあり、「前回改定で、課題解決に向けて行った見直し(改定内容)の効果・影響はどうであったか」を見極め、その結果を踏まえて「次の改定では●●の対応を行おう」と考えていきます。例えば、2024年度の今回改定では、「医療・介護・障害福祉サービスの有機的な連携」が進むように、様々な対応が図られました。改定後には「真に有機的な連携が進んでいるか?形ばかりの連携に終わってはいないか?もし連携が進んでいないようであれば、そのネックはどこにあるのか?」などを調査し、その結果を踏まえて2027年度の次期改定論議を行っていくことになります。

また、改定論議には時間や財源の制約などもあるため、「●・▲・〇・△まで議論したかったが、意見集約がなされなかったので、今回は●・▲までで抑えておこう」という判断も必要となります。この場合には「次期改定に向けて、積み残しとなった〇・△に向けた検討をする必要がある」との宿題が残されます。

もっとも、改定の効果・影響がすぐに出る項目と、比較的時間がかかる項目があるため、調査は「改定年度、改定翌年度、改定翌々年度」に分けて行われます。改定年度には「すぐに効果の現れる」項目を、時間のかかる項目については「翌年度、翌々年度」という具合に分担するイメージです。

この点、2月28日の検証・研究委員会では、次期2027年度介護報酬改定に向けて、2024年度には次の4項目の調査を行う方針を固めました。近く、親組織である介護給付費分科会での了承を経て、調査実施に移ることになります(3月にも介護給付費分科会で方針を決定し、9月頃に調査実施、来年(2025年)3月頃に調査結果報告を行うスケジュール)。

(1)高齢者施設等と医療機関の実効性のある連携体制
(2)福祉用具貸与に係る上限価格のあり方
(3)リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施および一体的取組
(4)地域の実情や事業所規模等を踏まえた効果的かつ効率的なサービス提供の在り方



まず(1)は、前述のとおり今回改定の最重要論点の1つである「実効性のある医療・介護連携」が実現できているかどうかを調査します。2024年度改定では、施設サービスに対し、在宅医療を支援する地域医療機関等(在宅療養支援診療所・病院、地域包括ケア病棟持つ中小病院など)と実効性のある連携体制を構築するため、入所者の急変時等に▼相談対応を行う体制▼診療を行う体制▼入所者の入院を原則として受け入れる体制—を確保した協力医療機関を定めることを義務付けました(3年間の経過措置あり)。また、居住系サービスにも前2項目を努力義務化しています(診療報酬でも裏返しの対応(医療機関への介護保険施設等との連携義務付け)がなされている)(関連記事はこちら)。

こうした連携状況を把握するために、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院・特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護を対象として、施設・事業所の介護サービス実施状況、利用者の状態、入退所先、協力医療機関等との連携状況、連携している協力医療機関等の情報などを調べます。

この点について松田晋哉委員長(産業医科大学教授)と小坂健委員(東北大学大学院歯学研究科研究科長)は「全国の施設・医療機関連携を広く浅く調査すると、極めて解釈が困難な結果しか得られないのではないか。すでに連携がうまくいってるところをピックアップして深く調査し、その結果を踏まえて『全国に普及させるためにどう考えれば良いか』などの研究していくことも考えられる」、「中小病院にとって『連携を希望する施設すべてとの対面での連携関係構築』などは極めて困難である。函館地域で実践されているようなリアルタイムでの医療・介護情報を連携する仕組みの活用でも良しとするなどの方策も検討すべき」などと、また田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は「連携医療機関の設定前後で、医療内容がどう変化するのかなども調べてはどうか」と提案しています。

なお連携体制構築には一定の時間がかかるため、この調査項目は2024年度にとどまらず、2025年度・26年度にも継続調査が行われます。



また、2024年度介護報酬改定では、福祉用具について次のような見直しが行われました。長期間の利用が必要なものでは「貸与よりも購入・販売のほうが安く済む」ケースが出てくることから、利用者の状況を十分に見極めて「貸与とするか?販売・購入とするか」の選択を可能とするものです。
▽モニタリング実施時期を福祉用具貸与計画へ記載することを義務付ける
▽「固定用スロープ」「歩行器(歩行車除く)」「単点杖(松葉杖除く)」「多点杖」について「貸与と販売の選択制」を導入する
▽上限価格の改定ルールに「物価上昇対応」ルールを組み込むことの必要性検討するため、貸与価格の上昇等に関する実態を引き続き半年に一度程度把握する

2024年度には貸与価格などが調査されますが、井上由起子委員(日本社会事業大学専門職大学院教授)は「2025年度の老健事業で貸与・販売の選択状況などを調査する予定だが、2024年度の効果検証調査(今回検討している調査)の中で『貸与・販売の選択予定はあるのか』などの予備的な調査も行ってはどうか」と提案しています。



また(3)は、2024年度介護報酬改定・診療報酬改定の重要ポイントとなった「リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施」が十分に進んでいるかどうかを調べるものです。リハビリの効果を高めるために「十分な栄養(タンパク質やアミノ酸等)の摂取」が必要となります(低栄養状態でリハビリを行っても十分な効果が得られない)。また効果的な栄養摂取のために「口腔機能の維持」が極めて重要となります(口からものを食べることが非常に重要との研究結果あり、関連記事はこちら)。

そこで2024年度介護報酬改定でも、例えば、リハ・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みを推進し、自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から▼通所リハビリの【リハビリマネジメント加算】に新たな区分を設ける▼介護老人福祉施設の【個別機能訓練加算】に新区分を設ける▼介護老人保健施設の【リハビリテーションマネジメント計画書情報加算】、介護医療院の【理学療法、作業療法及び言語聴覚療法】に新たな区分を設ける—などの対応が図られました(関連記事はこちら)。

こうした対応の効果・成果を見るため、2024年度調査では、通所リハビリ事業所、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護を対象に、リハビリ・機能訓練、栄養管理、口腔管理の実施状況、一体的取り組みの実施状況、利用者・退所者の状態(一体的取り組みの効果)を把握します。

なお、この点について松田委員長と小坂委員は「結果の解釈は慎重に行うべきである。死が近づけば誤嚥を繰り返すことが多くなり、口腔からの栄養摂取が困難になる。その結果だけを見て『口腔・栄養に問題あり』と判断することは危険である」と進言しています。



他方、(4)では、人材確保がさらに困難となる状況下で効率的かつ効果的なサービス提供を可能とするための対応、例えば「新たな複合型サービスのニーズ」などの状況を見ます(関連記事はこちらこちらこちら)。

具体的には、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリ、通所介護、通所リハビリ、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、都道府県、市区町村などを対象に「サービス実施状況、事業所の収支・効率性、利用者・職員の確保、地域や他の事業所等との連携状況」などを調査します。この中で「どういったサービスとどういったサービスの併用が多いのか」、「どういったサービスとどういったサービスの併用が効率的なのか」などを探っていくイメージです。

ただし、委員からは「人材確保の調査と効率的なサービス提供に関する調査とは分けて実施した方が良いのではないか。また複数サービスの連携という視点ではケアマネ調査が極めて重要である。また最初から複数のサービスを利用する方は少なく、時間の経過とともに要介護度が悪化して複数サービスを併用するようになる。そうした時間軸を意識した調査研究も進めるべき」(川越雅弘委員:埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科兼研究開発センター教授、藤野善久委員:産業医科大学産業生態科学研究所教授)、「老健施設や介護医療院も調査対象に加えるべきではないか。在宅復帰機能を強化した老健施設などは、看護小規模多機能型居宅介護と類似の機能を持っていると言える」(今村知明委員:奈良県立医科大学教授、松田委員長)など様々な意見が出されています。



こうした意見を参考に、具体的な調査内容を詰めていきますが、例えば「時間軸を意識した調査研究」などは、「介護報酬改定の効果を見る調査」(基本的に単年度調査)では困難であり、長期間・同一人物をターゲットにした別の調査研究などを行う必要があります。

専門家である委員からすれば、どうしても「あれも調べてほしい、これを調べなければ実態が見えてこない。こうした調査の方が重要である」と考えがちですが、上記の4調査は、あくまで「2024年度介護報酬改定の効果・影響を見る調査にすぎない」点を忘れはいけません。1つの調査で「すべてを明らかにする」ことはできません。●●を明らかにするには「改定の効果検証調査」が適している、◆◆を明らかにするには「ターゲットを絞った老健事業の研究調査」が適している、など、調査にも得手不得手があり、そうした点も勘案しながら、今後、具体的な調査内容を詰めていきます。

3月には介護給付費分科会が開かれ、そこで改めて調査内容を決定。その後、9月頃に調査実施、来年(2025年)3月頃に調査結果報告を行うというスケジュールで調査が進められます。

24年度検証調査のスケジュール(介護報酬改定検証・研究委員会2 240228)



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