Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

食べ物を飲み込む際の「喉の刺激」によりサイロキシン・カルシトニン分泌が活性化され、心身の健康が高まる—都健康長寿医療センター

2022.10.12.(水)

「食べ物を飲み込むときに、喉からの情報によって甲状腺につながる副交感神経が活性化する反射が起こり、健康にとって重要なホルモンであるサイロキシンとカルシトニンの分泌が高まる。「口から栄養を摂取する」ことの重要性が科学的にも確認された—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が10月3日に研究トピックス「食べ物を飲み込むときに甲状腺からのホルモン分泌が増える」を公表し、こうした点を強調しました(研究所のサイトはこちら)。

食べ物を飲み込む際の「喉が刺激」により健康に重要なホルモンの分泌が促進される

医療分野・介護分野にいずれにおいても「口腔・栄養・リハビリの一体的提供」が重視されてきています(関連記事はこちらこちらこちら)。

高齢者にとどまらず、人間にとって「栄養」が重要なことは言わずもがなです。その際、「口から栄養を摂取する」ことが非常に重要で、「口腔機能」や「嚥下機能・摂食機能」に問題があれば、これが難しくなるため、「歯科医師や歯科衛生士による口腔機能管理」「リハビリ専門職による嚥下・摂食機能訓練」が同時に重要になってくると説明されています。た、これらは「高齢者に多い誤嚥性肺炎」(→これを契機に要介護状態に陥るケースも少なくない)を防止することにもつながります。

では、なぜ「口から栄養を摂取する」ことが重要なのでしょう?「栄養補給」だけが目的であれば、「胃瘻」などでも良いはずです。

この点、研究所の堀田晴美研究部長は「飲み込むときに喉が刺激されると、甲状腺から健康に大事なホルモンが分泌される」ことを発見しました。

甲状腺からは、全身の代謝を調節するホルモンである▼サイロキシン(全身の細胞に働いて代謝を活発化する。サイロキシン不足は冷え性やうつ症状を伴う甲状腺機能低下症を招き、ときに認知症に間違えられることもある)▼カルシトニン(骨を丈夫にしたり、痛みを和らげる作用を持つ)―が分泌されます。

甲状腺からのホルモンの分泌は、▼血液により運ばれてくる化学物質▼自律神経(交感神経と副交感神経の反対の作用をもつ2つの神経のバランスが重要)―の2方向でコントロールされます。

従前より知られていた仕組み



この点、ラット(ネズミ)を用いた実験で「甲状腺につながる副交感神経を電気刺激で活性化すると、甲状腺からのサイロキシンとカルシトニンの分泌が2―3倍に増加する」ことが確認されました。

さらに、ラットを用いて「やわらかいバルーンを口から喉に出し入れした」(食べ物を飲み込む際の刺激に相当する)場合、甲状腺からのサイロキシンとカルシトニンの分泌が約2倍に増加することも分かりました。「喉のどに物が触れたことを脳に伝える神経が刺激され、甲状腺につながる副交感神経が活性化する」ことでホルモン分泌が活性化するものです。

新たに判明した仕組み



こうした研究結果を踏まえ、堀田研究部長は「食べ物を飲み込むときに、喉からの情報によって甲状腺につながる副交感神経が活性化する反射が起こり、健康にとって重要なホルモンであるサイロキシンとカルシトニンの分泌が高まる」と結論づけています。サイロキシンの分泌量増大により「全身の細胞の代謝が高まり、精神機能も活性化」する、カルシトニンの分泌量増大により「骨が強くなる」のです。

食べ物を飲み込む際の「喉の刺激」が、健康にとって極めて重要である



冒頭に述べた「口腔・栄養・リハビリの一体的推進」の科学的根拠が明らかになることで、こうした取り組みがさらに進むことに期待が集まります。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

口腔状態に問題ある高齢者は要介護や死亡リスクが2倍超、地域で「オーラルフレイル改善」の取り組み強化を—都健康長寿医療センター
コロナ禍で「要介護1・2高齢者等を介護する家族」の介護負担が増し、メンタルヘルス不調を来す—都健康長寿医療センター
DHAやEPA、ARAを十分に摂取することで「認知機能を維持できる」可能性—長寿医療研究センター
「ゆっくりとした歩行」「軽い家事活動」などの低強度身体活動も、脳機能の維持に有用—長寿医療研究センター
治療抵抗性の前立腺がん、新治療法として「RNA分解酵素を標的とする薬剤」に期待—都健康長寿医療センター
男女ともビタミンC摂取不足で筋肉量・身体能力が低下するが、適切な摂取で回復可能—都健康長寿医療センター
自治体と研究機関が協働し「地域住民の健康水準アップ」を目指すことが重要—都健康長寿医療センター
日本人特有の「レビー小体型認知症の原因遺伝子」を解明、治療法・予防法開発に繋がると期待—長寿医療研究センター
日本人高齢者、寿命の延伸に伴い身体機能だけでなく「認知機能も向上」—長寿医療研究センター
フレイル予防・改善のため「運動する」「頭を使う」「社会参加する」など多様な日常行動の実施を—都健康長寿医療センター
「要介護度が低い=家族介護負担が小さい」わけではない、家族介護者の負担・ストレスに留意を—都健康長寿医療センター
奥歯を失うと、脳の老化が進む—長寿医療研究センター
介護予防のために身体活動・多様な食品摂取・社会交流の「組み合わせ」が重要—都健康長寿医療センター
高齢男性の「コロナ禍での社会的孤立」が大幅増、コロナ禍で孤立した者は孤独感・コロナへの恐怖感がとくに強い—都健康長寿医療センター
中等度以上の認知症患者は「退院直後の再入院」リスク高い、入院時・前から再入院予防策を—都健康長寿医療センター
AI(人工知能)用いて「顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性—都健康長寿医療センター
認知症高齢者が新型コロナに罹患した場合の感染対策・ケアのマニュアルを作成—都健康長寿医療センター
地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなる、交流減少や町内会活動不参加は危険信号―都健康長寿医療センター
新型コロナ感染防止策をとって「通いの場」を開催し、地域高齢者の心身の健康確保を―長寿医療研究センター
居住形態でなく、社会的ネットワークの低さが身体機能低下や抑うつ等のリスク高める―都健康長寿医療センター
孤立と閉じこもり傾向の重複で、高齢者の死亡率は2倍超に上昇―健康長寿医療センター
新型コロナの影響で高齢者の身体活動は3割減、ウォーキングや屋内での運動実施が重要―長寿医療研究センター