DHAやEPA、ARAを十分に摂取することで「認知機能を維持できる」可能性—長寿医療研究センター
2022.8.24.(水)
魚介類などに多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ARA)の摂取量が多いと「認知機能に関わる側頭皮質や前頭皮質などの局所脳体積の減少が抑制される」可能性がある(認知機能を維持できる可能性がある)—。
国立長寿医療研究センターは8月24日に、こうした研究結果を公表しました(センターのサイトはこちら)。
DHAなどが不足すると脳体積の減少し、認知機能が低下することが知られている
近年の欧米における研究では、次のような点が明らかになってきています。
▽加齢により脳内のリン脂質が減少するが、主成分であるDHAやARAを補うことで「作業記憶などの認知機能が維持される」可能性がある
▽「脳体積の減少」→「認知機能の低下」が注目され、さらに「DHAやEPAの摂取」が「脳体積維持」に関係している可能性がある
ここから、「DHAなどが不足する」→「脳体積が減少する」→「認知機能が低下する」という点が、逆に「DHAなどを十分に摂取する」→「脳体積が維持される」→「認知機能も維持できる」という可能性を伺うことができそうです。
ただし、これらの研究は「魚介類の摂取が少ない欧米諸国」で行われており(食事からのDHAやEPAの摂取量が多い日本などの国での研究報告はない)、また「ARA(アラキドン酸)の摂取量と脳体積に着目した研究」は行われていません。
そこで、長寿医療研究センター老化疫学研究部の大塚礼部長らの研究グループが、サントリーウエルネス社と共同し、日本人高齢者(60-89歳の男女810名)、において、「多価不飽和脂肪酸(DHA、EPA、ARA)の摂取量」が脳体積とどういった関係があるのかを調査分析。そこから、次のような点が明らかになりました。
▽ARAの摂取量が多いと、前頭皮質の体積変化量の減少が小さく、認知機能低下のリスクも低い
▽DHAやEPAの摂取が多いと、側頭皮質の体積変化量の減少が小さい
研究グループでは「本結果は、魚介類の摂取が少ない国からの報告と同じ傾向を示しており、『DHA、EPA、ARAの摂取は、加齢に伴う局所脳体積の減少を抑制し、高齢者の脳の健康の維持につながる』可能性がある」と結論付けています。
今後も観察研究を継続し、日本人における「多価不飽和脂肪酸」(DHA、EPA、ARA)と「脳体積変化」との関係性がより明確になることに期待が集まります。
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