Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

フレイル予防・改善のため「運動する」「頭を使う」「社会参加する」など多様な日常行動の実施を—都健康長寿医療センター

2022.6.3.(金)

要介護状態の入り口ともなるフレイル(加齢に伴い抵抗力が弱まり、体力が低下した状態)であるが、「運動する」「頭を使う」「社会参加する」など多様な日常行動の実施により、予防することも、改善することも可能である―。

兵庫県養父市の高齢者を対象にした追跡調査では、調査開始時点でフレイルであった人のうち、15%が「5年という長期間経過後に非フレイルに改善した」ことが分かった。多様な日常行動が非常に重要である—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が6月1日に、研究トピックス「フレイルの予防・改善に寄与する日常行動を探る」を公表し、こうした考えを明らかにしました(研究所のサイトはこちら)。

身体能力等の低下が進む高齢者でも、多様な日常行動により「フレイルの改善」が可能

フレイルとは「加齢に伴い抵抗力が弱まり、体力が低下した状態」や「自立喪失(介護が必要な状態や死亡)のリスクが高まっている状態」などと定義されます。地域に在住する高齢者を対象とした先行研究の結果を概括すると「おおよそ10-20%がフレイルである」ことがわかっています。

自立→フレイル→要介護状態と進んでいきますが、適切な支援・介入により「フレイル→自立」と回復することも可能です。このため「フレイルの予防・改善を目的とした介入プログラム」が極めて重要です。例えば、▼運動面のアプローチ(適度な運動習慣の重要性は述べるまでもない、関連記事はこちら)▼栄養面のアプローチ(十分な栄養摂取の必要性も述べるまでもない、関連記事はこちら)▼社会面へのアプローチ(他者との関わりが極めて重要との研究結果も多数ある、、関連記事はこちら)▼知的活動(いわゆる脳トレや読書など)の実施—などが推奨されており、その成果も多数報告されています。具体的には、「一定の強度で運動を行ったり、特定の栄養素の摂取を追加することなどでフレイルの予防・改善効果が得られる」ことが分かってきています。

一方、「どのような『日常行動』が長期的にみてフレイル予防につながるのか、フレイルから非フレイルな状態への改善に寄与するのか」についての知見は不十分です。

そこで都健康長寿医療センター研究所認知症未来社会創造センターの阿部巧研究員らの研究グループは、農作業が盛んな兵庫県養父市に在住する65歳以上高齢者(男女3769名)を5年間追跡し「日常行動(農作業、買い物、運動、食事、知的活動、社会参加、喫煙の7項目)とフレイルの変化(非フレイル→フレイルへの進行、フレイル→非フレイルへの改善)との関連性」を調査。その結果、次のような点が明らかになりました。

▽初回調査時に非フレイルであった高齢者は全体の70%で、うち5年後にフレイルになった人は17%、自立喪失(要介護状態や死亡)者は14%

▽初回調査時にフレイルであった高齢者は全体の30%で、うち5年後に非フレイルに改善した者は15%、自立喪失者は50%であった

フレイル状態の高齢者であっても、多様な日常行動の継続により、5年という長期間経過後に「非フレイルに改善する」者の割合が15%にもなる(都健康長寿医療センター研究所1 220601)



▽フレイルの「予防」に寄与していた日常行動は、▼農作業▼運動習慣▼知的活動▼社会参加—であった

フレイル予防因子としては、農作業・運動・知的活動・社会参加などが浮上(都健康長寿医療センター研究所2 220601)



▽フレイルの「改善」に寄与していた日常行動は、▼農作業▼知的活動▼社会参加—であった

フレイル改善因子としては、農作業・知的活動・社会参加などが浮上(都健康長寿医療センター研究所3 220601)



今般の研究結果、先行研究をあわせると、「フレイルを防ぐには『多様な健康行動』が求められる」ことがわかります。身体機能に着目する場合は身体的フレイル、認知機能も考慮する場合には認知的フレイル、社会的側面を捉える場合には社会的フレイルと呼ばれるように、フレイルは「1つの要因で構成されている」わけではありません。研究グループでは、日々の生活の中で▼身体を動かす▼頭を使う▼地域活動やサロンなどへ参加(社会参加)する―ことが「フレイルになりにくくなる(予防できる)」と結論づけています。

また「フレイル→自立・非フレイルへの回復・改善」も可能です。今般の研究でも、フレイルであった高齢者の15%が、5年後に非フレイルに改善しています。一般に加齢とともに身体能力等は低下していくため「5年という長期間経過後」にもかかわらず、15%もが改善していることは衝撃的と受け止めることもできます。研究グループでは「フレイル予防に資する日常行動と同様に、フレイルであっても多様な健康行動を実践することが必要」と提言しています。

ただし、「フレイルになると健康行動を取りづらくなる」という問題もあります(例えば、フレイル高齢者は非フレイル高齢者に比べて交通面での支障が大きく(移動手段の制限が大きい)、公民館や集会施設のような社会活動の拠点となる場所が自宅から遠い場合には、参加が困難である)。このため研究班では「フレイルになっても健康行動を継続できるように支援し、そのための環境整備を進める」ことの重要性も訴えています。



なお新型コロナウイルス感染症の影響で「健康行動を取ることが困難である」ような場合に向けて、都健康長寿医療センターはフレイル予防応援コンテンツを準備し、手軽に始められる▼運動▼栄養▼生活様式—などを動画も交えてわかりやすく解説しています。これらも参考にした取り組みを地域単位で進めることが重要です。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

「要介護度が低い=家族介護負担が小さい」わけではない、家族介護者の負担・ストレスに留意を—都健康長寿医療センター
奥歯を失うと、脳の老化が進む—長寿医療研究センター
介護予防のために身体活動・多様な食品摂取・社会交流の「組み合わせ」が重要—都健康長寿医療センター
高齢男性の「コロナ禍での社会的孤立」が大幅増、コロナ禍で孤立した者は孤独感・コロナへの恐怖感がとくに強い—都健康長寿医療センター
中等度以上の認知症患者は「退院直後の再入院」リスク高い、入院時・前から再入院予防策を—都健康長寿医療センター
AI(人工知能)用いて「顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性—都健康長寿医療センター
認知症高齢者が新型コロナに罹患した場合の感染対策・ケアのマニュアルを作成—都健康長寿医療センター
地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなる、交流減少や町内会活動不参加は危険信号―都健康長寿医療センター
新型コロナ感染防止策をとって「通いの場」を開催し、地域高齢者の心身の健康確保を―長寿医療研究センター
居住形態でなく、社会的ネットワークの低さが身体機能低下や抑うつ等のリスク高める―都健康長寿医療センター
孤立と閉じこもり傾向の重複で、高齢者の死亡率は2倍超に上昇―健康長寿医療センター
新型コロナの影響で高齢者の身体活動は3割減、ウォーキングや屋内での運動実施が重要―長寿医療研究センター