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AI(人工知能)用いて「顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性—都健康長寿医療センター

2021.1.29.(金)

従前から、顔で判断する【見た目年齢】が「認知機能」と強い相関を示すことが知られており、これを一歩進め「AI(人工知能)を用いて、顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性が明らかになった—。

こういった研究結果を、東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が1月27日に公表しました(東京都健康長寿医療センター研究所のサイトはこちら)。

簡便かつ迅速に認知症を鑑別できれば、早期に適切な医療・介護サービスにつなげられる

高齢化の進行に伴い、認知症患者も増加しています。2018年には認知症患者数は500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」となっています。こうした状況を重く見た政府は、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を取りまとめました。そこでは、「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています。

認知症に対する医療・介護等サービスに関しては、何よりも「早期発見・早期対応」が重要です。認知機能低下が生じている人を可能な限り早期に発見、原因疾患等の鑑別などを行ったうえで、適切な医療・介護サービスの提供につなげることで、進行の抑制・社会生活の維持などが可能になります。

認知症の確定診断を行うためには、例えば▼アミロイドPET検査(アルツハイマー型認知症の原因とされるβアミロイドの蓄積状況をPET(Positron Emission Tomography)装置を用いて測定する検査法)▼脳脊髄液検査(脳脊髄液を採取し、βアミロイドを測定する検査法)―があります。しかし、前者については「保険適用されておらず非常に高額である(自由診療であり、医療機関等で費用が異なるが一般に数十万円)」という、後者については「保険適用されている(D004【穿刺液・採取液検査】の「12 タウ蛋白(髄液)」(622点)、「13 リン酸化タウ蛋白(髄液)」(641点))が、人体への侵襲性がある(腰椎に穿刺針を刺し、髄液を採取する)」などの課題もあります。

この点、東京都健康長寿医療センター・放射線診断科の亀山征史医長と東京大学医学部附属病院・老年病科の秋下雅弘教授、亀山祐美助教らのグループが、「AI(人工知能)を活用して【認知機能の低下した患者】と【健常者】とを顔写真で見分けることができる」ことを世界で初めて確認したことが報告されました。



これまでにも、「顔で判断する【見た目年齢】が余命、動脈硬化、骨粗鬆症の指標となる」ことが知られており、東大医学部附属病院・老年病科の研究では「【見た目年齢】が【暦年齢】よりも認知機能と強い相関を示す」ことを明らかにしています。

本研究では、これを一歩進め、「認知機能低下を示す人」グループ(121名)と「正常な人」グループ(117名)について、いくつかのAI(人工知能)が「顔写真を用いて弁別できるか」を調査。もっとも優れた成績を示したAIモデルでは、▼感度(認知機能低下者を「認知機能が低下している」と判断できた割合):87.31%▼特異度(認知機能が低下していない者を「正常」と判断できた割合):94.57%▼正答率92.56%―と「極めて高い弁別能」が示されました。

このほか、次のような研究結果も示されています。

▽AIモデルが算出するスコアは、「年齢」よりも「認知機能」のスコアに有意に強い相関を示した

AI(人工知能)を用いて「顔写真で認知症を鑑別できる」可能性(都健康長寿医療センター 210127)



▽年齢で2つのグループに分けて解析したところ、どちらの群でも良好な成績を収めている(「被験者の年齢」の影響は小さい)

▽顔を上下で分けて解析したところ、どちらも良い成績であったが、「顔の下半分」のほうがやや成績が良い(より認知症患者を弁別できる)



都健康長寿医療センターでは、「より多くの顔写真を集めてAIに学習させることで、将来的に『AIを用いて顔で認知機能低下をスクリーニングできる』にようなる」可能性を指摘しています。侵襲なく、迅速に、かつ低費用で「認知症の診断」を一定程度行うことができるようになれば、より早期に、適切な医療・介護サービスにつなげることが可能となります。まさに認知症施策推進大綱に掲げる「認知症の人との共生」に向けた、非常に重要な研究結果と言えます。



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