コロナ禍で「要介護1・2高齢者等を介護する家族」の介護負担が増し、メンタルヘルス不調を来す—都健康長寿医療センター
2022.8.31.(水)
要介護1・2の高齢者等では、コロナ禍において「感染を恐れ、サービスの利用・提供を控える」→「家族介護が増加する」→「家族介護者の負担が増す」→「家族介護者がメンタルヘルスに不調を来す」ケースが少なくない—。
長引くコロナ禍で、「家族介護者の介護負担軽減とメンタルヘルス不調者への対策」を早急に講じる必要性がある—。
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が8月25日に、「コロナ禍の介護負担感の増加により、家族介護者のメンタルヘルス不調のリスクは1.9倍高くなる」旨を公表し、こうした点を強く訴えてます(研究所のサイトはこちら)。
家族介護者の介護負担軽減とメンタルヘルス不調者への対策」を早急に講じよ
2020年初めから世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、我が国は現在「第7波」に包み込まれています。そうした中で「コロナ感染症に伴うメンタルヘルス不調」が世界中で問題となり、とりわけ「コロナ感染症の影響で介護サービス利用が制限され、介護者の負担が増し、メンタルヘルスに深刻な問題が出ている」ことが分かっています。
研究所の「社会参加と地域保健研究チーム」の村山洋史研究副部長らのチームは、家族等の介護をしている者(以下、家族介護者)1920名を対象に、▼コロナ禍の介護負担変化▼介護負担増加とメンタルヘルス不調の関連—を調査。そこから、次のような状況が明らかになりました。
▽半数超(56.7%)の家族介護者が「介護負担が増加した」と報告している(コロナ流行前の2020年1月以前と、コロナ禍の2020年8-9月とで、自分にとっての介護負担が増えたと「たまに思う」「時々思う」「よく思う」「いつも思う」とした回答者をカウント)
▽人口学的変数、社会経済的変数、健康関連変数、介護者・被介護者関連変数の影響を統計学的に取り除いても、「コロナ禍で介護負担が増加した者」(上記)では、そうでない者と比べて、メンタルヘルス不調となるリスクが1.9倍高い
▽被介護者(介護される高齢家族等)の要介護度が「認定なし」→「要支援」→「要介護1・2」と高くなるほど、介護者のメンタルヘルス不調の度合いが上がる(要介護度1・2では全体の3.8倍)
▽しかし、重度の要介護者(要介護3-5)では介護負担増加とメンタルヘルス不調との関連は見らない
ここから、「要介護度1・2 の者の利用が多い通所サービス等は、コロナ禍で様々な制限を受けており、コロナ前と介護の状況が変化。この変化が、家族介護者の介護負担増加とメンタルヘルス不調との関連に悪影響を及ぼした」と分析しています。
要介護状態であるものの「軽度者」に位置づけられる要介護1・2の高齢者等では、コロナ禍において「感染を恐れ、サービスの利用・提供を控える」→「家族介護が増加する」→「家族介護者の負担が増す」→「家族介護者がメンタルヘルスに不調を来す」ケースが少なくないと考えられます。
一方、「重度者」では、家族介護には限界があるため、「コロナ禍でも介護保険サービスの利用・提供を継続する」→「家族介護者の負担はコロナ前とそれほど変わらない」→「メンタルヘルスの不調度合も、コロナ禍前と大きく変わらない」と推測できます。
こうした結果を踏まえ、村山研究副部長らのチームでは、「既存の制度・サービスだけでは、コロナ禍での介護負担増・メンタルヘルス不調防止には不十分であった可能性がある。長引くコロナ禍において『家族介護者の介護負担軽減とメンタルヘルス不調者への対策を早急に講じる』必要性がある」と提言しています。
長引くコロナ感染症はもちろん、今後も発生すると予測される新興感染症への対策の中で「家族介護者の負担軽減策」も重要な検討テーマの1つとなりそうです。
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