特定施設入居者生活介護の医療対応力・看取り対応力強化のために、どのような方策が考えられるのか—社保審・介護給付費分科会(5)
2023.8.10.(木)
有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設入居者生活介護は、要介護高齢者が進む中で非常に重要な役割を果たしていますが、必ずしも医療対応力・看取り対応力が十分でないという課題もあり、これにどう対応していくかを総合的に検討する必要がある—。
8月7日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こうした議論も行われました(同日の高齢者施設・医療機関の情報連携、感染対応強化などに関する議論の記事はこちら、介護医療院に関する議論の記事はこちら、介護老人保健施設に関する議論の記事はこちら、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に関する議論の記事はこちら)。
看護配置強化、外部訪問看護の利活用などが思い浮かぶが・・・
2024年度の介護報酬改定論議が介護給付費分科会で進んでいます。
【介護給付費分科会】
▽特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
▽介護老人保健施設
▽介護医療院
▽高齢者施設・医療機関の情報連携、感染対応強化など
▽居宅介護支援(ケアマネジメント)、訪問介護、訪問入浴介護、居宅療養管理指導通所リハビリ、短期入所生活介護、短期入所療養介護、福祉用具・住宅改修
▽訪問看護、訪問リハビリ
▽通所リハビリ、短期入所生活介護、短期入所療養介護
▽通所介護、認知症対応型通所介護、療養通所介護
▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型 共同生活介護
▽スケジュール等
ICT・ロボット活用等
【介護給付費分科会と中央社会保険医療協議会との意見交換会】
▽ACP等
訪問看護等
身体拘束ゼロ等
施設での医療、認知症等
要介護高齢者の急性期入院医療、リハ・口腔・栄養の一体的推進等
特定施設入居者生活介護には▼有料老人ホーム(基準をクリアしたサービス付き高齢者向け住宅も含まれる)▼軽費老人ホーム(ケアハウス)▼養護老人ホーム—が含まれ、高齢化が進展し、要介護高齢者が増加する中では、看取り対応を含めて、「施設サービス(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院)」の代替機能的・重要な役割を果たしており、利用者・施設数とも増加してきています。
この特定施設においても、医療ニーズを併せ持つ要介護高齢者の入居が増える中で、「医療提供をどう確保するか」、関連して「看取りにどう適切に対応するか」などが非常に重要な検討テーマとなっています。
しかし、特定施設からの退所は「死亡」が最も多いが、「病院・診療所等への退所」(医療機関への入院)も多い現状を見ると、「必ずしも十分には医療提供はなされていない」「看護配置がなされ、軽微な医療ニーズには対応できるが、少し難しい内容になれば救急搬送などしてしまう」(医療対応が充実してきてはいない」といった状況が推測されます。
また、看取りも相当程度行われていますが、「対応が難しい医療処置がある」「夜間は看護職員がいない」ために十分に進んでいないという面もあります。
この背景には、特定施設には医師配置がなされておらず外来・在宅医療などは医療保険給付となるが、看護師は配置されているため「一部(末期がん対応など)を除き、介護にかかる費用は介護保険給付となる」という点があるようです。
委員からは「看護職員配置の強化、あるいは地域の訪問看護ステーションの介入を可能とするなどの対応が必要ではないか」(田母神裕実委員:日本看護協会常任理事)、「医療ニーズを抱える要介護高齢者が増加する中で、看取り対応力など強化する現実的対応が必要となる」(小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、「利用者・家族等が希望した場合、外部サービス(訪問看護など)を受けられるような仕組みを検討すべきではないか」(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)、「特定施設の利益率は低く、現行報酬では看護職員の加配は非現実的であり、また看護配置がなされていることから、外部訪問看護の導入なども制度的に困難であろう。夜間の医療対応力強化に向けて何が実施可能なのかをじっくりと探り、対応する必要がある」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)などの意見が出ています。
医療対応力強化のためには、まず「看護配置の強化」と「外部看護サービス等の導入」が思い浮かびます。後者については、江澤委員の指摘するように「すでに看護配置がなされている特定施設への訪問看護を認めれば、二重対応になってしまう」という問題点があります。また、前者の看護配置強化を行うためには「報酬上の対応」(基本報酬の引き上げや加算新設など)が必要となります。
どのような対応が現実的であるのか、秋以降に具体的に探っていくことになります。
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