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2024年度介護報酬改定、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハは6月施行、他は4月施行に分断—社保審・介護給付費分科会(1)

2023.12.18.(月)

12月18日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会で、2024年度介護報酬改定に向けた審議報告(改定内容の大枠)が固められました。今後、介護報酬改定率なども踏まえて、年明けに具体的な改定内容を詰めていきます。

●審議報告案はこちら(田辺国昭分科会長:国立社会保障・人口問題研究所所長と、厚労省で最終調整・確定を行うため、文言は修正される可能性がある)



また改定内容の施行時期について「介護保険事業(支援)計画と揃えるために4月とする」べきか、「医療介護連携を重視して6月とする」べきかが検討されてきました。この点について厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長は▼医療との関連が深い居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハの4サービスは、診療報酬と合わせて6月施行とする▼他のサービスは介護保険事業(支援)計画と揃えて4月施行とする—方針を明らかにしました。「施行時期がずれることで医療・介護連携、介護間連携が阻害されてしまわないか」「区分支給限度基準額の中でケアプランを立てる介護支援専門員(ケアマネジャー)の負担が極めて重くなるのではないか」などが心配されます。

居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハは6月施行、他は4月施行

Gem Medで報じているとおり、2024年度介護報酬改定論議が佳境に入っています。12月11日には、これまでの論議を総括した「審議報告案」が古元老人保健課長から示されました。例えば「介護保険施設などに、在宅医療等を行う医療機関との協力関係構築を義務づける」「見守り機器導入などの先駆的取り組みを行う特定施設について、人員配置の柔軟化を行う」「認知症の心理・行動症状(BPSD)発現を防止するような取り組みを行う事業所を、新加算で評価する」など、具体的な改定方針を明らかにするものです(医療・介護連携に関する記事はこちら、生産性向上等に関する記事はこちら、認知症対応、リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的推進に関する記事はこちら、感染症・看取り対応力の強化、LIFEの利活用推進に関する記事はこちら、制度の持続可能性確保等に関する記事はこちら)。

12月18日の会合では、委員の意見を踏まえた修正版が新たに示され、これを了承。本稿では「修正部分」を中心に眺めるとともに、古元老人保健課長から口頭発表された「2024年度改定の施行時期」を報じます。また審議報告では、2027年度以降の介護報酬改定に向けた宿題事項も示されており、そちれらは別稿で報じます。



まず「2024年度改定の施行時期」について見てみましょう。

これまでに、2024年度改定内容の施行を▼4月とすべきか▼6月とすべきか—が議論されてきました。

「6月施行」案には、「診療報酬と足並みを揃える」という大きな意味があります。医療介護連携を進めるためには、報酬上の手当ても揃えることが重要なためです(例えば医療・介護間の情報連携を進めるには、医療側・介護側の双方の報酬で手当てをすることが重要である)。

Gem Medでも報じているとおり、2024年度の診療報酬改定から「施行時期を6月に後ろ倒しする」方針が固められています(薬価のみこれまでどおり4月施行、いわゆる「診療報酬改定DX」の一環)。「診療報酬点数・施設基準の見直しに伴い、改定時期(2月上旬の答申から5月の初回請求頃)には医療機関等やベンダのレセコン等システム改修負担が非常に重くなっている」現状を踏まえ、施行を2か月遅らせ医療機関等やベンダの負担平準化を狙うものです。

診療報酬改定の実施を「6月1日」に後ろ倒しする案を中医協として了解した(中医協総会(1)1 230802)



介護報酬についても6月施行とすることで、▼介護施設・事業所、ベンダの負担平準化が可能となる▼訪問看護や居宅療養管理指導に代表される「診療報酬・介護報酬の両方を請求している事業所」において、改定対応負担の軽減が期待される▼利用者・家族の混乱度合を軽減できる—といったメリットがあります。2024年度は診療報酬・介護報酬等の同時改定が行われるため、改定時期を揃えることでこうしたメリットが大きくなり、逆に「診療報酬は4月施行、介護報酬は6月施行」とすれば、現場の負担が増してしまう、改定の効果が薄れてしまうことになります。

医療保険・介護保険の給付調整例(社保審・介護給付費分科会(1)3 231011)

医療保険・介護保険の給付調整イメージ(社保審・介護給付費分科会(1)4 231011)

訪問看護の概要(社保審・介護給付費分科会(1)5 231011)

医療・介護の訪問看護利用者イメージ(社保審・介護給付費分科会(1)6 231011)

居宅療養管理指導の概要(社保審・介護給付費分科会(1)7 231011)



一方で、6月施行とした場合には、▼介護保険事業計画(市町村)・介護保険事業支援計画(都道府県)とのミスマッチが生じる▼物価・エネルギー費・人件費など高騰への対応が遅れてしまう—というデメリットがあります。また介護報酬では、「診療報酬改定と比較して情報システム関連業務の負担感が小さく、一部のケースを除いて、改定時にベンダ職員が現地で改修ソフトの適用作業を実施することはない」との指摘もあります。

2024年4月から第9期介護保険事業(支援)計画が始まる(社保審・介護給付費分科会(1)2 231011)

医療保険・介護保険の給付調整例(社保審・介護給付費分科会(1)3 231011)



このように、4月施行・6月施行のいずれにも一長一短があり、政府で検討が進められてきました。

この点について古元老人保健課長は、次のような方針を口頭で説明しています。

▽医療との関連が深い居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハの4サービスは、診療報酬と合わせて6月施行とする

▽他のサービスは介護保険事業(支援)計画と揃えて4月施行とする



サービス種類ごとの特性や上述のメリット・デメリットを総合的に勘案したものですが、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「医療介護連携の重要性が指摘される中で、診療報酬と介護報酬の施行時期が分断されることは非常に残念である。診療報酬・介護報酬の『給付調整』が様々あり、現場では想定外の混乱・トラブルが生じることが想定される。国と自治体とが連携し、現場に支障が生じないような丁寧な対応をとってほしい。また、通所リハビリや訪問リハビリなど施行が2か月遅れるサービスでは、その分、報酬を上乗せすべきである。6年後の2030年度改定では、診療報酬・介護報酬の施行時期をきちんと揃える必要がある」と強く指摘しています。

これに対し厚労省老健局の間隆一郎局長は「医療介護連携などを重視した改定論議が進んでいる。そのうえで保険者(市町村)の実務や介護事業所・施設の経営状況なども踏まえて、施行時期を設定した。6年後の同時改定では、診療報酬改定DXの状況もみながら、施行時期を揃えることも検討していきたい」と述べ、理解を求めました。

上述のように、介護保険制度は、市町村の作成する介護保険事業計画・都道府県の作成する介護保険事業支援計画に沿って運営されます。両計画には「3年の事業計画期間におけるサービス整備量、保険料など」を記載し、介護報酬はこれらのベースとなります。例えば、「地域の高齢化率を踏まえれば訪問介護を●か所増設することが必要である。介護報酬で●●単位が設定されており、増設で必要となる費用を賄うためには、保険料を◆◆円に引き上げなければならない」と検討していくイメージです。

その際、介護報酬改定の施行時期が6月となれば、2024-27年度の第9期計画では「2024年4-5月の報酬」と「2024年6月-2027年3月の報酬」とが混在し、保険料設定などが非常に複雑になってしまう、といった弊害が生じてしまいます。

また、物価・人件費等が高騰し、介護事業所経営が極めて厳しくなっている状況下で、「プラス改定を一刻も早く行ってほしい」との現場の極めて切実な思いもあります。

その一方で、居宅療養管理指導(医療機関や薬局からの介護サービス提供)・訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリは、とりわけ「医療との密接な関連」があることから、診療報酬・介護報酬の施行時期がずれた場合には、大きな負担が生じてしまいます(例えば医療機関であれば、4月に介護報酬改定に対応するレセコン改修、6月に診療報酬改定に対応するレセコン改修という大きな負担が生じる)。

こうした状況を総合勘案し、やむなく上記のような分断して対応することとするものです。



もっとも、介護サービス間でも施行時期が分断されるため、「訪問介護と訪問看護」など4月施行サービスと6月施行サービスを組み合わせて受給するケースなどでは、区分支給限度基準額の中で「4-5月分のサービス」と「6月以降のサービス」とを調整するケアマネジャーの負担が非常に重くなると考えられます。

また、処遇改善加算について「6月施行サービスはどのように対応するのか」なども気になるところです。

今後、施行時期の見直しに伴う影響などを想定しながら、細部の調整が進められます。

一部の特定施設での人員基準緩和、利用者満足度・介護職員心理負担が悪化した場合には認めず

次に、審議報告について「12月11日の内容」から大きく変更された部分を見てみましょう。

まず注目されるのは「見守り機器導入など先駆的な取り組みを行う特定施設での人員配置基準緩和」です。

介護人材確保が深刻化する中では、効率的なサービス提供が必須となるため、▼見守り機器等を原則、すべての利用者に導入する▼3か月以上の試行事業において「安全対策」「介護サービスの質の確保」「職員の負担軽減」を確認する—ことなどを条件に、通常「利用者3人に1人の看護・介護配置」が求められるところ、「利用者人に0.9人の看護・介護配置まで緩和する」(=3.3対1)ことを認めるものです。

このうち「介護サービスの質の確保」「職員の負担軽減」については、12月11日には厚労省から次のような考え方が示されていました(関連記事はこちら)。

▽「介護サービスの質確保」に関しては、試行前後で▼介護職員の総業務時間に占める「利用者ケア時間の割合」が増加している▼利用者の満足度等に係る指標(WHOのQOL評価指標など)において著しい悪化が見られない—ことを確認する

▽「職員の負担軽減」に関しては、試行前後で▼総業務時間・当該時間に含まれる超過勤務時間が短縮している▼介護職員の心理的負担等に係る指標(新しい心理的ストレス反応尺度(SRS-18)など)において著しい悪化が見られない—ことを確認する

しかし、介護給付費分科会委員からは「『著しい悪化』など問題外であり、『悪化』が認められた段階でアウトである。その時点で試行は中断すべきである(当然、人員配置基準柔軟化の申請も不可)」との指摘がなされました。

この指摘を重視し、厚労省は「著しい悪化が見られない」ではなく、より厳格に「悪化が見られない」とする要件を設けています。これにより「サービスの悪化が認められる場合には、人員配置を薄くすることはできない。人員配置を薄くする場合でも、従前と同等以上のサービス水準等を維持しなければならない」という厳しいルールが導かれることになり、委員はこの見直し内容を了承しました。ただし「人員配置見直しの影響の把握・検証をしっかり行ってほしい」(正立斉委員:全国老人クラブ連合会理事・事務局長)、「人員配置を見直し他特定施設では、定期的な状況報告を行うが、タイムラグが生じないような工夫を考えるべき。また利用者の要介護度などを考慮した実施基準なども検討すべき」(田母神裕美委員:日本看護協会常任理事)などの注文もついています。

また、別稿で述べますが、この特定施設の人員配置基準柔軟化に関連して「他サービスでも実証事業を行い、成果を確認できた場合には期中(2027年度介護報酬改定を待たず)でも人員配置基準緩和を行う」との方向性が示されました。委員から出された意見を踏まえた方向性ですが、田母神委員は「期中での人員配置基準緩和の検討は難しい」と、古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)は「例えば特別養護老人ホームでは、特定施設と入所者の特性が全く異なる。人員配置基準緩和は、しっかりとサービス類型ごとの実証事業を行い、成果が十分に確認されてから検討すべき」と述べています。介護人材確保が深刻化する中では「人員配置基準の緩和、柔軟化」は極めて重要な選択肢ですが、一方で「安全性を含めたサービスの質確保、少なくなったスタッフの負担増抑制」も非常に重要な論点となります。今後の実証事業・介護給付費分科会の議論に注目が集まります。



このほか、次のような見直しも行われており、了承されました。

▽居宅介護支援における【入院時情報連携加算】の見直し(在宅要介護者が入院した場合の、ケアマネから医療機関への情報提供を、より早期に(現行は3日以内・7日以内→改定後は当日・3日以内)行う)点について、「事業所の休業日等に配慮した要件設定を行う」ことを明確化する(関連記事はこちら

▽居宅介護支援における【ターミナルケアマネジメント加算】について、「医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した者を対象とする」見直しを行う旨を明確化する(関連記事はこちら

▽介護医療院でのACP指針に沿った意思決定支援について、「入所者全員」ではなく「原則として入所者全員」に行う旨を明確化する(人生の最終段階の医療・ケアを考えたくない入所者等には強制しない)(関連記事はこちら

▽行動・心理症状(BPSD)予防の取り組みを評価する新加算について、▼BPSD予防に資する認知症介護に係る専門的な研修等の修了者を配置し、事業所内でBPSD予防に資するチームケアの指導を実施する▼評価指標を用いてBPSDを評価し、BPSD予防に資するチームケアを提供する▼BPSD予防に資するチームケアに関する計画を作成し、チームケア実施を計画的に評価・見直しし、事例検討等を行う—という要件を明確化する(関連記事はこちら

▽介護保険施設等から他施設・医療機関等への「退所者の栄養情報提供」を評価する新加算について、情報提供相手の職種限定を行わない旨を明確にする(関連記事はこちら

▽新たな【介護職員等処遇改善加算】(現在の3加算を一本化)について、「職員間の賃金配分ルール」は設けないものの、「引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分する」との基本的な考えを明示する(関連記事はこちら



今後、内閣で定められた改定率や「介護医療等の多床室の室料負担」などと合わせて、具体的な単位数設定や要件設定などを詰め、年明けの介護給付費分科会で改定内容の最終決定論議を行うことになります。

なお、審議報告には「2027年度以降の介護報酬改定を見据えた宿題」も整理されており、別稿で報じます。



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