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2024年度以降の診療報酬改定、実施時期を2か月遅らせ「6月1日施行」とする方針を中医協で固める、薬価改定は4月実施を維持

2023.8.2.(水)

診療報酬点数・施設基準の見直しに伴い、改定時期(2月上旬の答申から5月の初回請求頃)には医療機関等やベンダの負担が非常に重くなる。この負担を軽減するために「診療報酬改定時期を遅らせる」ことが考えられるが、一方で「改定の効果検証が十分に行えず、次の診療報酬改定に悪影響が出る」ことも考えられるため、▼診療報酬改定の施行を現在(4月1日施行)から2か月後ろ倒しし「6月1日施行」とする▼ただし、経過措置(例えば重症度、医療・看護必要度見直しなど)については現状どおり「9月末まで」を基本する—。

なお、薬価については、これまでどおり「4月1日施行」を維持する(材料価格改定は診療報酬本体と同じく6月1日に実施する予定)—。

8月2日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした点が了解されました。今後の中医協論議や改定対応などは、この「了解内容」に沿って進められます(答申、告示などの時期は変更されない見込み)。

なお、同日には「小児医療・周産期医療」「薬価制度改革(後発品安定供給など)」「費用対効果評価の見直しに向けた業界意見陳述」も議題に上がっており、別稿で報じます。

医療機関等の「改定対応負担」軽減と、改定内容の早期実施とのバランスを考慮

医療DXの一環として、冒頭に述べた「医療機関等やベンダの負担を平準化する」ことなどを目指す「診療報酬改定DX」論議が進められており、これまでに(1)改定施行時期を後ろ倒しする(2)共通算定モジュール(患者の自己負担等の計算を共通算定モジュールで実施可能とするイメージ)を開発・運用する(3)共通算定マスタ・コードの整備などを進める—などの方向が固められています(関連記事はこちら)。

診療報酬改定DX対応方針

診療報酬改定DXの取り組みスケジュール



2024年度の次期診療報酬改定では、主に(1)の「改定施行時期の後ろ倒し」が実現されます((2)の共通算定モジュールは2024年度改定から試行を行い、2026年度改定で本格導入することになる予定)。

現在の「4月施行」を数か月遅らせることができれば、医療機関等やシステムベンダの負担は相当軽減されます。一方、改定施行時期を遅らせた場合には、当然、新点数の施行が遅れるため、医療機関等の収益や、医療保険財政に影響が出る」(プラス改定の場合には医療機関の収益増が数か月遅れることとなり、マイナス改定の場合には医療保険財政の軽減効果が小さくなってしまう)、「改定の効果が出る時期が遅くなる→結果検証が遅れる→次期改定に向けた十分なデータが集まらない、といった弊害が出る」可能性があります。

この両面(医療機関等の負担軽減、改定内容の早期実施)を考慮し、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は8月2日の中医協総会に次のような方針案を提示しました。(c)の薬価については、改定時期を遅らせた場合に「薬価調査による実勢価格把握が難しくなり、改定スケジュール全体に悪影響が出てしまう」点などが考慮されました。

(a)診療報酬改定の施行を現在(4月1日施行)から2か月後ろ倒しし「6月1日施行」とする(医療機関等の負担軽減を重視)

(b)ただし、経過措置(例えば重症度、医療・看護必要度見直しなど)については現状どおり「9月末まで」を基本する(改定内容の早期実施を重視)

(c)薬価については、現状どおり「4月1日施行」とする(材料価格については(a)の診療報酬本体と同じく6月1日改定予定)

この考え方に反対意見は出されず、中医協として了解がなされました。今後、中医協ではこの了解内容に沿って議論が進められますが、例えば「改定率決定時期」(12月中から下旬)、「答申時期」(2月上旬)、「告示、解釈通知などの発出時期」(3月上旬)に変更はなく、「新たな点数表、施設基準などの適用時期だけが6月1日に後ろ倒しになる」という格好です。

診療報酬改定の実施を「6月1日」に後ろ倒しする案を中医協として了解した(中医協総会(1)1 230802)



なお、中医協委員からは「医療機関等の負担軽減のためには、単に施行時期を遅らせるにとどまらず、例えばベンダによるレセコン・電子カルテ等のシステム改修費を大幅に下げるなど、目に見える形で医療機関等のコストを下げる取り組みが必要となる。あわせて診療報酬改定DXによる医療機関等、患者へのメリットを最大化する取り組みも必要である」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「4月の薬価改定への対応、6月の診療報酬改定への対応と、2度のシステム改修が必要となり、医療機関等の負担がかえって増加しないかも心配である。医療機関等への影響を調査・検証する必要がある」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)などの意見が出ています。

これに対し眞鍋医療課長は「医科・歯科・調剤の各関係者、ベンダとも意見交換を進め、システム改修の負担軽減分を確実に医療機関等に還元できるように求めていく。診療報酬改定DX全体の効果検証をどのように進めていくべきかなども今後検討を進めていく」考えを明らかにしました。例えば検証により「もう少し後ろ倒しした方が良い」などの状況が明確になれば、2026年度の次々期改定に向けて「さらなる後ろ倒し」を検討することもあり得ます。

また医療機関等のシステム改修について厚生労働省では、「4月の薬価改定時には小幅なものとなり(概ね新薬価基準を流し込むにとどまる)、6月には本体の大幅な改定(通常の診療報酬改定対応を行う)を行うことになる。これまでに現場(医療機関等、システムベンダ)から聴取したところによれば、『2度のシステム改修にはなるが、負担感が増大するものではない』ようだ」と見通しています。



薬価を4月に、診療報酬本体を6月に改定するイメージですが、例えば現在の中間年薬価改定における「薬価のみを動かし、診療報酬本体は動かさない」という考えと同様と言えます。例えばDPCについて、▼4・5月については「薬価のみ」が見直され、DPCについて旧基準のツリー図が適用される(4月の薬価改定時に多くの新薬が薬価収載されるが、それに伴う分岐見直しなどは4・5月には行われない)▼6月1日から、新薬等を踏まえた「新たなツリー図」が適用される—といった大まかなイメージが想定されますが、詳細は今後、詰められます。



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