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GemMed塾 看護モニタリング

一部に「歪んだオンライン診療」、適切な形でのオンライン診療推進を目指せ!D to P with Nの量・質の拡充を―入院・外来医療分科会(4)

2023.7.24.(月)

オンライン診療の実施状況を見ると、一部に「ゆがんだ形で始まってしまっている」可能性が伺える。2024年度の次期診療報酬改定に向けて「適切な形でオンライン診療を進める」方策を目指していくべきである—。

オンライン診療の問題点を解消する、いわゆる「D to P with N」について、まず「量の拡大」を図り、次いで「質の向上」を目指していくべきである—。

7月20日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、こういった議論も行われています(同日の「がん化学療法の外来移行」に関する記事はこちら、「入退院支援」に関する記事はこちら、「外来その1」に関する記事はこちら)。

オンライン診療、一部で「歪んだ形」で始まってしまっている可能性

オンライン診療を巡っては、▼初診からの実施を可能とする(2022年度の前回診療報酬改定でも対応)▼不適切なオンライン診療が後を絶たないことなどを踏まえて「対面診療と比べて得られる情報が少ない」点を十分に勘案して実施すべきことを注意喚起する(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直し済)▼適切な実施を大前提として、普及・啓発を図っていく(「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」を策定済)—などの動きがあります。

一方、患者の満足度等を見てみると、▼一般国民の多くは「オンライン診療よりも対面診療を希望」している▼オンライン診療を実施していない医療機関の大多数が「今後もオンライン診療を実施する予定はない」と考えている▼60歳未満では「対面診療と比べ十分な診察が受けられない」と感じる人が多い—などの状況が明らかになっています。

患者の「オンライン診療」の感想(入院・外来医療分科会(5)9 230608)

一般国民の「オンライン診療vs対面診療」希望(入院・外来医療分科会(5)14 230608)

一般国民の「オンライン診療」の印象(入院・外来医療分科会(5)13 230608)

患者の「オンライン診療」の感想(入院・外来医療分科会(5)12 230608)

患者の「オンライン診療vs対面診療」希望(入院・外来医療分科会(5)11 230608)

患者の「オンライン診療」の印象(入院・外来医療分科会(5)10 230608)



また、オンライン診療が「適切に実施されているかどうか」を眺めると、次のような点が浮上してきました。

(1)「オンライン診療を行う医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合」として、他医療機関へ紹介した件数割合を見ると、ほとんどの医療機関は2.5%以下であった

オンライン診療を行う医療機関と、他医療機関との連携状況(入院・外来医療分科会(4)2 230720)



(2)一部に「患者の所在が医療機関と異なる市区町村である割合が97.5%を超える医療機関」がある

一部に「自地域と異なる患者へのオンライン診療」のみを行う医療機関がある(入院・外来医療分科会(4)3 230720)



(3)一部に「外来医療に占めるオンライン診療の割合が5割超である医療機関」がある

一部に「オンライン診療患者が対面診療よりも多い」医療機関がある1(入院・外来医療分科会(4)4 230720)

一部に「オンライン診療患者が対面診療よりも多い」医療機関がある2(入院・外来医療分科会(4)5 230720)



(4)「外来医療に占めるオンライン診療の割合が5割超である医療機関」では、「不眠症」患者の診療割合が高い(初診では20.4%(上位3位)、再診では39.7%(上位1位))

「オンライン診療患者が対面診療よりも多い」医療機関では、不眠症診療が相当多い(入院・外来医療分科会(4)6 230720)



こうしたデータから、山本修一委員(地域医療機能推進機構理事長)は「鳴り物入りで登場したオンライン診療だが、一部の医療機関では『当初から歪んだ使われ方をしている』可能性が伺える。詳細なデータを見て、『指導』も念頭においた、適切なオンラインの推進策を考える必要がある」と指摘。ほか多くの委員も「適切なオンライン診療」の確保に向けて、診療内容の詳細な分析を行うよう厚生労働省に要請しました。

なお、例えば(4)からは「オンライン初診で禁止されている向精神薬の処方などが行われている可能性」も否定できませんが、今のデータからそれを明確にすることは困難です。今後、別角度での調査を行い「不適切なオンライン診療(初診での麻薬・向精神薬処方など)がなされていないか」をチェックしていく必要があるでしょう。

オンライン初診では、麻薬・向精神薬の処方は禁止されている(入院・外来医療分科会(4)1 230720)



従前より、糖尿病治療薬を「簡単にやせられる薬」などと称して処方する不適切なオンライン診療が散見され、健康被害も発生していることが問題視されています。このため、上述のように「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しが行われましたが、津留英智委員(全日本病院協会常任理事)も改めて「不適切なオンライン診療への対応」を徹底するよう求めています。

今後、「どのようにすれば、適切な形でオンライン診療が進められるのか」を診療報酬面でどうサポートしていくかを検討していくことになります。

D to P with N、まず「量の拡大」を図り、その後に「質の向上」を目指せ

オンライン診療には、上述のように様々な問題点があるほか、「得られる情報が対面診療に比べて少ない」(例えば嗅覚、触覚を活かすことができない)、「オンライン診療特有の診察技術が必要となる」、「高齢患者ではICT機器に不慣れな人が多い」などの課題もあります。

そこで、訪問看護の場において、「看護師が患者と対面し、直接サービスを提供する」+「オンラインで遠方の医師から診療を受ける」形態に注目が集まっています(いわゆるD to P with N)。「オンライン診療では得られない患者情報(匂い、細かな表情など)を看護師が把握して、医師に伝達する」「医師は、看護師に『咽頭の具合はどうか』などの患者状況把握を依頼する」「医師の指導内容を、看護師がかみ砕いて患者に分かりやすく伝える」などにより、良質なオンライン診療が確保されると期待されます。

2024年度の診療報酬改定に向けて、この「D to P with N」を診療報酬面で推進する方策を練っていくこととなり、委員から「オンライン診療の弱点が解消できる。へき地などに限らず、在宅医療・訪問看護において、幅広くD to P with Nを活用する方策を考えるべきである。その際、専門性の高い看護師が活躍できるような評価を行うこと、看護師の所属先は様々である点を考慮することが重要である」(秋山智弥委員:名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター教授)、「D to P with Nは、さまざまな在宅医療・訪問看護の場での活用が期待される。地域包括ケア病棟における在宅医療・訪問看護実績要件の中でD to P with Nをカウントすることも考えるべき」(武井純子委員:社会医療法人財団慈泉会相澤健康センター総合管理部長)、「特定行為研修を修了した看護師に期待が集まる。なお、その際『専門職である看護師がデバイス操作を手手伝わなければならないのか』という点にも留意が必要である」(小池創一委員:自治医科大学地域医療学センター地域医療政策部門教授)、「D to P with Nについて『量の拡大』を進め、そのあとで、特定行為研修を修了した看護師の活用も含んだ『質の向上』を目指していくべき」(林田賢史委員:産業医科大学病院医療情報部部長)などの意見が出ています。

「D to P with N」推進の具体的に、今から期待が集まります。



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