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入退院支援加算について「入院料別の施設基準・算定要件」など検討しては、緊急入院患者の退院支援が重要課題―入院・外来医療分科会(2)

2023.7.21.(金)

入退院支援加算の取得は、急性期病棟では進んでいるが、回復期・慢性期病棟では遅れている。高齢患者(退院困難となりやすい)がより多く入院し、在院日数も長くなる回復期・慢性期病棟でこそ入退院支援に向けた積極的な取り組みが重要であり、取得促進策を検討していく必要がある—。

例えば、回復期リハビリ病棟でも、地域包括ケア病棟のように「入退院支援加算の取得義務化」を検討する余地があるが、入院患者像や病棟の機能等を踏まえた「入院料ごとの施設基準・算定要件」なども検討してはどうか―。

退院困難事例は「緊急入院」で多く、そこでは退院支援に向けて集中的なマンパワー導入が必要となる。緊急入院患者の退院支援を特別に評価することも検討してはどうか―。

また、退院困難な背景の1つとして「介護施設側の受け入れ力が十分でない」ことが挙げられ、2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定ならではの対応(医療・介護の両面からのアプローチ)が重要となる—。

また、急性期充実体制加算取得病院をはじめとする高度急性期入院医療体制は地域でバラつきがあるが、地域ごとに「医療提供体制の在り方」を考えていく必要がある—。

7月20日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)で、こういった議論も行われています(同日の「がん化学療法の外来移行」に関する記事はこちら)。また同日の入院・外来医療分科会では「オンライン診療」「外来その1(かかりつけ医機能の強化、外来機能分化)」なども議題に上がっており、これらは別稿で報じます。

回復期リハビリ病棟での入退院支援加算取得を義務化すべきか

高齢、要介護、認知症を抱えるといった「退院困難な入院患者」が増加する中では、「安心して入院治療を行えるような支援」や「回復後に早期に自宅等に復帰できるような支援」が非常に重要となります。こうした支援がなければ在院日数が長期化し、ADL低下や院内感染リスクの上昇、認知機能の低下などの患者側のデメリット、重症患者割合の低下、介護の手間増加などの病院側のデメリット、医療費の増加という社会経済的なデメリットが生じてしまいます。

このため、「回復後に早期に自宅等に復帰できるような支援」を評価する【入退院支援加算】、「安心して入院治療を行えるような支援」を評価する【入院時支援加算】(入退院支援加算の上乗せ加算)が設けられ、取得医療機関・算定回数ともに増加しています。



ただし、入院料別に【入退院支援加算】の取得状況を見ると、急性期病棟では相当程度進んでいるものの、高齢患者割合が高く、より入院が長期化しやすい回復期病棟や慢性期病棟で取得が遅れています。

入院料別の入退院支援加算取得状況(入院・外来医療分科会(2)1 230720)



このため7月20日の入院・外来医療分科会では「回復期病棟や慢性期病棟での【入退院支援加算】取得促進」が論点の1つに浮上しました。

例えば、【入退院支援加算1】を取得している回復期リハビリ病棟では、そうでない場合に比べて、「より早期から転院患者を受け入れている」「入院患者、退棟後3か月以内の患者に対する退院前の訪問指導の実施割合が高い」など、より積極的に「早期の在宅復帰に向けた取り組み」を実施していることが分かります。

入退院支援加算1を取得する回復期リハビリ病棟の状況1(入院・外来医療分科会(2)2 230720)

入退院支援加算1を取得する回復期リハビリ病棟の状況2(入院・外来医療分科会(2)3 230720)



また、回復期リハビリ病棟の中でも「急性期病棟や地域包括ケア病棟を併設している」場合には、比較的【入退院支援加算】の取得率が高いことも明らかになりました。100床以上の地域包括ケア病棟1・2では【入退院支援加算1】の取得が義務化され、その他の地域包括ケア病棟でも「入退院支援・地域連携業務部門の設置」が義務化されていることなどが関係していますが、今後、「回復期リハビリ病棟でも【入退院支援加算】の取得義務化(努力義務化)」などが検討される可能性がありそうです。今後、「回復リハビリ病棟の取得状況などに鑑みた義務化の実現可能性」「長期入院が想定される回復期リハビリ病棟で、【入退院支援加算】を取得義務化した場合の効果」なども踏まえて、検討を進めていくことになるでしょう。

回復期リハビリ病棟の入退院支援加算取得状況(入院・外来医療分科会(2)6 230720)



もっとも、「急性期病棟と回復期・慢性期病棟では入院患者像や病棟体制が異なる」のが実際です。

例えば、急性期病棟では予定入院・緊急入院(救急車等)・緊急入院(外来初再診後)が同程度の割合で入院していますが、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟では予定入院の割合が多くなり、手術実施患者の割合も異なります。また、入棟経路については、回復期リハビリ病棟では「他院から」が多くを占めますが、急性期病棟や地域包括ケア病棟では「医療機関外から」が多くなってきます。また入院目的も異なります。

急性期・回復期病棟別の患者状態(入院・外来医療分科会(2)4 230720)



また、【入退院支援加算】の患者要件である「退院困難な理由」については、急性期病棟では「緊急入院であること」が最多ですが、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟では「入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること(必要と推測されること)」が最多となっています。

入院料別の退院困難要因(入院・外来医療分科会(2)5 230720)



このため、「病棟が取得する入院料によって患者状況・体制が異なり、退院支援の内容も異なってくる。入院料別の施設基準・要件なども考えていくべきではないか」という意見が出てきている点が注目されます。例えば「急性期病棟用の入退院支援加算の基準」「地域包括ケア病棟用の入退院支援加算の基準」「回復期リハビリ病棟用の入退院支援加算の基準」などが検討される可能性もありそうです。



なお、退院支援の積極的な取組や促進等を困難にしている事項として「マンパワー不足」や「地域の介護施設、在宅医療機関の不足」などがあります。前者について「診療報酬の引き上げ」などが必要となるでしょう。また後者については、診療報酬・介護報酬の同時改定ならではの対応(医療介護連携のさらなる強化)に期待が集まります。

入院料別の退院支援困難事情(入院・外来医療分科会(2)7 230720)

入院料別の退院困難事情(入院・外来医療分科会(2)8 230720)



委員からも「看取り対応がしっかり行える介護施設等の整備が重要となる。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどでは、医療ニーズの高い高齢者の看取り対応が困難であるが、看取り対応を行う特別養護老人ホーム等でも、施設における意思決定支援や施設側の説明が不十分なために、やむなく入院してしまうケースも少なくない。介護施設などの看取り対応力強化に向け『病院が介護施設等を支援する』『病院職員が介護施設等と連携し、家族の意思決定をサポートする』などの取り組みを進めてはどうか」(武井純子委員:社会医療法人財団慈泉会相澤健康センター総合管理部長)、「老人保健施設など介護側の医療対応強化が重要になる」(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)、「急性期病棟から回復期病棟への転院・転棟促進(早期転院等)を図ることが早期の在宅復帰につながる」(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長)、「急性期病棟では病院・診療所連携の強化、回復期病棟では介護施設等連携の強化をさらに進めるべき」(中野惠委員:健康保険組合連合会参与)などの同時改定を意識した意見が多数出ています。

また、牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任理事)は「とりわけ退院困難となる『緊急入院』患者への支援には、非常に多くのマンパワーによる退院支援が必要となるが、限られた人材の中で苦労も多い。緊急入院患者向けの退院支援を特別に評価することも検討すべき」と提案しています。

入院時支援加算、「褥瘡リスク」や「栄養状態」の評価を必須化すべきか

【入院時支援加算】は、入院の前(つまり外来時点)から「適切な入院治療に向けた支援」「円滑な退院に向けた支援」を評価するものです(入退院支援加算の上乗せ加算)。予定入院患者に対して、入院前に▼身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握▼入院前に利用していた介護サービス・福祉サービスの把握(要介護・要支援状態の場合のみ)▼褥瘡に関する危険因子の評価▼栄養状態の評価▼服薬中の薬剤の確認▼退院困難な要因の有無の評価▼入院中に行われる治療・検査の説明▼入院生活の説明―の8項目を行い、その内容を踏まえて入院中の看護・栄養管理等に係る療養支援計画を立て、患者・入院予定先の病棟職員と共有することなどを評価するもので、ベースとなる【入退院支援加算】と合わせ、円滑な入院および退院を目指しています。

上述の通り、取得医療機関・算定回数ともに増加してきていますが、次のような課題も浮上してきています。

▽急性期病棟(急性期一般1、専門病院、特定機能病院)以外の病棟では取得が遅れている

▽取得のハードルとしては、「入退院支援部門に入退院支援・地域連携業務に関する十分な経験を有する専従看護師またはMSWの配置」があげられる

入院時支援加算の取得状況とハードル(入院・外来医療分科会(2)9 230720)



▽上記8項目のうち、任意事項である「褥瘡に関する危険因子の評価」「栄養状態の評価」の実施状況が、必須項目である「身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握」などに比べて低い

入院前の患者状態評価状況(入院・外来医療分科会(2)10 230720)



こうした状況を踏まえて秋山智弥委員(名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター教授)は「今後、高齢入院患者のさらなる増加が見込まれる中では、8項目すべてを必須化してはどうか」(ただし「入院前に利用していた介護サービス・福祉サービスの把握」などは要介護者等のみ)と提案しています。ただし、猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「入院時支援加算を取得できる病院は、そもそもクリニカルパスにのりやすい予定入院患者が多く、在院日数短縮もしやすい。高齢・独居・生活困窮などの退院困難患者をより多く抱える病院の努力こそ高く評価すべきである」とコメントし、「入退院支援全体の評価の在り方を考えていくべき」と訴えています。

高度急性期入院医療提供体制、地域ごとにその在り方を検討してくべき

また、7月20日の入院・外来医療分科会には「急性期充実体制加算、総合入院体制加算などの地域別取得状況」に関するデータが提示されました。7月6日の前回会合で「急性期充実体制加算の取得病院偏在のほか、総合入院体制加算なども合わせ、地域別の高度急性期入院医療体制を見ていくべき」との指摘がなされたことを受けたものです。

そこでは、「急性期充実体制加算の取得病院」にとどまらず「総合入院体制加算の取得病院」についても地域偏在がある」こと、「人口10万対の高度急性期入院医療体制について地域偏在があること」などが明らかにされました。

地域別の急性期充実体制加算・総合入院体制加算取得病院等の状況(入院・外来医療分科会(2)11 230720)

人口10万対で見た地域別の急性期充実体制加算・総合入院体制加算取得病院等の状況(入院・外来医療分科会(2)12 230720)



この点について牧野委員は「沖縄県、岩手県、山形県、島根県などでは、急性期一般1の相当割合が急性期充実体制加算・総合入院体制加算を取得している。これは高度急性期入院医療の集約化が進んでいると見ることができるが、逆に『新興感染症発生時に一部病院に患者が過度に集中し、高度急性期入院医療体制が脆弱にならないか』とも心配される」と指摘。ただし中野委員は「こうしたデータを踏まえて地域医療構想調整会議で、病院・病床の機能分化論議を地域ごとに進めていくことが期待される」とコメントしています。高度急性期入院医療を担う病院・病棟としては、急性期充実体制加算・総合入院体制加算取得病院のほか、特定機能病院などもあり、新興感染症対応では地域包括ケア病棟の役割にも期待が集まります。中野委員の指摘どおり「様々なデータを用いて、地域ごとに医療提供体制の在り方を考えていく」ことが肝要でしょう。



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