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2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)

2023.3.22.(水)

2022年度の前回診療報酬改定では、在宅医療の裾野を広げるために【外来在宅共同指導料】・【在宅療養移行加算】が新設されたが、十分に活用されていない。要件の厳しさを指摘する声もあるが、「点数新設を知らなかった」との声も出ている—。

またリフィル処方箋についても活用状況は低調であり、その背景には「メリットが良く分からない」「患者の要望がまだ出てこない」などの点がある—。

3月22日に開催された中央社会保険医療協議会の総会および診療報酬改定結果検証部会で、厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の荻原和宏室長からこうした報告が行われました。

委員からは「回答率の低さ」を指摘する声が相次ぎ、今後、他の調査も含めて、さらんる「回答率向上策」を練っていくことになるでしょう。

なお、同日には「DPCの退院患者調査結果(2021年度)」報告や、「選定療養費の拡大提案募集」なども議題に上がっており、別稿で報じます。

【外来在宅共同指導料】・【在宅療養移行加算】など、「知らなかった」という医療機関も

診療報酬改定は通常2年に1度行われますが、そこでは「前回改定が医療現場にどのような効果・影響を及ぼしているのか」を調査し、「思うように効果が出ていない」のであればテコ入れを行い、「狙いとは異なる方向に進んでいる」ことが分かれば軌道修正を行うなどの対応が図られます。この調査の1つに「結果検証調査」(診療報酬改定の結果検証に係る特別調査)があり、(a)改定の効果・影響が出やすい項目は改定年度に実施(b)効果が現れるまでに時間のかかる項目は改定の翌年度に実施—という2段階構成が採られます。

3月22日の中医協には、2022年度の前回診療報酬改定にかかる「2022年度調査」(上記の(a)に該当)結果が荻原保険医療企画調査室長から報告されました。調査は(1)在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理および訪問看護の実施状況(2)精神医療等の実施状況(3)リフィル処方箋の実施状況(4)後発医薬品の使用促進策の影響および実施状況(5)明細書無料発行に関する実施状況—の5項目です。

このうち(1)では、在宅療養に関する【外来在宅共同指導料】・【在宅療養移行加算】の状況が明らかにされました。

2022年度改定では、在宅医療について▼裾野を拡大して「量の充実」を図る▼頂を高くして「質の向上」を目指す—という2段構えの見直しを行いました(関連記事はこちら)。

前者「量の充実」の一環として、【在宅療養移行加算】を新設。従前の「在支診以外の診療所」、つまり「在宅医療にとりわけ力を入れているわけではない」クリニックが、自院のかかりつけ患者が在宅医療が必要となった場合に他医療機関と連携等して24時間の往診・連絡体制を構築することを評価する【継続診療加算】について、「市町村や地域医師会との協力により往診が必要な患者に対し、自院・連携医療機関が往診を提供する体制を持つ」ことも併せて評価する【在宅療養移行加算】に発展的に改組したものです。「在支診・在支病ほどの在宅医療は実施できない」医療機関向けに、「他院や地域医師会とも連携し、在宅医療の一部を担ってもらう」ことを目指し、「より取得しやすい下位区分」を設けたイメージと言えるでしょう。

2022年度診療報酬改定(在宅療養移行加算等1)

2022年度診療報酬改定(在宅療養移行加算等2)



また、かかりつけの患者が加齢などで「通院」困難になった場合にも、自院で継続して「在宅」医療提供を行う医療機関を評価する【外来在宅共同指導料】も新設されました。「多くの患者に対して在宅医療提供することまではできないが、かかりつけの患者であれば在宅対応が可能である」という医療機関をさらに増やすことが狙いで、やはり前者の「量の充実」を目指すものです。

2022年度診療報酬改定(外来在宅共同指導料)



しかし、今般の調査では【外来在宅共同指導料】・【在宅療養移行加算】の算定はそれほど進んでいないことが分かりました(あくまで回答施設の状況だが、外来在宅共同指導料は2022年5-10月に算定人数ゼロ、在宅療養移行加算は同じく算定人数1人程度)。

外来在宅共同指導料・在宅療養移行加算の算定状況は極めて低調である



改定実施からの日が浅いことも関係していると思われますが、算定しない理由について【外来在宅共同指導料】では「該当患者の紹介がなかった」「当該点数を知らなかった」などの声が、【在宅療養移行加算】については「24時間の往診体制の確保ができない」など要件のハードルを上げる声が出ています。

外来在宅共同指導料を算定しない理由

在宅療養移行加算を算定しない理由



このままでは「在宅医療の裾野を広げる」という目的が十分に果たせないと考えられ、2024年度の次期改定に向けて「テコ入れ」が検討されることになりそうです。

機能強化型の訪問看護ステーション、専門性の高い看護師を配置し、重症者対応を実践

また在宅医療を補完する「訪問看護」に関しては、いわゆる在宅限界を高めるために「重症者に対し、24時間365日サービス提供を行う」ことが求められ、やはり「量の拡大」と「質の向上」がセットで進められています。2022年度の前回改定では機能強化型の評価引き上げ・専門性の高い看護師の配置評価・複数ステーションの連携による24時間対応の評価などが行われており(関連記事はこちら)、今般の調査結果からは▼機能強化型では、その他と比して医療ニーズの高い者(特掲診療料の施設基準等別表7・8、超重症児など)の受け入れが多い▼専門性の高い看護師は機能強化型にいる割合が高い▼95.4%のステーションが24時間対応体制加算を取得している—など、「量の拡大」と「質の向上」が着実に進んでいることが伺えました。

訪問看護の状況1(2022年度改定後)

訪問看護の状況2(2022年度改定後)



ところで、従前より「訪問看護を名乗りながら、軽症者に対し、日中のみ訪問リハビリを提供する」ステーションの存在が問題視されています。訪問看護については、が、それとは異なる方向に向かうステーションも一部にあるのです。

このため2022年度の前回改定では、実態のより正確な把握などを目指し「訪問看護指示書に『理学療法士等が訪問看護の一環として実施するリハビリテーションの時間・実施頻度等』を記載することを求める」などの対応が図られました。

2022年度診療報酬改定(訪問看護指示書)



今般の調査結果からは▼リハビリ職が行う訪問看護の指示「あり」が28.3%▼記載事項(指示内容)は、1日あたり平均48.9分、週平均1.6回である▼リハビリ職と看護職員の具体的な連携方策は、「訪問の都度、日々利用者の情報を共有する」が83.5%と最も多く、次いで「同じ目標の共有」が70.0%であった—ことが分かりました。

今後、さらに調査内容の深掘りを行い、2024年度診療報酬改定論議が進められます。

訪問看護ステーションにおける看護職とリハビリ職との連携状況等

リフィル処方箋の活用はまだ低調、効果・メリットなどが十分に浸透していない

(3)のリフィル処方箋は、症状が安定している患者について、医師の処方により、医師・薬剤の適切な連携の下で「一定期間内に限り、処方箋を反復利用できる」仕組みです。

「前回と同じ処方内容である」とする、いわゆる「Do処方」が長期間継続する場合(つまり症状が安定している慢性期疾患患者)、患者にとっては「また同じ薬をもらうために医療機関を受診しなければならない」という負担感があります。医師にとっても「繁忙な外来医療の負担」が重くなると言えます。

そこで2022年度の前回改定では、「リフィル処方箋により投与期間29日以内の投薬を行った場合」には、処方箋料における長期投薬に係る減算規定を適用しないなどの仕組みが設けられ、医師の判断で「リフィル処方を推進できる」環境が一定程度整えられました(関連記事はこちら)。

2022年度診療報酬改定(リフィル処方箋)



しかし、今般の調査結果からは「まだリフィル処方箋は医療現場にそれほど進展していない」状況が伺えます。医療機関からの発行処方箋ベースでは0.04%、薬局での受け付け処方箋ベースでは0.06%にとどまっていることなどが荻原保険医療企画調査室長から明らかにされています。

リフィル処方箋を発行しなかった理由としては、「長期処方で対応が可能」「患者の求めがない」などが多くなっています。

医療機関がリフィル処方箋を活用しない理由



一方、リフィル処方箋を積極的に検討する医療機関では、「医師の負担軽減につながる」「患者の待ち時間が減る」ことを積極検討の理由にあげています。

医療機関が感じるリフィル処方箋のメリット



新しい仕組みであり、「様子見」をしている医療機関が多いことや、「負担軽減効果などを実感できない」医療機関が多い、患者側も「よくわからず希望していない」ことなどが背景にありそうです。また患者の声に耳を傾けると「通院にかかる時間的負担(予約・移動・待ち時間)を減らせる」というメリットが上がる一方で、「医師に診てもらう機会が減ってしまう」ことを懸念する声のほか、「処方箋保管が手間である」との声も出ています。

患者にとってのリフィル処方箋のメリット

患者にとってのリフィル処方箋のデメリット



リフィル処方箋浸透の課題としては、「患者への制度の周知」「医師への制度の周知」「かかりつけ薬剤師制度の普及」などが挙げられています。逆に考えれば「周知を進める」ことでリフィル処方箋の活用が促進されると言え、2024年度改定での重要論点の1つになりそうです。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「診療報酬での対応にとどまらず、電子処方箋など他の仕組み・制度も活用し、関係者が一丸となってリフィル処方箋の推進に取り組み必要がある」と訴えています。

医療機関が考ええるリフィル処方箋浸透に向けた課題



また、(4)の後発医薬品については「後発医薬品調剤割合の平均値が、改定前の2021年8-10月では80.2%であったが、改定後の2022年8-10月には82.5%で、2.3ポイント増加した」ことや、「一般国民では、後発医薬品の認知度は高いが、バイオ後続品・バイオシミラー(言わばバイオ医薬品の後発品)の認知度は低い」ことなどが明らかになりました。

この点に関連し、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「後発医薬品を中心に薬剤の供給不安がますます厳しさを増しており、対策・対応を強化してほしい」と厚労省へ要望しています。

回答率の低さを指摘する声が多いが、「調査量が膨大である」ことが背景に

ところで、今般の調査結果については、内容よりも「回答率の低さ」を指摘する声が非常に多く出されています。例えば、(1)の在宅医療等に関して、医療機関からの回答率は19.4%に、(2)の精神医療に関して、病院からの回答率は23.7%に、(3)のリフィル処方箋に関して、医療機関(病院・クリニック)からの回答率は30.6%に、(4)の後発医薬品等に関して、病院からの回答率は29.3%にとどまるなど、回答率が非常に低い状況です。

回答率の低さは「調査結果の信頼性」を揺るがし、今後の2024年度改定論議にも大きな影響を及ぼします。「●●の調査結果が出ているので、2024年度には◆◆の対応を行ってはどうか」という議論をする際に、「前提となる調査結果に信頼性がない。本当に◆◆の対応をとるべきなのか」という疑問が生じてしまうためです。

荻原保険医療企画調査室長は、回答率が低い理由はさまざまであると述べた上で、「調査量が膨大である」ことも指摘しています。調査に当たっては、中医協委員から「この状況も知りたい」「この点も調査に加えるべき」などの意見が数多く出され、結果、調査項目が膨大になります。医療機関等のスタッフは診療で多忙(とりわけ新型コロナウイルス感染症が蔓延する中では多忙を極めている)であり、調査量が膨大であれば「対応が難しくなる」ことは想像に難くありません。この点は従前より指摘されていますが、調査内容を議論する段になると、やはり「これも知りたい、あれも知りたい」という意見が後を絶たないのが実際です。「真に診療報酬改定論議のために必要なもの」に調査項目を限定し、「後の研究のために、参考のために」という調査項目は思い切って削除することが必要かもしれません。

また、NDBやDPCデータといった既存データ活用にさらに力を入れていくことも重要でしょう。

なお、一部委員から「調査に協力する施設等にはインセンティブを、調査に協力しない施設にはディスインセンティブを与えてはどうか」との提案も出ていますが、荻原保険医療企画調査室長は「あくまで任意の調査である」「かつて医療経済実態調査で謝礼を支払っていたこともあるが、廃止後も回答状況に変化はなく、かえって向上した部分もある」ことを説明しています。



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