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コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)

2021.9.24.(金)

2022年度の次期診療報酬改定に向けた基本方針としては、まず現下の「新型コロナウイルス感染症」をはじめとする新興感染症に対応できる医療提供体制の構築を主眼においてはどうか―。

あわせて、2020年度の前回診療報酬改定で基本方針に据えた▼全世代型社会保障の実現▼患者・国民に身近で、どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、 医師等の働き方改革の推進▼社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和―も重視することとしてはどうか―。

9月22日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こうした議論も行われました。

9月22日に開催された「第145回 社会保障審議会医療保険部会」

「医療保険制度の持続可能性確保」「オンライン診療の推進」を求める声も多数

診療報酬改定に向けた論議は、▼改定の基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中央社会保険医療協議会で改定内容を詰める―という役割分担が行われており、中医協では、すでに改定内容に関する論議が始まっています。

◆入院医療の総論に関する記事はこちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら
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医療保険部会・医療部会でも今夏から基本方針策定論議が始まっており(関連記事はこちらこちら)、9月22日の医療保険部会では厚生労働省から▼基本認識▼基本的視点と具体的方向性―に関する素案が提示されました。

両者ともに「コロナ感染症をはじめとする新興感染症に対応できる医療提供体制の構築」を筆頭に掲げ、例えば▼コロナ感染症への対応▼医療計画の見直しを踏まえた新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取り組み―を診療報酬からアプローチすることを求めています。

あわせて、2020年度の前回改定の柱となった▼医療従事者の働き方改革推進(勤務環境改善の評価、救急医療体制等の評価、ICU利活用推進など)▼医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進(効果的・効率的で質の高い入院医療の評価、かかりつけ機能の強化、在宅医療・訪問看護の確保など)▼身近、安心・安全で質の高い医療の実現(アウトカムに着目した評価の推進、不妊治療の評価など)▼制度の安定性・持続可能性の確保(後発医薬品等の使用促進、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正化など)―も、2022年度改定の柱に据える考えが示されています。

2022年度診療報酬改定の基本方針策定に向けて1(医療保険部会(2)1 210922)

2022年度診療報酬改定の基本方針策定に向けて2(医療保険部会(2)2 210922)



こうした方向に異論は出ておらず、委員からは「こういった点を具体的に明示すべきではないか」(明示によって、中医協に医療保険部会等からのメッセージが届きやすくなる)という前向きな意見が多数だされています。

例えば、横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長/佐賀県多久市長)は「コロナ感染症への対応で経営苦に陥っている医療機関、とりわけ公立・公的病院への支援を充実すべき」と提案。地域医療提供体制構築の責任者でもある平井伸治委員(全国知事会会長/鳥取県知事)も同旨の考えを示しています。



一方、費用負担者サイドである本田孝一委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、コロナ対策について「医療機能の分化・集約化が不十分であることが顕在化しており、診療報酬面でも医療機能の分化・集約化を進めるべき」と指摘。あわせて「制度の安定性・持続可能性の確保において、医薬品以外の、診療報酬本体(技術料や入院・外来の基本診療料)においても効率化・適正化を進めていくべき」と強調しました。関連して佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「コロナ禍であっても人口構造・疾病構造の変化は継続する。これらに対応した効率的・効果的な医療提供体制の構築に向けて、診療報酬サポートしていくべき」旨を強調しています。

コロナ感染症、とりわけ第5波により各地域で医療提供体制が逼迫しました。感染者数が急増したことばかりが注目されますが、「我が国では小規模医療機関が乱立し、医療資源(とりわけ医療人材)が散在していること。さらに機能分化・連携が進んでいないことが、医療提供体制提供逼迫の最大の要因である」との指摘もあります。「コロナ感染症をはじめとする新興感染症に対応できる医療提供体制」と、「少子・高齢化が進む中で目指すべき医療提供体制」(つまり地域医療構想の実現)とは、方向そのものは「同一である」点に留意が必要でしょう。菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)も「コロナ感染症で我が国の医療提供体制の問題点・脆弱性が明らかになった、再構築に期待している。中長期的な抜本改革論議も必要である」とコメントしています。

他方、松原謙二委員(日本医師会副会長)は「ベッド削減が医療提供体制逼迫の要因である」と、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「コロナ感染症対応は入院医療機関(=急性期病院)以外でも行っている。補助金と診療報酬のバランスのとれたサポートが必要である」との考えを述べています。



また、オンライン診療に関して「コロナ禍で意義が高まっており、その推進を図るべき」との指摘が多くの委員からなされています。

医療機関の直接受診によるコロナウイルス感染を防ぐため、昨年(2020年)4月から臨時特例的に電話・情報通信機器による診療の制限が大幅に緩和され、電話による初診までもが認められています。

また、初診からのオンライン診療の制度化論議も進んでおり、一定の要件(たとえば医師が対面診療が必要であると判断した場合には、すぐさま対面診療へ移行できる体制の整備など)下で、2022年度から「初診からのオンライン診療」が可能になる見込みです。これに向け、今秋から診療報酬上の【オンライン診療料】などの規定も見直しが検討されることになるでしょう。

なお本田委員は「オンライン診療と対面診療との報酬面の格差がオンライン診療を阻害しているのであれば、その解消を図るべき」と提案しています。しかし、これまで費用負担者側は「効果に着目し、効果が同じであるならば同じ報酬に、効果が低いのであれば低い報酬にすべき」とのスタンスをとっていたはずです。オンライン診療に関しては、一般的に「対面診療に比べて得られる情報が少なく(少なくとも触診を行えず、匂いを医師が覚知することも現在の技術ではできない)、治療効果も対面診療より低くなる」と考えられます。にもかかわらず「対面診療とオンライン診療との格差を解消せよ」と考えるのは、これまでの主張と大きく矛盾するものと言わざるを得ないでしょう。診療報酬によって医療現場を誘導していくことは、まま行われていますが、それは「医療の質が高まる方向」に限られるべきでしょう。



医療部会でも、基本方針策定論議が進められ、12月上旬には基本方針が決定される見込みです。



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