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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

電話・オンライン診療の件数横ばい、不適切処方を繰り返す医療機関と新規医療機関が混在—オンライン診療指針見直し検討会(2)

2021.6.2.(水)

昨年(2020年)4月から「新型コロナウイルス感染症対応」として、臨時特例的に電話・オンライン診療が大幅に拡大されているが、実施件数は毎月1万7000件程度で横ばいとなっている。

麻薬処方など「不適切な電話・オンライン診療」がわずかではあるが後を絶たず、その中には「不適切診療を繰り返す」医療機関もあれば、「新規に不適切診療を行う」医療機関もある―。

また、重篤な疾患の恐れがあっても、対面診療を受診勧奨しないケースも依然として少ないくない―。

5月31日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で、こういった状況報告が行われました。あわせて、新型コロナウイルス感染症に係る「電話・情報通信機器を用いた診療」の臨時特例措置の「当面、継続」も決まったと厚生労働省は判断しています。

5月31日に開催された「第15回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

発熱や胸痛を訴える患者に対し「対面診療の受診勧奨」は依然、一部にとどまる

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、臨時特例的に「電話や情報通信機器(ビデオ通話システムなど)を用いた診療」が大幅に拡大されています。新型コロナウイルスへの感染リスクがある中でも「医療へのアクセスを最低限確保する」ために、初診患者も含めた「電話・情報通信機器を用いた診療」まで臨時特例的に認められています。

ただし初診患者へのオンライン診療では、「誤診や重症化の見落としなどのリスク」が高いことから、次のような留意点が厚労省から示されています(関連記事はこちら)。

▼「初診のオンライン診療等が適していない症状や疾病」、「考えられる不利益」、「急病急変時の対応方針」などについて、医師から患者に対して十分な情報を提供し、説明した上で、その説明内容を診療録に記載する

▼地域医療連携の下で実効あるフォローアップを可能とするため、対面による診療が必要と判断される場合は速やかに対面診療に移行し、自院で困難な場合は、「あらかじめ承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介」する

また、完全初診患者(過去に一度も受診歴がなく、他院からの診療情報提供などもない患者)では「誤診や重症化の見落としなどのリスク」が極めて強くなることから、次のような制限がかけられています。
(1)「麻薬」「向精神薬」の処方はできない
(2)「特に安全管理が必要な医薬品」(【薬剤管理指導料】の「1」の対象となる抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤等のハイリスク医薬品)の処方はできない
(3)処方日数は7日間を上限とする
(4)「完全初診患者に対する電話・情報通信機器を用いた診療」は、過去の受診歴とならない(「完全初診患者に対する電話・情報通信機器を用いた診療」を終えた後に、当該患者が再度、電話・情報通信機器を用いた診療を受けたとしても、(1)-(3)の縛りが継続する)



厚労省は、こうした電話・情報通信機器等を用いた臨時特例的な診療について、全症例を報告することを義務付け。その報告内容を集計・分析し、「原則として3か月ごとに検証する」こととしています(10-12月の状況に関する記事はこちら、7-9月の状況に関する記事はこちら、4-6月の状況に関する記事はこちら)。

今般、今年(2021年)1-3月分の診療状況が検討会に報告されました。実施件数は2020年6月以降、▼全体では月間1万6000-1万7000件▼初診は月間7000件前後―で推移し、大きな変化はなく、横ばいの状況です。ここから「これ以上ないほど電話・オンライン診療が緩和されている中で、実施件数が横ばいということは、オンライン診療等のニーズはそれほど高くないのではないか」と考えることもできます。5月31日の検討会では、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から「妊婦健診についても、新型コロナウイルス感染症が蔓延した当初はオンラインが増加したが、現在は『実際にエコー検査をしてほしい』などの理由から対面に戻ってきている」ことも紹介されています。

オンライン診療・電話診療の件数について、大きな増加は見られない(オンライン診療指針見直し検討会2.1 210531)

不適切処方など、繰り返す医療機関と新規医療機関とが混在

併せて、次のような状況も明らかとなっています。従前と比べて「中高年の利用が増加している」ほか、目立った変化はありません。

▽全医療機関に占める「電話・オンライン診療の実施体制がある医療機関」の割合は15.2%(2021年4月末時点)、「初診から電話・オンライン診療を実施できる医療機関」の割合は6.45%(同)で、昨年(2020年)6月末から大きな増減はない

▽全医療機関に占める「初診から電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合は0.57%(2021年3月)、「完全初診患者に電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合は0.26%(同)で、やはり「横這い」である

完全初診へのオンライン診療・電話診療割合にも大きな変化はない(オンライン診療指針見直し検討会2.2 210531)



▽「電話・オンライン診療」に占める電話診療の割合は、▼4月:56.9%▼5月:56.0%▼6月:61.4%▼7月:73.3%▼8月:64.6%▼9月:72.9%▼10月:77.6%▼11月:73.1%▼12月:75.7%▼2021年1月:60.8%▼2月:70.1%▼3月:64.2%―となり、「6-7割」で推移している

電話診療のシェアは6-7割程度を占めている(オンライン診療指針見直し検討会2.3 210531)



▽年齢階級別の患者構成を見ると、「0-10歳」が電話診療で33%、オンライン診療で24%となり、従前より減少。中高年世代の利用が少し増加している

電話診療・オンライン診療ともに中高年利用者が増えてきた(オンライン診療指針見直し検討会2.4 210531)



▽主な疾患は、0-14歳では「上気道炎」と「アレルギー性鼻炎」で4割を占める。15歳を過ぎるとバラエティに富んでくるが、「発熱」が2割程度で最多となる

小児では上気道炎等のオンライン・電話診療が多いが、成人では「発熱」が最も多い(オンライン診療指針見直し検討会2.5 210531)



▽完全初診の割合は、0-14歳では18%にとどまるが、15―64歳では43%、65歳以上では36%となり、「高齢者での増加」が気になる

▽特例措置の要件(上述の「初診からの麻薬・向精神薬処方の禁止」など)を守らないケースは、減少してきてはいるが、依然として一部にある

依然として不適切なオンライン診療等があり、繰り返す医療機関、新規医療機関が混在している(オンライン診療指針見直し検討会2.6 210531)



「特例措置の要件を遵守しない」ケースは、「従前から違反を繰り返している医療機関」と「新たに違反が判明した医療機関」とが混在しています。山口構成員は「なぜ新規の違反が出現するのか検証してほしい。また要件の周知にさらに力を入れてほしい」と厚労省に要望。また今村聡構成員(日本医師会副会長)は「オンライン診療等を実施する場合には『研修受講』が義務であり、要件等はそこで知らされるはずである。本当に研修を受講しているのかなども調べてほしい」と要請しています。



また、「発熱」や「咳」など新型コロナウイルス感染症の兆候とも考えられる症状のある患者に対し、「対面診療の受診」勧奨を行うケースは、依然として「ごく一部」にとどまっており、大多数は「自宅待機」で済ませている状況が依然として少なくないことも再確認されました。

発熱を訴える患者でも対面診療の受診勧奨は依然として一部にとどまっている(オンライン診療指針見直し検討会2.7 210531)



あわせて「胸痛」や「頭痛」「血便」など、背後に重篤な疾患が隠れている可能性のある場合でも、電話・オンライン診療だけで済ませ、「対面診療の受診勧奨」を行うケースはやはり限定的です。

基礎疾患を把握せずに医薬品処方を行うケースが依然として少なくない(オンライン診療指針見直し検討会2.8 210531)


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