新型コロナ感染避けるため、慢性疾患患者の「予測される症状変化に対する医薬品」処方を電話等で可能に―厚労省
2020.3.25.(水)
医療機関受診による新型コロナウイルス感染リスクを低減するため、電話や情報通信機器を用いた診療の幅を臨時特例的に拡大する。例えば、事前のオンライン診療計画への記載がなくとも、慢性疾患患者における「予測される症状変化に対応する医薬品」の処方を電話再診やオンライン診療で可能とする―。
また、オンライン診療による新型コロナウイルス感染の診断は認められないが、将来、「軽症者は自宅療養」となった場合には、電話や情報通信機器で経過観察を行い、必要な医薬品処方等を可能とする―。
厚生労働省は3月19日に事務連絡「新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話や情報通信機器を用いた診療等の臨時的・特例的な取扱いについて」を示し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。診療報酬上の取り扱いについては別途、お伝えします。
慢性疾患患者へのオンラインによる医薬品処方等を、臨時的・特例的に拡大
新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るう中、「オンライン診療を有効に活用することができないか」という指摘が各所でなされています。
すでに厚労省は2月28日に「基礎疾患を持つ患者に対する継続的な医療・投薬等について、事前の実施計画がなくとも、電話や情報通信機器を活用した医薬品処方を認め、また医療機関から薬局へファクシミリ等で処方箋を送付する」特例を認めています(すでに処方されていた医薬品と同一の医薬品の継続処方、関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
厚労省は、さらなるオンライン診療等の有効活用ができないかと考え、「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)を開催し、「オンライン診療の限界」(得られる情報が極めて限定される)と「オンライン診療の活用することの有用性」(医療機関を受診せずともよい)の2側面を踏まえた議論を実施。そこでは次のような大きな方針が固められました。
(1)新型コロナウイルス感染を恐れて医療機関の受診控えが生じている可能性があり、オンライン診療や電話再診などで、「疾患に変化が生じた場合」に、診療計画に記載がなくとも処方変更などを認める方向で検討を進める
(2)オンライン診療による「新型コロナウイルス感染の診断」は認めない
(3)新型コロナウイルス感染患者が大幅に増加し、「軽症者は自宅療養する」こととなった場合に、オンライン診療等で指導管理や経過観察などを可能とする方向で検討を進める
検討会の方針を受けて厚労省内で詳細な仕組みを検討。今般、(A)慢性疾患等を有する定期受診患者等に対するオンライン診療の活用(上記(1)に相当)(B)新型コロナウイルスへの感染を疑う患者に対するオンライン診療の活用(上記(2)(3)に相当)―の2つに分けて、自治体や医療機関等にその内容を示したものです。なお、オンライン診療については、ビデオ画像等から得られる情報が極めて限定されるなどの課題も少なくなく、検討会で「段階的な拡大」を議論しています。このため、今般の仕組みは、あくまで「臨時的」「特例的」なものであることに留意が必要です。
まず(A)の「慢性疾患等を有する定期受診患者等」に対しては、次のような考えを整理しています。慢性疾患患者について、これまでの処方された医薬品はもとより、予測された症状変化に対する医薬品の処方について、事前のオンライン診療計画なしに行うことが可能です。これにより、慢性疾患患者の医療機関受診による新型コロナウイルス感染リスクを相当程度減じることが期待できます。
【これまでも処方されていた慢性疾患治療薬の処方】(同一医薬品の処方)
→電話や情報通信機器を活用した医薬品処方、また医療機関から薬局へファクシミリ等で処方箋を送付することを認める(2月28日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」に沿う)
【発症が容易に予測される症状変化に対する処方】
→既に診断され治療中の慢性疾患等を有する患者について、かかりつけ医等(複数回以上受診)が新型コロナ感染の危険性や患者の疾患状態等を考慮した上で治療上必要と判断した場合に限り、次の要件を満たせば「原疾患から発症が容易に予測される症状の変化に対し、これまで処方されていない慢性疾患治療薬を電話や情報通信機器を用いた診療で処方する」ことを認める
▼すでに定期的なオンライン診療を行っている場合:オンライン診療を行う前に作成していた診療計画に、「発症が容易に予測される症状の変化」を新たに追記し、計画変更について患者の合意を得ておくこと。追記を行う場合には、オンライン診療で十分な医学的評価を行い、その評価に基づいて追記を行う。臨時特例廃止後は、直接の対面診療を行うこと
▼これまで定期的なオンライン診療を行っていない場合(上記の「これまでも処方されていた慢性疾患治療薬の処方」を行っているケースを含む):「電話や情報通信機器を用いた診療により生じるおそれのある不利益」「発症が容易に予測される症状の変化」「処方する医薬品」などについて、患者に説明し、合意を得ておくこと。その説明内容について診療録に記載すること。臨時特例廃止後は、直接の対面診療を行うこと
【処方箋の送付や薬局における調剤、服薬指導の取扱い】
→上記の「発症が容易に予測される症状変化に対する処方」に関しても、上記の「これまでも処方されていた慢性疾患治療薬の処方」の場合と同様に、2月28日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」に沿って行うこととする。処方箋には「この事務連絡に基づく臨時特例的な処方であること」を明記する必要がある。
感染患者が自宅療養となった場合、オンラインでの指導管理や医薬品処方可能に
また、(B)の「新型コロナウイルス感染疑い患者」に対しては、まず上記(2)(3)に沿って、次のような整理を行っています。
【新型コロナウイルス感染疑い患者の診療】
→初診での「新型コロナウイルス診断」は直接の対面診療で行う(電話や情報通信機器による初診時の「視診」「問診」だけでは正確な診断や重症度の評価が困難であり、重症化のおそれや他疾患を見逃すおそれもあるため)
【新型コロナウイルス感染疑い患者への健康医療相談や受診勧奨】
→新型コロナウイルス感染疑い患者の求めに応じて、電話や情報通信機器を用いて、対面を要しない健康医療相談や受診勧奨を行うことは可能である(この場合、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の遵守が求められる点に留意)
【感染が拡大した場合の無症状感染症患者等に対する在宅での経過観察】
→現行では、新型コロナウイルス感染症と診断された場合は、原則「入院措置」による治療となる(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)
→今後、感染拡大により「重症者」「重症化のおそれが高い者」に対する入院医療提供に支障を来たすと判断される場合、PCR検査で陽性となった患者であっても、高齢者や基礎疾患を有する方等に該当せず、無症状または医学的軽症者については「在宅での安静・療養」とすることも想定される
→この場合、新型コロナウイルス感染症の診断・治療が直接の対面診療で行われた患者に対し、在宅での安静・療養期間中に、在宅での経過観察結果を受けて、「当該患者の診断を行った医師」または「新型コロナウイルス感染症の診断・治療を行った医師から情報提供を受けたかかりつけ医」が、患者の求めに応じて診療を行う場合は、医師が必要性を判断したうえで、電話や情報通信機器を用いた診療で「それぞれの疾患について発症が容易に予測される症状の変化に対して必要な薬剤を処方する」ことを認める
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