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基礎疾患持つ患者の新型コロナ感染避けるため、電話等による診療・処方、処方箋のFAX送信ルール明確化―厚労省

2020.3.2.(月)

基礎疾患を持つ患者の新型コロナウイルス感染リスクを下げるため、事前の実施計画がなくとも、オンライン診療による医薬品処方を認め、また医療機関から薬局へファクシミリ等で処方箋を送付することを可能とする。薬局では、ファクシミリ等の処方箋情報をもとに調剤を行うことが認められる―。

厚生労働省は2月28日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」を示し、こうした点を自治体や医療現場に周知しました。

新型コロナ対策の基本方針踏まえ、厚労省が医療提供ルールを明確化

昨年(2019年)12月に中華人民共和国武漢市で新型のコロナウイルスが原因と見られる肺炎が発生し、本邦においても「中国武漢市滞在歴のない」感染者が確認され、残念なことに死亡例も発生するなど猛威を振るっています。政府は2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定し、医療体制について次のような考えを示しています。

【現行】
▽まず、帰国者・接触者相談センター(以下、相談センター)に連絡いただき、新型コロナウイルスへの感染を疑う場合は、感染状況の正確な把握、感染拡大防止の観点から、相談センターから帰国者・接触者外来へ誘導する

▽帰国者・接触者外来で新型コロナウイルス感染症を疑う場合、疑似症患者として感染症法に基づく届け出を行うとともにPCR検査を実施し、必要に応じて感染症法に基づく入院措置を行う

▽今後の患者数増等を見据え、医療機関における病床や人工呼吸器等の確保を進める

▽医療関係者等に適切な治療法の情報提供を行うとともに、治療法・治療薬やワクチン、迅速診断用の簡易検査キットの開発等に取り組む

【今後】
▽地域で患者数が大幅に増えた状況では、外来対応については、一般医療機関で診療時間や動線を区分する等の感染対策を講じた上で、新型コロナウイルス感染疑い患者を受け入れる(なお、地域で協議し、新型コロナウイルスを疑う患者の診察を行わない医療機関(例:透析医療機関、産科医療機関等)を事前に検討する)

▽あわせて、重症者を多数受け入れる見込みの感染症指定医療機関から順に帰国者・接触者外来を段階的に縮小する

▽風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、相談センターまたはかかりつけ医に相談した上で受診する

▽高齢者や 基礎疾患を有する者では、重症化しやすいことを念頭におき、より早期・適切な受診につなげる

▽風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、「電話による診療等により処方箋を発行する」など、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する

▽患者の更なる増加や新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえた、病床や人工呼吸器等の確保や地域の医療機関の役割分担(例えば、集中治療を要する重症者を優先的に受け入れる医療機関等)など、適切な入院医療提供体制を整備する

▽院内感染対策の更なる徹底を図る。医療機関での感染制御に必要な物品を確保する

▽高齢者施設等で新型コロナウイルス感染が疑われる者が発生した場合には、感染拡大防止策を徹底するとともに、重症化のおそれがある者については円滑に入院医療につなげる。

事前のオンライン診療実施計画がなくとも、オンライン診療を可能とする

このうち「風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から『電話による診療等により処方箋を発行する』など、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する」点について、今般の事務連絡で具体的な内容が示されたものです。

慢性疾患等を抱える患者は、定期的に医療機関を受診し、医薬品処方を受けて、薬局(院外処方)や医療機関(院内処方)で薬品を受領しなければなりません。しかし、これは猛威を振るう新型コロナウイルスへの感染リスクを高めてしまうことにつながります。基礎疾患を持つ方が新型コロナウイルスに感染した場合、重症化する可能性が高いため、感染リスクを下げる方策の1つとして「医療機関を直接受診せず、電話等での受診で医薬品処方を受ける」ルールの明確化を図るものです。



まず、慢性疾患等を有する定期受診患者等について感染源と接する機会を少なくするため、「既に診断されている慢性疾患等に対して医薬品が必要になった場合に、電話や情報通信機器を用いて診察した医師が、これまでも当該患者に処方されていた慢性疾患治療薬を処方の上、処方箋情報をファクシミリ等により、患者が希望する薬局に送付し(例外的に患者から薬局へ処方箋情報をファクシミリ等送信することも可能)、薬局はその処方箋情報に基づき調剤する」ことが可能である旨が明確にされました。

ここで留意すべきは、「基礎疾患」について既に定期的に当該医療機関を受診している患者に対し、「基礎疾患」について診療を行い、「基礎疾患」治療に対する医薬品処方を行うケースが念頭に置かれているという点です。

こうした診療は、いわゆる「オンライン診療」に属するものです。オンライン診療を行う場合には、厚労省が2018年3月に策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2019年6月に改訂)を遵守することが強く求められ(義務である)、そこでは例えば「オンライン診療の実施は、患者の同意の下で、オンライン診療実施計画に沿って行う」ことが規定されています。オンライン診療は、患者の求めに応じて、医療機関と患者が十分に話し合い、計画的に行うものゆえです(関連記事はこちら)。

しかし、今般は、言わば緊急事態であり、「十分に医師と患者が話し合い、オンライン診療実施計画を策定する」時間がありません。このためかかりつけ医等が「オンライン診療の利便性や有効性が危険性等を上回る」と判断した場合、これまでも当該患者に対して処方されていた慢性疾患治療薬を電話や情報通信機器を用いた診療で処方することは「事前に診療計画が作成されていない場合であっても差し支えない」こととする旨が明確にされました。



さらに、この場合、「患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリ等により処方箋情報を送付する」ことが可能となります。この場合、▼医療機関は、処方箋を保管し、後日、薬局に当該処方箋を送付するか、当該患者が医療機関を受診した際に当該処方箋を手渡し、薬局に持参させる▼医師は、ファクシミリ等により処方箋情報を薬局に送付した場合は、診療録に送付先の薬局を記録する▼医師は、薬局から「患者から処方箋情報のファクシミリ等による送付があった」旨の連絡があった場合にも、診療録に当該薬局を記録し、同一の処方箋情報が複数の薬局に送付されていないことを確認する―ことが必要となります。



また、薬局サイドは、▼患者からファクシミリ等による処方箋情報の送付を受け付けた場合には、必ず、真偽確認のために処方箋を発行した医師が所属する医療機関にその内容を確認する(医療機関→薬局の場合には不要)▼医療機関から処方箋原本を入手するまでの間は、ファクシミリ等により送付された処方箋で調剤等を行う▼患者と相談の上、当該薬剤の品質の保持や、確実な授与等がなされる方法で患者へ渡し、服薬指導は電話や情報通信機器を用いて行うこととしてよい▼長期処方に伴う患者の服薬アドヒアランス低下や薬剤の紛失等を避けるため、調剤後も、必要に応じ電話や情報通信機器を用いて服薬指導等を実施する▼可能な時期に医療機関から処方箋原本を入手し、ファクシミリ等で送付された処方箋情報とともに保管する―ことが求められます。



なお、新型コロナウイルス感染を疑う患者の診療については、必ず直接の対面診療で行うことが必要(初診で電話や情報通信機器を用いた診療を行うことが許容される場合には該当しない)ですが、「新型コロナウイルス感染者との濃厚接触が疑われる患者、疑似症を有し新型コロナウイルス感染を疑う患者」について、電話や情報通信機器を用いて「対面を要しない健康医療相談や受診勧奨を行う」ことは可能で、この場合、必要に応じて「帰国者・接触者相談センター」への相談勧奨を行うことが求められます。



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