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GemMed塾 看護モニタリング

オンライン診療のルール整備へ議論開始―厚労省検討会

2018.2.13.(火)

 テレビ電話会議システムなどのICT技術を活用した診療を「オンライン診療」と位置付け、対象患者や使用機器などのガイドラインを示す―。

 厚生労働省は「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」(以下、検討会)の初会合を2月8日に開き、このような検討を始めました。検討会は、年度内(2018年3月末まで)にガイドラインを策定する方針です。2018年度診療報酬改定で創設される【オンライン診療料】などを取得するためには、「このガイドラインに沿った診療体制のを有する」といった施設基準などを満たすことが求められます。

2月8日に開催された、「第1回 情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」

2月8日に開催された、「第1回 情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」

対面診療とうまく組み合わせれば有用なオンライン診療、安全に提供するためルール整備

 医師が患者と直接相対して微妙な顔色や雰囲気、匂いなどを把握することが、的確な病状把握に不可欠とされ、「対面診療」が原則とされています。ただし、例えば患者が離島に住んでおり、その疾患の専門医師が常駐していない場合などは、遠隔地にいる専門医師の判断を電話などで仰ぐことが有用です。

 また、厚労省は「直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条などに抵触しない」ことを明確にしており(関連記事はこちら)、離島のようなケースに限らず、▼患者にメリットがある▼診断に必要な情報を医師が十分に得られる—などの条件を満たす場合には、「対面診療と組み合わせて電話やICT機器を用いて診療すること」が広く行われていくことが考えられます(実際に、スマートフォンなどを活用した診療は多くの医療機関で行われている)。

 もっとも、ICT技術を活用した非対面診療には、「患者の口臭など、対面であれば把握できる情報の一部が医師に伝わらない」という制約があるほか、「診療時に用いた携帯電話などが盗まれ、患者の疾患に関する情報が漏洩するかもしれない」といったリスクもあります。
 

適切なオンライン診療の普及に向けて、厚労省は2018年3月末までにガイドラインを整備する方針だ

適切なオンライン診療の普及に向けて、厚労省は2018年3月末までにガイドラインを整備する方針だ

 
 そこで厚労省は、ICT技術を活用した非対面診療の▼安全性▼有効性—を担保する必要があると考え、今般、検討会を設置し、ガイドラインを整備することとしました。このガイドラインは、保険診療はもちろん、自由診療においても適用されることになりますが、違反者には罰則までは科されない模様です。ただし、医師法第20条(無診察診療の禁止)に違反した場合には罰則が科され、またガイドライン違反者には自治体からの行政指導が行われることになります。

 検討会では、次のような論点に沿って、年度内(2018年3月まで)に議論を整理する考えです。
(1)適用の基準(▼患者との関係性・患者の合意▼適用対象▼診療計画▼本人確認▼薬剤処方・管理▼診察方法▼他の医師との連携)
(2)提供体制(▼提供場所・急変時対応が可能な体制▼患者の受診場所▼通信環境▼プラットフォーム(端末))
(3)その他(▼医師教育▼患者教育▼質の評価・フィードバック▼エビデンスの蓄積)

 なお、これまでICT技術を活用した非対面の診療は、前述のように「離島など遠隔地の患者」に行われることを想定し、「遠隔診療」と呼ばれてきました。しかし、離島の患者などに限らず、近隣に患者に対してICT技術を活用した非対面診療が今後広まっていく(すでに広まっている)ことを考慮し、ガイドラインでは「オンライン診療」と位置付けることになりました。

対面診療しか原則認められない患者など、より明確に

ガイドラインの具体案は次回会合で示されるが、「患者との関係性」や「受診場所」、「医師教育」などについて基準が設けられる見通しだ

ガイドラインの具体案は次回会合で示されるが、「患者との関係性」や「受診場所」、「医師教育」などについて基準が設けられる見通しだ

 ガイドラインの具体案は、検討会の次回会合で厚労省から示されますが、2月8日の検討会では、論点に沿った議論がすでに始まっています。

 このうち(1)では、対象から除外する患者の基準について、現行法制で「初診患者や急性期疾患の患者は原則として対面で診療する」とされていますが、ガイドラインではより詳しく規定される見通しです。

 また診療プロセスとして、▼患者が本人であることを確認し、医師も本人であることを証明する▼オンライン診療の制約やリスクなどを医師が説明し、診療計画について患者の同意・了承を得る▼対面診療に切り替えるべきか否か、医師が適切に判断する▼患者の疾患状態や他院での処方状況を十分に確認した上で薬剤を処方する―ことなどが規定される見込みで、これから具体的に検討していくことになります。

 また(2)の「診察場所」と「患者の受診場所」については、▼医療法では、病院などの「医療提供施設」、あるいは患者宅などでしか医療提供することが認められていない(法第1条の2第2項)▼人がたくさんいる場所で患者が受診すると、近くにいる人に診療内容を見られてしまう恐れがある▼医師もしくは患者が海外出張中に診療するケースが想定される―ことなどを踏まえて検討すべきとの指摘がなされています。

 なお、受診場所について島田潔構成員(板橋区役所前診療所院長)からは、「基準を緩く設定すれば、医療機関が少ないへき地などで、住民が誰でも利用できる公民館などにテレビ電話会議システムを設置して共用することができる。しかし、都会に『オンライン診療ネットカフェ』のような医療機関と紛らわしいものができて、病気の人が病院に行かなくなってしまう懸念もある」といった指摘が上がっており、受診場所の基準はガイドラインをめぐる議論の注目点となりそうです。厚労省医政局医事課の担当者は「ここは避けるべき」といった規定の仕方になるのでは、とコメントしています。

 さらに「プラットフォーム」(診療に用いる機器)について、患者側では、個人所有のスマートフォンなどを利用することが想定されますが、紛失してしまった場合や盗まれてしまった場合に患者の疾患情報が漏洩しないように、どのような対策を医療機関として講じるべきかが焦点となります。

 一方、(3)の「医師教育」と「患者教育」については、今村聡構成員(日本医師会副会長)と山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)が、「医療団体による研修制度を設け、オンライン診療について患者に説明する方法などを医師に教育してはどうか」と提案しています。

 「患者教育」は、極めて難しいテーマの1つですが、厚労省の「情報通信機器を用いた診療に関するルール整備に向けた研究」では、▼オンライン診療の限界(例えば、熱感、触診、匂いなどは得られないこと、在宅診療で褥瘡など新しい疾患を見つけることもあることなど)やデメリットもきちんと患者側に理解してもらうべき▼患者側も提供情報の質を上げる努力を行い、またその情報に齟齬があった場合の責任を問うべきではない―などの意見が出ており、2月8日の検討会でも同様の指摘がなされました。オンライン診療に限らず、患者自身が「治療に参画する」ことが適切な医療提供にとって欠かせない要素であり、今後、さまざまな角度から議論していくことが必要でしょう。

2018年度診療報酬改定で、オンライン診療を保険診療に位置付け

 なお、2018年度の次期診療報酬改定では、▼ICT技術を活用した非対面での診療を評価する【オンライン診療料】(月70点)▼ICT技術を活用した非対面での生活習慣病などの医学管理を評価する【オンライン医学管理料】(月100点)▼在宅療養中の患者に対するICT技術を活用した医学管理を評価する【在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料】(月100点)―などが創設されます(関連記事はこちら)。ICT機器を用いた診療と、対面診療とを組み合わせることで、「生活習慣病などの慢性疾患で定期的に外来受診すべき患者が、通院の負担から治療を中断して重症化してしまうことを防止できる」「在宅療養患者に対する医師の訪問の負担を軽減することができる」といった効果も期待でき、規制改革会議で「ICT技術を用いた診療について、診療報酬上での評価を検討せよ」と指示されたことなどを踏まえたものです。

 この【オンライン診療料】などでは、ガイドラインを遵守することのほかにも、施設基準・算定要件が設けられ、適切な安全管理などが求められる見通しです。
 
 

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