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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2018年度診療報酬改定、効果的・効率的な「対面診療と遠隔診療の組み合わせ」を評価—安倍内閣が閣議決定

2017.6.1.(木)

 2018年度の次期診療報酬改定において、「対面診療とICTを用いた遠隔診療を適切に組み合わせることにより効果的・効率的な医療の提供に資するもの」を評価する—。

 安倍晋三内閣が5月30日に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(以下、基本計画)でこのような方針が示されました(首相官邸のサイトはこちら)。

 基本計画ではこのほかに、▼個人の生涯にわたる健診・診療データを、本人が主体的に流通・利活用できる環境の整備▼社会保険診療報酬支払基金のシステム刷新▼難病などのデータベース構築―なども打ち出しています。

世界に先駆け、国民がIT・データ利活用によって豊かさを実現できる社会を構築

 IT技術が猛烈なスピードで革新を続ける中では、今後、ネットワーク化されたAI やロボットなどが開発され、▼医療診断▼創薬▼看護・介護の補助―はもとより、▼防災・防犯▼物流▼工場や建設現場等の生産性の向上▼資産管理▼株式運用―など国民生活が大きく変わっていくと見られます。さらに、データの利活用に関する国民の意識や期待が一層高まってきています。

安倍内閣は、全国民がIT利活用やデータ利活用を意識せず、その便益を享受し、真に豊かさを実感できる社会(官民データ利活用社会)のモデルを世界に先駆けて構築する必要があるとし、今般、基本計画を定め、必要な施策を着実に実施していくことを強調しています。

基本計画では▼経済再生・財政健全化▼地域の活性化▼国民生活の安全・安心の確保―といった諸課題に対し、官民データ利活用の推進などで解決が期待される8分野(▽電子行政▽健康・医療・介護▽観光▽金融▽農林水産▽ものづくり▽インフラ・防災・減災など▽移動)を重点分野として指定。医療・介護分野に関連する事項をピックアップしてみましょう。

膨大な健診・診療などのデータを「本人が主体的に利活用」する仕組みを整備

まずデータ利活用のルール整備を進めるために重点的に講ずべき施策として、【健康・医療・介護等データの流通・利活用環境の実現】と【匿名加工医療情報の作成に関する認定制度の整備】の2点を掲げました。

前者の【健康・医療・介護等データの流通・利活用環境の実現】に関しては、個人の生涯にわたるデータを、本人が主体的に流通・利活用できる環境を整え、健康寿命の延伸や社会保障費の適正化を実現するため、2018年度末までに実証事業などを通じて課題の整理や目標値を設定し、2019年度から順次、必要な制度整備を行い、2020年度から運用開始を促進する考えです。

後者の【匿名加工医療情報の作成に関する認定制度の整備】に関しては、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)施行までの間に、適切な事業運営に向けた基本方針や認定基準などを策定するほか、匿名加工医療情報の活用によって健康・医療に関する先端的研究開発や新産業創出を推進する考えです。

効果的・効率的な「対面診療と遠隔診療の組み合わせ」を診療報酬で評価

また、IT技術を利用する機会などの格差(デジタルデバイド)を是正するために、【ICT 等を用いた遠隔診療の推進】を打ち出しました。対面診療とICTを用いた遠隔診療を適切に組み合わせることで効果的・効率的な医療の提供に資するものについては「2018年度診療報酬改定で評価を実施」すると具体的な指示を行っています(関連記事はこちらこちらこちら)。

KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)として▼遠隔医療システムの導入状況(進捗状況のKPI)▼ 遠隔診療に関する診療報酬の算定状況(効果のKPI)―を設定することとされており、継続して「遠隔診療実施状況のモニタリング」が行われることになります。

難病などの克服に向け、症例を集積するデータベース構築

さらに情報システム改革・業務の見直しに関しては、【医療保険業務(診療報酬における審査業務など)の効率化・高度化】(社会保険診療報酬支払基金のシステム刷新)、【指定難病患者、小児慢性特定疾病児童などの診療情報を登録するためのデータベース構築、活用促進】が行われます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

後者の指定難病や小児慢性特定疾病は、全国的に症例数が少ないことから、診断・治療に関する研究が遅れがちであるため、「一定の症例数確保により、患者の臨床情報を把握し、研究推進・医療の質を向上し、難病などの克服につなげる」ことを目指し、本年度(2017年度)中に「指定難病や小児慢性特定疾病に係るデータベース」を構築。データ登録、データベース制度の周知を通じ、2019年度までに研究などへのデータ提供を開始する考えです。

個々人に最適な健康管理・診療・介護を行うためのデータ収集・解析

またデータ連携のためのプラットフォーム整備に向けて、【医療保険のオンライン資格確認の構築、医療等ID制度導入】(2018年度から段階的運用を開始し、2020年度から本格運用)、【健康・医療・介護分野に関わる多様な主体の情報共有・連携の仕組みの確立、成果の推進・普及】、【電子カルテなどの情報を活用した医薬品などの安全対策】を掲げました。

情報共有については、地域の医療機関や介護施設間での効果的な情報共有にとどまらず、地域を超えたデータ活用によって患者・利用者に適切な医療・介護サービス提供が可能となることが期待され、これらのエビデンスを集積・解析することで「個々人に最適な健康管理・診療・介護」を目指すとしています。

生活習慣病の重症化予防に向け、国民の行動変容を促すための研究など推進

さらに研究開発に関しては、【AIを活用した「保健指導支援システム」の研究推進】、【個人の健康・医療情報を活用した行動変容促進事業】、【臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業の推進】、【利用者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減を実現する介護ロボットの開発】、【高精細映像データの収集・解析およびAIを通じた診療支援】、【診療データを活用したICT・AIなどを用いた診療支援機器の研究開発】を打ち出しています。

このうち【AIを活用した保健指導支援システム】は、各地方公共団体が保有するデータ(健診・レセプト、事例データ、エビデンスデータなど)をAI(人工知能)を用いて解析し、それに基づく効果的な保健指導によって、国民全体の健康増進を目指すものです。基本計画では、本年度(2017年度)から2019年度までに「地方公共団体で蓄積されている健診・レセプトデータなどを収集し、そのデータから保健指導における課題を分析。あわせて、最適な施策候補を抽出して提案するAI保健指導支援システムを開発」、2020年度以降「、システムを導入する地方公共団体を拡大する」というスケジュールを描いています。

また【行動変容促進事業】は、生活習慣病の予防・重症化予防に向けて、本年度(2017年度)から2019年度までの3年間で▼研究事業の実施▼重症者予防効果などの検証と行動変容を促進するアルゴリズムの開発▼本施策に係る効果を図る指標の明確化―を行うものです。

【診療支援機器の研究開発】に関しては、2020年度までに「5種類以上の革新的医療機器・システムの実用化」を行う考えです。

   
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