Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ zero

支払基金の組織・体制、ICTやネット環境が発達した現代における合理性を問うべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会

2016.12.6.(火)

 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は、今から70年近く前(1948年、昭和23年)の、オンライン請求やコンピュータチェックなどが想定できない時代に創設されており、組織体制や仕組みは、当時は合理的であってが、今の時代に合った合理性などは問われるべきである―。

 11月30日に開催された「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」では、こういった視点に立った支払基金改革に向けた議論が行われました。規制改革会議では審査基準の統一化・透明化などのほか、支払基金の組織についても抜本的な見直しを行うよう提言しています。

 ただし、レセプトの審査などを支払基金に委託している健康保険組合や協会けんぽからは「効率化は必要だが、支払基金の審査能力は高い」「業務の継続性・安定性を担保する必要がある」とし、改革に当たっては慎重な議論が必要との意見も出されています。

11月30日に開催された、「第7回 データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」

11月30日に開催された、「第7回 データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」

組織・体制を議論する前に、支払基金が担うべき機能を議論すべきとの指摘も

 規制改革会議の「健康・医療ワーキンググループ」は、2014年に、レセプト審査の質を高め、かつ効率性を追求するために、▼審査基準の統一を図り、それを公開する▼支払基金の業務のうち不要・非効率なものを削減する▼支払基金でなければ適切に実施できない業務があれば、それを運用するための組織・体制をゼロベースで検討する―などといった内容の提言を行っており、これをうけて厚生労働省に有識者検討会が設置されました。

 有識者検討会では、「審査基準を統一・公開し、医療機関で事前にレセプトチェックを行う」ような仕組みの検討を進めており、11月30日の会合では、支払基金の組織・体制に関する議論を行いました。

 厚労省の調べでは、4310名いる支払基金職員のうち、ほぼ半数が審査事務(再審査を含む)に主に携わっており、こうした点について「非効率な部分があるのではないか」との指摘がなされています。この点について森田朗座長代理(国立社会保障・人口問題研究所所長)は、「支払基金が設立されたのは1948年で、当時はレセプトのオンライン請求やコンピュータチェックなど想像もつかなかった。紙ベースでの請求・審査を行っていた当時には、組織や体制に合理性があったと思われるが、現在では、合理性などを問う必要がある」との見解を示しました。

 また金丸恭文構成員(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長)は、ネット環境が普及した現在では、必ず「職員や審査委員が集まって審査を行う」ことの必要性に疑問を呈した上で、「必要な機能に関する議論をまず行い、その上で組織・体制の議論をしなければ、構成員間でイメージが異なってしまう」と指摘しました。この点、林いづみ構成員(桜坂法律事務所弁護士)や神成淳司構成員(慶應義塾大学環境情報学部准教授)らも同旨の見解を述べています。

 さらに飯塚正史構成員(元明治大学大学院客員教授)は、前回会合で示された医療機関などでの事前のコンピュータチェックを進めれば、支払基金においてどれだけの人員を効率化できるかなどが明確になる。支払基金のシステム刷新(2021年)より前に、院内コンピュータチェックを実現すべきと強調しました。

 

 なお、参考人として出席した健康保険組合連合会の白川修二副会長や、全国健康保険協会(協会けんぽを運営)の小林剛理事長は、健保組合や協会けんぽのレセプト審査を支払基金に委託している現状を踏まえた上で、「支払基金の審査能力は高い」「業務の継続性・安定性も重要である」とし、効率化は必要だが、支払基金の抜本改革に当たっては慎重な議論が必要と訴えています。

診療データと生活習慣等のデータとの統合・分析が必要

 11月30日の会合では、西村周三座長(医療経済研究機構所長)から、医療の標準化(地域差の解消)に向けて、「個別診療データとpopulationデータとを統合した知恵の集積」を行うことが必要不可欠であり、当面は「データの見える化」から始めることから始め、支払基金や国民健康保険団体連合会(国保レセの審査などを担当)においても、こういった問題医師から分析を進めてはどうかとの提言が行われました。

 西村座長の提言は、米国ダートマス大学のWennberg教授(疫学)らによって、(1)感染症治療や心筋梗塞へのβブロッカー投与など「治療内容がほぼ定まっている有効な治療」では、効果が明確で、地域差が少ない(2)患者によって効果が異なる(日常生活や運動・食生活習慣の影響などを受ける)治療では、効果を明確にすることが困難である▼医療資源の偏在によって地域差が生じてしまう治療については、効果を調査し、是正策を考える―という調査・研究結果を踏まえたものです。西村座長は、このうち(2)の「患者によって効果が異なる治療」に着目した分析が必要とし、個別診療データと、生活習慣等に関するpopulationデータとの統合が重要と指摘しているのです。

  
病院ダッシュボードχ zeroMW_GHC_logo

【関連記事】
診療報酬の審査基準を公開、医療機関自らレセプト請求前にコンピュータチェックを―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
都道府県の支払基金と国保連、審査基準を統一し共同審査を実施すべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会で構成員が提案
レセプト審査基準の地域差など、具体的事例を基にした議論が必要―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の改革案に批判続出、「審査支払い能力に問題」の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬審査ルールの全国統一、審査支払機関の在り方などをゼロベースで検討開始―厚労省が検討会設置
診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG
団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035

肺炎患者に対する救急医療管理加算、都道府県で審査基準が大きく異なる可能性―GHC湯原が分析