診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
2016.3.2.(水)
診療報酬の審査について、現在の支払基金を前提とした組織・体制の見直しにとどまらず、ゼロベースで抜本的に見直すべきではないか―。こういった議論が、2月29日に開かれた規制改革会議の「健康・医療ワーキンググループ」で行われました。具体的には、医師の関与の下での全国統一ルールの策定や、民間企業を活用した効率的な運用なども検討項目に加えています。
厚生労働省は2020年度の審査システム刷新に間に合うよう、検討組織を設置し、今年(2016年)4月中に取りまとめを行う予定です。6月に策定される規制改革実施計画に具体案が盛り込まれます。
現在、診療報酬の請求内容は、被用者保険については社会保険診療報酬支払基金(支払基金)で、国保については国民健康保険連合会(国保連)で審査されており、請求内容に誤りがあれば、査定(減額)や返戻(差し戻し)が行われます。
しかし現在の審査体制について規制改革会議は、「効率性」と「統一性」を確保すべきと要望します。支払基金や国保連は都道府県単位に設置され、いわゆる「地域ルール」が存在していると指摘されます。例えばある県では「疾患別リハビリテーション料は●単位までに制限される」が、別の件ではそういった制限はないといったルールがあると言われます。また、適応外医薬品の使用について一部地域では保険診療が認められているといった指摘もあります(関連記事はこちら)。
支払基金や国保連もこういった指摘を受け止め、本部から審査情報の提供を行うなどして審査の統一性を図り、またコンピュータ審査の拡充や縦覧点検(数か月分のレセプトをチェックし請求内容の矛盾などを確認する)や突合点検(医科と調剤のレセプトを突合し、矛盾などを確認する)を導入するなどして効率性を図る努力を続けています。しかし、規制改革会議は不十分であるとし、抜本的な見直しを行うべきと主張しているのです、
2月29日の健康・医療ワーキンググループ(規制改革会議の下部組織)では、審査の在り方、組織・体制の在り方の見直しに向けて、次のような点を検討することを掲げました。
【審査の在り方】
▽医師の関与の下で、全国統一的かつ明確な判断基準を策定する
▽統一判断基準に基づく精度の高いコンピューターチェックの実施を可能とする(医学的判断を要する審査対象を明確化する)
▽コンピューターチェックに適したレセプト形式の見直しを行う
▽請求段階における記載漏れ・記載ミスなどの防止措置を構築する
▽審査結果の通知および、審査基準の情報開示をICTの活用により効率的に行う
▽医師による審査における医学的判断を集約し、継続的にコンピューターチェックに反映する仕組みを構築する
▽医師による審査および合議のオンライン化や、審査結果等のデータ蓄積を自動化し、統計的な分析結果の参照や過去事例の検索、人工知能の活用などにより、医学的判断を要する審査手続きの効率化、高度化を行う
▽医学的な判断が分かれるなどの理由で審査結果に疑義がある場合について、医療機関や保険者からの請求に基づく医師による再審査の仕組みを効率化、高度化する
【組織・体制の在り方】
▽現在の審査の在り方に関する検討を踏まえた上で、現行の支払基金が行っている「職員による点検」「説明・指導」などの要否を検討し、不要・非効率な業務を削減する
▽効率的な運営を図るため、民間企業を含めた支払基金以外の者を保険者が活用することが適切な業務がないかを検討し、それらがある場合の具体的な活用の仕組みを構築する
▽検討の上、なお「支払基金が担うことが適切な業務」がある場合には、その具体的な組織・体制等の在り方(業務拠点も含めた職員およびシステムなどの体制、業務範囲、法人形態、ガバナンス体制、事務費負担の在り方等)を検討する
健康・医療ワーキンググループでは、上記を検討するにあたり厚生労働省に検討組織を設置するよう求め、「事務局には支払基金および支払基金の利害関係者を含めない」「支払基金関係者は構成員とせず、必要に応じて参考人として招致する」という考え方も示しています。
こうした指摘に対し、厚労省は「医療保険における審査支払機関が本来果たすべき役割や、それに応じた機能、組織の在り方をゼロベースで検討する必要がある」との見解を示しています。
【関連記事】
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG