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レセプト審査、ルールを統一して中央本部や地域ブロック単位に集約化していくべきか―質の高い医療実現に向けた有識者検討会

2016.12.13.(火)

 医療保険制度の下で、レセプトの審査基準を可能な限り統一し、中央本部や地方ブロック単位に審査業務を集約していくべきではないか―。

 7日に開催された「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」では、構成員からこういった指摘が相次ぎました(関連記事はこちら)。

 また、「現在のコンピュータによる審査システムが不十分であるがゆえに、そこを事務職員が補う形となっており、非効率な部分が生じている。システム刷新が最上位課題である」といった意見が出る一方で、「既存ベンターをコントロールすることなどができなければ、システムを改修しても、今とそう変わらないシステムになってしまう」との意見も出されています。

審査業務を集約化、積極的に進めるべきとの意見と、医療の個別性から慎重にとの意見

 検討会では、規制改革会議の指摘を踏まえて、▼レセプト審査基準の統一を図り、それを公開する▼支払基金の業務のうち不要・非効率なものを削減する▼支払基金でなければ適切に実施できない業務があれば、それを運用するための組織・体制をゼロベースで検討する―などといったテーマについて議論を行っています。これまでに下部組織(ワーキンググループ)において、「診療報酬の審査基準を公開、医療機関自らレセプト請求前にコンピュータチェックを行う」ことや、「KDB(国民健康保険データベース)の活用拡大や、被用者保険におけるビッグデータの活用を促進し、医療・介護などのビッグデータ連結の有用性と技術的な課題を整理する」といった提言がまとめられています。

 7日には、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)の体制や、いわゆる「地方ルール」について踏み込んだ議論を行いました。

 被用者保険(健康保険組合や協会けんぽなど)加入者のレセプトは支払基金で審査・支払が行われます。支払基金は、47都道府県ごとに支部があり、医学的な観点からの判断が必要なケースについては▼診療担当代表者(医師など)▼保険者代表者▼学識者―の3者で構成される審査委員会で審査が行われます。

 この点について現役の審査委員長(宮城県、神奈川県の2名が参考人として出席)は、「保険診療ルール上は問題のない請求であっても、地域の医療の実態を把握している審査委員会であれば医療機関の請求傾向から、適正な保険請求であるか否かについて審査できる」との考えが説明されました。例えば、「疑い病名に基づいて、毎月、検査がなされ、それを請求する」といったレセプトについて、審査委員会で「当該医療機関の請求傾向」などを勘案、確認した上で、請求内容の妥当性を判断するといったケースが考えられます。このほか、同じ都道府県の中でも▼都市部と地方部▼人口構成▼気候▼患者の家族構成―などが異なるため、個別の判断(例えば地方部では冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認めるなど)が行われることもあるといいます。いわゆる「地方ルール」の1類型と言えます。

 しかし、多くの委員から「保険診療の中で『可能』とされている部分を、地方が独自に『不可』とするのは、よほどの事情がある場合に限定されるべき」「支部間で情報共有を行い、統一ルールに昇華させていくべきではないか。支払基金は情報共有をしていると主張するが、それが不十分であるが故に、今般のような議論になっている」といった指摘が出されました。

 また森田朗座長代理(国立社会保障・人口問題研究所長)は、「保険診療の中で審査ルールが地域ごとに異なることは原則として許されない。医療に個別性があることは理解しており、すべてのルールをコンピュータシステムに載せることは難しいかもしれないが、将来的に一定化が可能と考える。そうなれば都道府県単位での審査から、中央本部や少なくとも地方ブロック単位での審査に移行していくべきではないか」と指摘した上で、「都市部のルール、地方部や過疎地のルールといった揃え方をしていけば、少なくとも都道府県間のバラつきはなくせるのではないか」とも提案。佐藤主光構成員(一橋大学大学院経済学研究科教授)も、「専門性の高い人材の確保は都道府県単位では困難であろう。その観点からも本部や地方ブロックへの審査業務の集約化が必要と考えられる」とコメントしています。

 ただし審査委員長からは、「膨大な量のレセプトを、期限を切って審査しなければならず。現時点では、本部や地方ブロックへの移譲は困難と考えざるを得ない」との見解が示されました。また山崎泰彦構成員(神奈川県立保健福祉大学名誉教授)は、「高齢者医療確保法で都道府県単位の診療報酬について規定されており、これが稼働する際には都道府県支部の機能が重要となる」として、集約化は慎重に検討すべきと主張。さらに松原謙二構成員(日本医師会副会長)を始めとする医療提供側の構成員も「医療の個別性」を主張し、集約化に疑念を呈しています。

 

 ところで規制改革会議からは「事務職員の業務に非効率な部分があるのではないか」と指摘されていますが、審査委員長からは「縦覧点検や突合点検などはコンピュータチェックで十分に行うことができず、事務職員によるサポートが不可欠」との説明が行われましたが、委員からは「そういう部分こそコンピュータチェックに馴染む」との反論が出ました。この点、神成淳司構成員(慶應義塾大学環境情報学部准教授)は、「コンピュータチェックシステムが不十分であるがゆえに、それを事務職員が補填し、非効率となっているのが現状だ。システムの抜本改革が最上位課題である」としましたが、「ベンダーのコントロールが十分にできなければ、現状とそう変わらないシステムになってしまう」との懸念の声も出ています。

  
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