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支払基金の支部を全都道府県に置く必要性は乏しい、集約化・統合化の検討進めよ—規制改革会議

2017.4.27.(木)

 厚生労働省の「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」が昨年(2016年)末にまとめた報告書では、社会保険診療報酬支払基金の都道府県支部を集約化・統合化すべきについて両論併記とされたが、レセプトのオンライン審査が可能になっており、47都道府県すべてに支部を設置して事務を担う必要性は乏しい。集約化・統合化の実現に向けて、引き続き検討を進めるべきである—。

 政府の規制改革会議は25日、このような意見をまとめ、厚労省に指示しました(規制改革会議のサイトはこちらこちら)。

オンライン審査が可能な現在、全都道府県に支部を置く必要性は乏しい

 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は、被用者保険(健康保険組合や協会けんぽ、共済組合)のレセプトを審査し、医療費を支払う役割を担っています。

 しかし、規制改革会議は現在の支払基金には、審査事務体制が非効率であり、かつ統一化されていないため、例えば「審査基準に不合理な地域差がある」といった問題点があることを指摘。昨年(2016年)2月に▼医師関与の下で、全国統一的かつ明確な判断基準を策定する▼支払基金の業務を点検し、不要・非効率な業務を削減する▼審査・支払について民間企業などの活用を検討する▼「支払基金が担うことが適切な業務」があれば、具体的な組織・体制等の在り方(体制、業務範囲、法人形態、ガバナンス体制、事務費負担など)を検討する―よう、厚労省に指示しました(関連記事はこちら)。

 厚労省は「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」を設置し、昨年(2016年)末に、▼支払基金のシステム刷新計画を全面的に見直し、2020年度中に新システムを実施する▼審査支払機関(支払基金と国民健康保険団体連合会)のコンピュータチェックルールを公開し、レセプト請求前に医療機関でのチェックを可能とする—ことなどを柱とする報告書をまとめました(厚労省のサイトはこちら)。

 ただし、47都道府県における支部の職員体制・規模については、「必要最小限のものに縮小する」という点で構成員の意見が一致したものの、「集約化・一元化など抜本的な見直しを求める意見」と「現行の47都道府県における支部の継続を求める意見」との両論があったことを併記するにとどめました。また審査の一元化についても、「積極的に進めるべき」との意見と「困難である」との意見の双方があったことを明記にするにとどめています。

 

 この報告書に対し、検討を指示した規制改革会議は「結論が出ていない」と指摘。支払基金の支部体制については、「レセプトの電子化が完了し、オンライン審査が可能になったにもかかわらず、全都道府県に支部を設置して事務を担う必要性は乏しい」と強調し、厚労省に対して、「支部組織の集約化・統合化の実現に向けて、引き続き検討を進め、早期に結論を得る」よう指示しました。

 また、審査の一元化についても(1)審査委員会の審査内容を可視化し、地域における具体的な差異の内容を把握する(2)データに基づき、支払基金本部で専門家が議論する体制を整備し、エビデンスに基づいて審査内容の整合性・客観性を担保する—という報告書が提示したステップの「具体的進め方について早急に結論を出す」よう厚労省に指示しました。

支払基金のシステム刷新では、入力ミスなどに医療機関が自ら対処できる機能付与を

 このほか規制改革会議は、支払基金のシステム刷新にあたり、次のような要件を満たすよう要望。

▼「レセプト受付」「適切な審査プロセスへの振り分け」「支払い」などの機能ごとに、コンピュータシステムを最適化する

▼必要に応じ、機能ごとの改善などを機動的に行え、保険者による利用や、外部委託などが可能な仕組みとする

▼入力ミスなど専門的審査を待たずに是正できる箇所については、医療機関が自ら対処できるような機能を提供する

▼各種データの形式、付番などを統一化し、それを前提とした相互連携できるデータベースの導入や、そのためのレセプト様式の再設計を行う

▼現在の「地域ごとに独立して構築する」機能を前提せず、必要な地域差を精査の上最小化し、できるだけ同一のコンピュータシステムで処理できる範囲を拡大する

▼システム構築にあたり、府省横断的にITシステムの企画立案に関与する政府CIOと連携し、その評価を受けながら推進する

 

 厚労省は、有識者検討会の報告書を受けて(1)業務効率化(支払基金改革)(2)ビッグデータ活用(医療・介護レセプトの連携など)―のそれぞれについて工程表の基本方針を今春(2017年4-5月)にも固める方針を示しています。今回の規制改革会議の意見を踏まえ、どのような基本方針(とくに(1)について)がまとまるのか、注目が集まります。

 
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